負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

若山牧水の好物はとろろ・川魚・蕎麦・芋などだった

2004年11月21日 | 詞花日暦
飯の時には炊きたてのに、
なま卵があれば結構である
――若山牧水(歌人)

 宮崎の山深い村に生まれたせいか、若山牧水は「余り眼ざましい御馳走を並べられると肝が冷えて、食欲を失う」という。好物にとろろ汁、川魚、蕎麦やそうめん、芋、大根の類、豆腐に香の物を上げる。昨今の食生活からすれば、なんとも貧しいかぎりだろうが、日本の山村の食生活は長い間そんなものだった。
 ときには「一年中に味わいうる食物中の最も美味なるもの」に出会うことがある。火縄銃を手に、数人の村人が山に入る。やがて帰村した勢子の長者は、手を洗い、口をすすぎ、呪文を唱えながら、山神に祈祷を捧げて、猪をさばく。子供たちは串刺しにした肉を焼き、塩をかけてほおばる。
 東京に来た牧水は、秋のある夜、焼肉を食べながら、子供時代の記憶を鮮やかに甦らせた。日常的でなかった肉の味はたしかにぜいたくだったろう。だからといって、他の食べ物が貧しいとはかぎらない。むしろ、自然がもたらすままの食材が口に入らない現在こそ、貧しさに満ちている。見せかけの豊かさを取りちがえないようにしたい。