12月31日の俳句

年の瀬の大きな夕日孕み牛
年の湯や老斑の殖え確かむる
大年の番いの鶴に空ひらく
行く年や孕みし牛の産迫る
産近き牛舎に犬の息白し

12月30日の俳句

煤払い高所に貼られし千社札
犬放つ点が雪野を駆け巡る
鐘楼の箒新しく年用意

12月29日の俳句

光年と言う速さを知らず星の冴え
星凍る街の眠りの深さなか
友送る粉雪に尾灯消えるまで

12月28日の俳句

マスクして眼鏡の曇り雪催い
ふるさとは遠くにありぬ冬落暉
一と夜の語る間(あわい)や旅暖炉

12月27日の俳句

冬芽見る遠近感は空のなか
冬ざれて投げし石切る河の水
冬日影香の漂い平らかに

風は残るが昨日の吹雪が嘘の様な天気、雪掻きに追われる。辛夷の枝の尖りは確かに冬芽だ。排雪は河原へ運搬する。

12月26日の俳句

冬雀に揺れ止まる間のやじろべえ
どの窓も雪吹きつけて昼灯す
昏れてなお空鳴きやまず雪しまく

12月25日の俳句

どの屋根も丸くまるく雪聖夜
冬雲のそこだけきれて夕焼ける
極月の窪みし魚板音隠もる

12月24日の俳句

風はげし雪が影曳く街灯り
裸木のそのままの美しき容あり
軸の書の少し歪みし寒き朝

12月23日の俳句

わが影に炎近づく大焚火
雪明かり目覚めし刻を確かめる
沈めては浮き立つ柚子の湯に温む

12月22日の俳句

星冴えて鼓の音の反りくる
寒風に翔びゆくもののみな素足
追伸に干柿も一緒と走り書き

12月21日の俳句

朝寒や牛の乳房のほのあかく
過ぎし空今朝はしずかに雪の町
夕映えのとどかぬ海の暮早し

12月20日の俳句

一羽翔ぶあとに続きて沼涸れる
冬晴れやフロントガラスに抜ける空
風冴ゆる峰はきびしく美しく

12月19日の俳句

吹雪はげし見えるものみな影消して
シャッタ－の軋む音冴え夜更ける
「善処します」まこと曖昧に年暮れる

12月18日の俳句

冷たさも忘れ唱える念仏に
冬夕日荘厳のかがやき弥陀仏に
梟や我ソロモンの指環欲し

12月17日の俳句

白薔薇の冷たさとかす冬の日よ(推敲)
凍星も親星子星ありにけり
腹垂れる鱈ずっしりと白子かな