負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

漢字の横に振る「ルビ」は宝石のルビーに由来している

2004年11月22日 | 詞花日暦
振仮名が創り出す
ダブル・イメージは秀逸だ
――塚本邦雄(歌人)

 漢字に振るルビの由来は、イギリスで小さなサイズの活字を宝石のルビーに喩えて呼んだため。むずかしい漢字の読み方を横に小さく表示する振りがなは、江戸の木版本の頃からあった。明治以降の活字本には総ルビの本もあって、これで漢字を憶えたという人がたくさんいる。日本独特の振りがなは、漢字を読めない人に読み方を教える啓蒙の意図が強かった。
 昔、岡本かの子の小説で「吐月峰」に「はいふき」のルビが振られたのをふしぎに思った。後年、静岡市西郊の天中山吐月峰柴屋寺を訪れ、謎が解けた。連歌師・宗長が草庵を結んだ場所は竹林に囲まれる。その竹を利用して庶民の喫煙用具・灰吹きをつくり、竹筒に「吐月峰」の焼印を押した。
 ルビは教育上の啓蒙だけではない。ひとつの漢字にこめられた重層する意味や歴史の広がりを示す。現代もルビの復活を説く人がおおい。やたら漢字を平仮名に置き換えて、深みと広がりのダブル・イメージを葬りたくないからである。