卯月

暮れてすぐ卯月満月昇りくる
ポストまで歩く真昼の夏陰を
山路行く我を追い越し夏の蝶

クレマチス

夏きざす野菜ジュースの喉越しに
雨あがり朝の明るさ柿若葉
その庭に大胆に咲きクレマチス

芍薬

シリアルへすぱすぱバナナを切り入れる
芍薬の畑一面の朝日あり
葉桜の向こうにひそか月昇る

若竹

若竹の丸き切り口新しき
中腹に黄金のドーム椎の花
たかんなや伸びゆく細き鞭のごと

窓若葉

オートバイ蔦の青葉に寄せて停め
思春期のくるくる伸びる羊歯若葉
いっしんに書を読む人や窓若葉

夏浅し

木漏れ日の揺れる山路の夏浅し
バンダナをバッグに探す薄暑かな
栗鼠の尾のふわりと見えて夏木立

木堂忌

はつなつの鳶サーマルを高く高く
　（サーマル：上昇温暖気流）

マウンテンバイクと出会う若葉山
話してもわからぬことも木堂忌

若楓

若葉雨ポストに届く新刊書
平らかに枝伸ばしたり若楓
竹落葉積もりし午後の陽を歩く

四十雀

背を伸ばし青葉若葉と向かいあう
羊歯若葉示すは風の通り道
森に入るまず四十雀に迎えられ

若葉風

雨あがり頂は空と若葉風
森暗くなり青羊歯の伸びゆけり
境内の風をとらえし花てまり