初花

初花の灯りのごとく峰にあり
明日は咲く景色を見せて桜の芽
ミモザ咲く下を帰りしランドセル

いぬふぐり

亀ゆるり甲羅浮かせて春の池
希望なお地にありいぬふぐり咲けば
陽春の頂は天に近し

花馬酔木

地に落ちて花馬酔木さらに輝けり
播磨灘播州平野とつちぐもり
静かなり彼岸の入りの竹林

霜夜 花冠4号（2009年1月）

変わりゆくものをとどめず去年今年
新しき年流れ出す静けさに
薄雪の小倉山あり初景色
白味噌の雑煮の甘き嵐山
御降りは雪へ峠の近づけば
紅白を見せて膨らむ梅冬芽
遠ざかる列車の音の霜夜かな

春灯

春灯や万年筆の書き心地
煙るごと水面に映えて柳の芽
鶯の声常にありわが山路

春場所

春の川泥の色して今朝はいく
高架さるホームに立てば春の風
春場所や碧眼が受く勝ち名乗り

春嵐

春雨に肩を濡らして森を行く
雨つづく春の森には霧流れ
春嵐明けし山路の静けさを

引鴨

引鴨に川面は広くなりゆけり
ぶらんこを漕ぎけり空に届くまで
山笑う次々車吐き出して

鳥雲に

初蝶の影わが影を飛び立ちぬ
生きていく限りは別離鳥雲に
鶯や山の空気を新しく

きさらぎ

きさらぎや訪れしもの正面に
詩を吟ず声の聞こえし朧月
境内は花粉にまみれ春疾風