きょうの俳句

癌と闘う自分への応援詩
--志賀たいじ[花冠同人]の俳句ブログ

俳句誌「水煙」2月号・3月号・4月号掲載作品

2006-03-31 14:12:38 | Weblog
[2月号・作品7句]
牧閉ざす牛の咆哮太く曳き
廃線の線路真っ直ぐに冬が来る
草の絮軽きものより風に乗り
入れ替える牛舎の藁の冬ぬくし
雲天の零せし雪の野をつつむ
水桶の重さは知らず薄氷
風花の光に重さなかりけり

[2月号・作品5句]
晩秋の牛半眼に昏れなずむ
ふり返る犬が前行く露のみち
ひと湿り来て山門の曼珠沙華
大根の泥滲みてくる夕刊紙
枯木立白樺だけが真っ直ぐに


[3月号・作品7句]
冬ざれや棒なる案山子燃やさるる
牡蠣を剥く生業の顔活きいきと
石塔に新雪まるく明けにけり
冬ざれの濃く単線に入りてより
極月の鮭は武骨に乾きけり
影を踏む音の軋めり冬銀河
寒風に翔びゆくもののみな素足

[3月号・作品5句]
一羽翔ぶあとに続きて沼涸れる
冬の川狭きになりてより迅し
落ちてより水面に燃える楓かな
大根の泥滲みてくる夕刊紙
枯木立白樺だけが真っ直ぐに


[4月号・作品7句]
雪捨ての己が影を越え嵩の影
小さき手に仔牛は白き息かける
寒林の足あと独りだけのもの
雪降って降っては山が遠ざかる
切花の桶せりせりと薄氷
寒林の奥に伐る音こだまして
果てるまで鶴番いゆく空のあお

3月31日の俳句

2006-03-31 09:20:56 | Weblog
とめどなく落ちては流る牡丹雪
心まで知るすべもなし残る鴨
春寒のからくり時計を見ておりぬ

そう言えば水辺の鴨がめっきり少なくなったのにいま気付く。鳴き声もなく静かさが残る。風が止んでも暫し大きな花の塊りの様な雪が降ると言うより落ちては川面に散って流れてゆく、久しぶりに見る景に佇む。

3月30日の俳句

2006-03-30 07:28:56 | Weblog
春嵐ひと夜の夢を雪靴に
ゆるみたる雪吊りに重し春の雪
足もとの土いろ滲む春の雪

予報は雪と聞きつつも穏やかな一日で過した昨日だったが、明けてびっくり今朝は25㎝程の水分の多い積雪、足跡に春の土の色が滲んでいる。

3月28日の俳句 

2006-03-28 09:40:29 | Weblog
春暁の東京に目覚む鴉声かな
歩道覆う落ちし椿をそっと寄せ
旧道の庇明るし白木蓮

都心のホテルの34階で目覚めて眼下の鴉声に驚く。暁の灯が霞の中に点在する景は田舎に暮らす私には感動の景。

3月27日の俳句

2006-03-27 12:33:32 | Weblog
卒業子みな己が空を見上げゆく
爽やかに総代の顔卒業す
春風の日比谷の苑を漲れり
ひこばえの古き切株陽を集む

東京海洋大学卒業・学位記授与式の看板を見上げつつ大ホ-ルに向う石段を登る、東水大が商船大と統合したので日比谷公会堂で行われた。石段のその先の春空はとても青く澄んでいた。多忙の親に代わり参列、壇上の孫の晴れ姿を見て老妻は感動の涙を拭う。

3月22日の俳句

2006-03-22 07:17:46 | Weblog
手に触れし去年のレシ-ト春コ-ト
旅にでる翔天のこころ春空に
春水の眼下の流れ海へ急く

昨日の大嵐、青天の霹靂とはこのことか。いい旅たちになれそう。出発10分前。

3月20日の俳句

2006-03-20 12:59:24 | Weblog
ハウス入るそこから柔き土の春
児のにぎる硬貨の温し駄菓子店
眠りより覚めて呼ぶ風春の山

荒れの予報もずれたのだろう、今の処日差しも明るく、風だけが鳴いている。日本海側と太平洋側から崩れるとの事、当地は最後かな、北海道は広いから。

3月19日の俳句

2006-03-18 15:19:16 | Weblog
古草のまつわる墓に母憶う
墓参る雨ともつかぬ春霙
彼岸寺へ濡れし足元確かめて

春の彼岸入りやっと墓地の雪も消えかかった。枯れたと思っていた草がぴんぴん立っていて足元にまつわる。駒返る草ってこのことを言うのだろうか。
天気予報では明日からは彼岸荒れのとの事だが・・・・。彼岸入り早々の墓参りとなった。

3月18日の俳句

2006-03-18 06:54:04 | Weblog
春空へ合格のV写メ-ルす
雪室の土黒々と菜とともに
読みさしの句集を伏せて春の月

17日は公立高校の入試発表の日、隣接の校門横の掲示板の前は歓喜の渦、殆どの子が携帯電話を手に、誰に送る写メ-ルだろう。

3月17日の俳句

2006-03-17 16:42:47 | Weblog
水湧いて踏み入る間合い蕗のとう

椅子の喪主に先立つ夫の終の雪
花の日に介護のひとに誰が添わむ

親友・松原君を野辺に送る。 小学校長を退職して16年もなるのに焼香者が多い、人望があったからだろう。車椅子の喪主が痛々しい。15年前奥さんが倒れずっと介護生活、仲よい夫婦だった。親思いの子が看ると言うが、病知らずに自称元気印が2ケ月余の入院で要介護の妻を残して逝く故人はさぞ残念だったろう。

3月16日の俳句

2006-03-16 06:36:50 | Weblog
聞く鳶の角度をかえて寒戻る
職退いて遠く春闘の声高し
淡雪のもろきに似たり友逝きぬ

早く寒さが収まればと思っていたが、急の寒さのせいでもあるまいが竹馬の友が逝ってしまった、残念だ。つい一週間前には気もしっかりいたのに。そう言えばこの処ずっと鳶の飛ぶ位置が海よりになっていて何かの予感があったのだが。

3月15日の俳句

2006-03-15 07:58:24 | Weblog
きさらぎの満月の道影淡く
瞑想の弥勒ほとけに笑み温し
救急車近くに夜風冴えかえる

予想以上の寒の戻り、前日と気温差10度近い一日中マイナス気温。風の冷たさに初めて立寄った喫茶はギャラリ-風だが落ち着いた佇まい、土門拳風の弥勒菩薩半跏思惟像の写真に見入った。満月を前にしての久しぶりにみる美しい春の月だが夜風が冷たい。

3月14日の俳句

2006-03-14 07:30:51 | Weblog
早春の氷湖一枚に陽を反す
斑雪野の麦芽は立てり青々と
遠目にも木の芽吹くいろ確かめる

用で北見市まで出掛ける。海は明けたのに湖は一面氷だ。岸辺は水面も覗かせているから、解けるのもそう遠くはあるまい。斑雪の畑に顔を出した麦芽の凛とした姿が眩しい。枯木立の梢も紫帯びてる、木の芽吹きの近いのも確かだ。俳句に出会ってからの外出は今までにない潤いがある。明日は寒の戻りがありそう。