負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

漢字には長い歴史の「呪術」が秘められている

2004年11月09日 | 詞花日暦
漢字制限は、言語によって営まれる
自由な精神の活動を制限する
――白川静(立命館大学名誉教授)

 森鴎外のような古い時代の作品が読まれない原因は、そのおおくに漢字がある。近来の文章は複雑な漢字など入らない平易な表現がいい。当用漢字による使用制限もあって、若い人々の語彙は減少し、読み書きは平易へと流れる方向をたどった。
 漢字の研究に生涯を捧げた白川静は、文字はことばを視覚化・形象化し、呪術を秘めた器であるという。中国三千数百年を生きつづけ、その文化圏の土壌として「生命の源泉」になっている。漢字を捨てる日本人は、長い生命の源と文化を断つ。
 対極にはアルファベットの表音文字がある。文字にいたるまえの素朴な絵や音がある。「いまやわれわれの言語生活は、音声言語的な世界に局限され」つつある。政治・文化の米国追従やコンピュータがさらに拍車をかけている。もしアジアの一国として自立した国家と文化を持ち、自由な精神活動を行おうとすれば、漢字を避けて通ることはできない。時代の流れにひたすら身を任せるまえに、漢字へのこだわりを少しでも残しておきたい。