睡蓮

極楽の眠りはそこに睡蓮咲く
静まりて杜若映す水面かな
梅の実の熟れる梅林群つばめ

青嵐

青葉山はるかに空気遠近法
北摂も淡路も望み青嵐
ほととぎす風に騒げる森に鳴く

青蛙

山の色深まり梅雨の近さかな
青蛙はっしと壁に飛びつけり
ひっそりと枇杷の熟れゆく午後の庭

木の芽風 花冠319号（2010年4月）

絶え間なく雲ゆく桜咲く上を
山上の池は桜の影映し
青空を透かしてほぐれ楓の芽
遠ざかる新幹線へ木の芽風
水平線まっすぐ見えて夏近し
木の芽山あまりに明るき真昼なり
稜線は木の芽の色にほぐれゆく

植田

銀輪は青葉の中を疾走す
渓流に沿う緑陰を下りけり
植えられし田は夕映えの空うつす

河骨

河骨の下ゆく錦鯉の影
頂の空気を切って夏燕
六月の光が揺れる露天の湯

早苗

杜若小さき蜻蛉来てとまる
睡蓮の穏かにして水の面
早苗待つ夜の田水の光りおり

鴨足草

鴨足草風がたわむれているよ
黄菖蒲の黄の鮮やかな真昼なり
夏の雲映してビルの立ち上がる

六月

六月の光は高く楠に
雲高く青葉の山を出でにけり
頂の真昼たっぷり夏の蝶

黄鶲

黄鶲や森に明るき胸の色
山の色落ち着いてはや六月に
杜若水面の風に近く咲く