蝉

一匹の蝉鳴く目覚めの朝となり
サルビアやランドセル背にありしころ
夏の夜へ身体あずけて疾走す

麦茶

森をゆく梅雨の茸の日々新た
ひといきに麦茶飲み干す散歩あと
万緑を渡りし風に吹かれおり

白雨

梅雨茸森の湿りを帯びて立つ
降り続くことのなきまま梅雨末に
雨足を見せて白雨の近づきぬ

蛇の衣

曇り空ばかり続きし空梅雨よ
蛇の衣見事に脱いで消えにけり
雨蛙声高らかに降り出しぬ

七夕

七夕や星に願いをかけてみる
蓮の花池の面に光りあう
昼下がりまどろみ覚めし睡蓮よ

梅雨の川

膨らみに花びら覗く蓮蕾
重そうな雲映しおり梅雨の川
雨近き川面へ響くほととぎす

梅天

夏草を刈る香の中を北へゆく
蓮の葉の揺れる蜻蛉の飛び立てば
梅天より雨音の始まりぬ

穴子

晴れてくる予感窓辺に夏の蝶
庭園を見つつ語りつ穴子丼
初蝉や日差し漏れくる昼となり

蓮の花

梅雨空に一服のローズヒップティー
蓮の花ひらく優しき光もて
睡蓮の姿を映す水鏡

青梅雨

青梅雨に街の灯りがひとつずつ
梅雨雲の雨を落とさず空にあり
からからと雨戸繰られて明易し