秋刀魚

てのひらに赤き林檎の尻をのせ
パソコンを灯火の秋に開きけり
焼秋刀魚丸き皿へと斜めに置く

弓張月

テニス終え弓張月のやや西へ
一夜の夢一生の夢木槿咲く
湯にあればさらに近しく虫の声

秋草

せいろそばつるつるうまし秋暑し
そば茶飲み秋の句会の座にありぬ
秋草やそれから下る夏目坂

秋の蝶

虫の音と夜のほかには何もなし
秋の蝶ゆっくり翅を開閉す
秋曇り富士は裾野を見せて立つ

桔梗

桔梗青し遠路を帰る友送る
桜紅葉浮かべてゆるり神田川
実椿に迎えられたるそば処
秋暑し庭園に飲むクランベリージュース
稲光夜の港を青く染め

つゆくさ

旅立ちの朝つゆくさの青すがし
新幹線色づく近江の田を走る
ひろびろと田毎に稔りの色見せて

三日の月

松の影透かす夕空三日の月
稲光夜の窓枠真っ白に
朝晴れて柿の色づくころとなり

休暇果つ

休暇果つ校内放送聞こえ来る
まなうらに届きし夜の稲光
雷鳴を聞きつつ眠る秋の夜