負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

里神楽は魂を鎮める神々がいたことを思い出させる

2004年11月16日 | 詞花日暦
神社の祭のとき、神楽殿でよく
おかめやひょっとこが踊っている
――須藤功(写真家)

 田舎で秋の収穫が終わると、里神楽の音が響いた。子供心におかめやひょっとこがおかしかった。鬼面のような異形の舞い姿が恐ろしかった。高度成長の頃にはその姿が消えた。関東に住んで、太々神楽を見る機会があった。ひょうきんなふたりは健在だった。娯楽の要素を持った神楽は「興舞」。江戸里神楽系といわれる。
 関東では最古と伝えられる鷲宮神社の「催馬楽神楽」がある。平安時代の歌謡、催馬楽を取り込んでいる。曲目の大半は、古事記・日本書紀の神話を題材にした舞踏劇形式の「神事舞」。この系譜を引く里神楽も、東京二十三区内や周辺に伝わる。
 やはり室町時代からといわれる、岩手県大迫町の早池峰岳神楽も観に出かけた。式舞、神舞、座舞、祈祷舞、権現舞、狂言舞の計五十二番が伝わっている。修験者が伝えたせいか、陸奥のせいか、仮面はどこか遠い異国からきた印象さえある。いずれも無形民俗文化財として保護され、日常からは遊離した。魂を鎮めるべき神々が消えた生活をときに神楽を観て思い返してみたりする。