goo blog サービス終了のお知らせ 

菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

不可抗力

2011-10-10 00:00:00 | 国際法務
国際法務入門 第10回

 Neither party shall be liable for any delay or failure of performance of its obligation hereunder because of intervention of a Force Majeure, which term shall include fire, earthquake, flood, strikes, labor dispute, war, governmental order, riot, acts of God, or any other cause beyond the reasonable control of a party.
(いずれの当事者も、火災、地震、洪水、ストライキ、労働争議、戦争、政府の命令、内乱、その他当事者の合理的な支配が及ばない不可抗力の場合は、この契約上の義務の遅滞または不履行に対して責任を負わない。)

 国際契約では、不可抗力(Force Majeure)条項も注意が必要である。

 国内契約においては、「天変地変、戦争、その他の不可抗力によって、物件の引渡しが遅延し、または不能になったときは、当事者は一切の責任を負わない。」などと定められるものであり、あまり注意を払わずに見過ごされがちな条項だ。しかし、英米法では当事者に過失がなくとも債務不履行(契約違反)責任が発生するから、この不可抗力条項にどのような事由を列挙するかが重要になってくる。

 また、労働争議(labor dispute)が不可抗力に列挙されていることがある。労働争議が頻発する外国企業と契約し、相手方従業員のストライキで出荷が大幅に遅れた場合、そのことについて責任追及ができないのも困るだろう。

 このように不可抗力の事由も慎重に審査しなければならない。

(次回に続く)

IATA Legal Forum

2011-09-22 22:29:00 | 国際法務


 9月18~20日の間、イタリア・ローマで開催された国際航空運送協会(IATA)の法律会議に出席しました。



 会場は、☆☆☆☆☆のROMA CAVALIERI



 US DOT Rule on Passenger Rights, UK Bribery Act 2010, EU Reguration 261-2004など、航空法規の最新動向について議論されました。



 会議開始が日曜の夕刻からであったため、少しだけ久しぶりのローマの休日も過ごすことができました。

 ちなみに、帰路RomeからMunich経由で成田に向かいましたが、台風15号の影響で千歳空港にdivert。札幌に1泊してから、本日、羽田空港に戻るハメに…疲れました。


準拠法か、管轄か

2011-09-10 09:00:00 | 国際法務
国際法務入門 第9回

 The parties hereto shall submit for all purpose of or in connection with this Agreement to the exclusive jurisdiction of the Tokyo District Court of Japan.
(この契約当事者は、この契約またはこれに関連するすべての目的のために、東京地方裁判所の専属的裁判管轄に服する。)

 契約交渉では、どちらの当事者も、自国の法律を準拠法(governing law)にしたいだろうし、紛争が生じれば、我が方の近くを裁判管轄(jurisdiction)にしたい。しかし、交渉は"power game"である。結局のところ、双方の力関係でいずれかに落ち着くのが一般的だろう。
 では、交渉の結果、準拠法と管轄のいずれか一方を選択できるとした場合、どちらをとるべきであろうか。

 これは"case by case"というよりほかないが、あえて選択するならば、裁判管轄を日本にもってく
ることにこだわるのが得策である。

 ルール(準拠法)は世界共通といった部分もあるが、試合場所であるコート(裁判管轄)は地元のほうが有利に働く。管轄裁判所が直接勝敗に影響すると考えるべきである。

(次回に続く)

準拠法

2011-08-10 00:00:00 | 国際法務
国際法務入門 第8回

 国内契約で問題にならないものに、準拠法(governing law)条項がある。準拠法とは、紛争が生じた場合に、どちらの国の法律によって解決するかということだ。

 This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the law of Japan.
(この契約は、日本の法律に準拠し、これに従って解釈される)

 双方とも自国の法律の摘要を主張するのが一般的であるが、結局のところ、両者の力関係により決定されしまう。
 しがって、もしニューヨーク州法やカリフォルニア州法、あるいは英国法など、国際的に通用するような法律ならば、あまり準拠法にはこだわらず、ここを譲って、他の実質的な条件(たとえば、価格の引下げ)で「実を取る」という方法もある。

(次回に続く)



一般条項の諸問題

2011-07-10 00:00:00 | 国際法務
国際法務入門 第7回

 英文契約には、契約の内容や種類にかかわらず、通常に規定されている一般条項というものがある。英語では「ボイラープレート条項( boiler plate provisions )」という。
 解除(termination)、準拠法(governing law)、裁判管轄(jurisdiction)、仲裁(arbitration)、不可効力(force majeure)などがそれだ。

 これら一般条項についても、契約書の決まり文句だと気軽に考えないで、慎重に審査することが肝要である。一般条項といえども、契約当事者の意思を反映しなければならない部分があるからだ。

(次回に続く)

英文契約の学び方・読み方

2011-06-10 00:00:00 | 国際法務
国際法務入門 第6回

 第一に、法律英語や英文契約に慣れることが大切である。そのためには経験を重ねるしかないが、まずは簡要な参考書を1冊くらい通読することをよい。
 法律英語の好著としては、早川武夫『法律英語の常識』(日本評論社)を、また、英文契約の入門書として、長谷川俊明『新・法律英語のカギ』(レクシスネクシス・ジャパン)をあげておく。前者は絶版になって久しいが、図書館で借りるなどして、一読することを勧めたい。

 第二に、一般的な英和辞典に加えて、法律辞典(law dictionary)も1冊は手元に置いておきたい。
 米国の代表的な法律辞典には、大部なものとして『Black’s Law Dictionary』(West Publishing Co.)、コンパクトなもので『Steven H. Gifis, Law Dictionary』(Barron’s Educational Series, Inc.)がある。
 また、日本語で書かれたものでは、田中英夫編集代表『英米法辞典』(東京大学出版会)が便利である。



 第三に、読むというより、英文契約を書く場合であるが、『国際取引契約書式集』(国際事業開発)など、日本人向けに書かれた書式集を活用するという方法がある。

(次回に続く)

日本と欧米の契約観(5)

2011-05-10 00:00:00 | 国際法務
国際法務入門 第5回

 一般的にいえば、日本においては、契約そのものが当事者間の「信頼の証し」であり、両社の協力関係を築く第一歩として契約書を交わすに過ぎない。一元客として発注と納品を重ねていって、お互いに気心が知れてきたから、「じゃあ、そろそろビジネス・パートナーとして正式な商取引基本契約でも締結しましょうか」ということになり、契約書を交わす。

 しかし、国際取引の場合、相手方とは、国籍も違えば、使用する言語も違う。人種や民族や通貨が違う。見た目も拝む神様・仏様も違うのである。要するに、相手のことなど、そう容易くは信用できないのだ。したがって、欧米において契約書とは、あらゆる最悪の事態を想定して書かれた、いわば「不信感の象徴」なのである。

 こうした契約観の違いを前提とすると、国内契約を審査するとき以上に、細心の注意をもって内容を慎重に吟味する姿勢が必要となってくる。たとえば、手紙のような形式の書面であっても、軽々にサインしてはならない。

(次回に続く)

日本と欧米の契約観(4)

2011-04-10 00:00:00 | 国際法務
国際法務入門 第4回

 完全合意条項は、当事者間の合意は契約書に書かれたことがすべてであって、逆に契約書に書かれていないことは合意していないことを意味している。要するに、後で契約内容に疑義が生じないためにこそ、契約書を交わすのである。だからこそ、そこに国内契約のような疑義解決条項を入れてしまえば、いったい何のために契約を交わすのか分からなくなってしまうというわけだ。

 欧米のビジネス・パースンにとって、疑義解決条項の存在はおよそ理解されない。その意味で、英文契約における完全合意条項は、国内契約の疑義解決条項とは、いわば正反対の考え方といえよう。

 ほかにも、責任条項(Liability Clause)と保険条項(Insurance Clause)の例を挙げることができる。

(次回に続く)

日本と欧米の契約観(3)

2011-03-10 00:00:00 | 国際法務
国際法務入門 第3回

 国内契約には「本契約の内容につき疑義または紛争が生じた場合には、当事者において誠意をもって協議し、円満なる解決を図るものとする」といった疑義解決条項を入れるのが通常である。契約書に書かれていないことでも、後で話合いによって円満に解決しようという趣旨だ。ところが、国際契約にこのような疑義解決条項に対応するものは見当たらない。

 これに対して、英文契約には、次のような完全合意条項(Entire Agreement Clause)と呼ばれる条項が書かれている。

 This Agreement constitutes the entire and only agreement between the parties hereto with respect to the subject matter hereof and supersedes and replaces any and all prior agreements or understandings, written or oral, expressed or implied, between the parties hereto.

(この契約は、本件に関する両当事者の合意の唯一すべてであって、本契約締結前における当事者間の書面または口頭、明示または黙示のすべての契約または了解にかかわるものである)

(次回に続く)

Willis Global Aviation Conference, Singapore

2011-03-04 00:00:00 | 国際法務
Marina Mandarin Hotel, Singaporeで開催された
英国の保険ブローカーWillisが主催する"AAPA Asia Pacific Aviation Insurance Conference"に出席してきました(シンガポール航空後援)。

上の写真…巨大なビルの上に船が…これはマーライオンの対岸に見える高級総合リゾート「マリーナベイサンズ」。中にはカジノなどがあるそうです。



工事中だったマーライオンの前で。