1月31日の俳句

野仏の目のやさしくて雪眩し
流氷の風切って鳥は尾を立てる
流氷来て寡黙の漁師と旅人に

1月30日の俳句

風花を捉えた筈の掌の中に
湯豆腐の眼鏡の曇る掬う毎
柔かき今朝の足音雪なるか

1月29日の俳句

薄氷を割れば待ちしか鳥が来る
知らぬ間の氷筍生まる軒雫
果てるまで鶴番いゆく空のあお

1月28日の俳句

遠目にも虚飾なき樹の雪の華
冬雲の低くきに映す街明り
雪雲の重ねる空を鳶めぐる

1月27日の俳句

ひとときの動くものなし冬茜
風鳴いて友戻したき冬の葬
寒声の御堂の天より正信偈

1月26日の俳句

流氷に明け青空と白い海
海閉じて離れ番屋の冬ざるる
北風吹いて海辺の町の露地の闇

1月25日の俳句

北空を真っ黒に閉ざし吹雪くる
北風吹けば流氷一野の海静か
流氷や海の海なるもの消して

1月24日の俳句

寒林の奥に伐る音こだまして
息白く鶴声張り上ぐ朝の陽に
天心の寒気貫く飛機ありて

1月23日の俳句

寒暁のなき音に耳欹てる
腰痛に流氷潜む夜寒くる
凍空を微塵に砕きパイル打つ

1月22日の俳句

秒針の煌めき冬の日を拾い
纏いくる我が影ひとつ寒の月
寒暁の月しらじらと野に山に

1月21日の俳句

さりさりと氷押しつつ川落つる
寒日和観ぬテレビ入れ友ひとり
腰痛の診し日よりどか雪はなく

1月20日の俳句

大寒の朝炊飯のブザ－聴く
大寒の障子はりはりと明けの声
酷寒の耳も眼(まなこ)も冷めにけり

1月19日の俳句

白眩し転がり遊ぶ雪の子よ　
雪影の軒より翔び出す雀の子　
み仏に似し岩輝りぬ冬あかね

1月18日の俳句

切花の桶せりせりと薄氷
賽銭の音聞きとれずどんど焼き
ロザリオに絵硝子透かす冬薄日

1月17日の俳句

尾白鷲忽ち岬の風を呼び
寒晴れの声華やぎてチャペル前
点滴や瞑れば雪野を駈けめぐる