残る鴨

遠き田の一枚はっきりげんげ色
春深しからくり時計は時を待つ
きらきらと水は静かに残る鴨

木の芽晴れ

囀りに応えて短き口笛を
風は今深呼吸して木の芽晴れ
伽藍へとやや重そうに八重桜

春落葉

春深き山ふところに抱かれけり
山路ゆく春の落葉に陽の躍る
春の森抜けて望みし播磨灘

残花

芽吹く木を透かし彼方に芽吹く山
雲少し出て八重桜の影を濃く
石段をのぼれば残花正面に

花楓

雨あがる大樹隅々まで芽吹き
人知れず兆すものあり春落葉
霧雨のしずく集めし花楓

春深し

山の色日ごとに変り春深し
花時を過ぎし野山の鮮やかに
一息に桜も蘂も散りにけり

花屑

竹林も梅林もいま花吹雪
車にも花屑の入る昼下がり
前髪にヘアターバンを春暑し

花吹雪

春の朝メープルシロップ香りけり
わが天を覆い尽くして花吹雪
白壁に木の影揺れて春の昼

蝶

蝶ふわり群れ飛ぶ昼の頂に
青空をいくたびかすめ蝶の影
きらきらと降り続くかな花吹雪

花

満開の桜に小鳥吸い込まれ
青空を背に立つ花と向かい合う
夕暮れて花の白さの残りける