負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

古典的名著『戦争論』を日本に紹介したのは森鴎外である

2004年11月10日 | 詞花日暦
クラウゼヰィッツは兵事哲学者
とも謂うべき人なり
――森鴎外(作家)

 日本人で最初にクラウゼヴィッツの『戦争論』に着目し、のちに翻訳までしたのは、軍医としてドイツに留学していた森鴎外。著者クラウゼヴィッツは、プロイセン王国の少年兵を皮切りに職業軍人の道を歩き、ナポレオンの率いるフランス軍との戦争などを経験している。
『戦争論』を書き始めたのは、まだ三十代後半だったが、鴎外もいうように、実戦と深い哲学的思考によって、近代戦を論じた戦争論の古典を完成させた。そのなかで人道主義者たちの戦争論に触れている。
 彼らの主張は、戦う国が協定で相手の武装を解除するか、降伏させるだけでいい、「なにも敵に過大の損傷を与えるには及ばない」という。だが、クラウゼヴィッツはそれを打破すべきまちがった考え方だと断言する。戦争という「危険な事業」では、「善良な心情から生じる謬見こそ最悪のもの」だから。イラク戦争をしかけたブッシュたちは、表向き人道主義者を装いながら、内心では徹底的に相手を打ちのめす戦争の本質を知らないはずがない。一方で戦争に反対する日本人も人道主義者がおおい。