菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

日本と欧米の契約観(5)

2011-05-10 00:00:00 | 国際法務
国際法務入門 第5回

 一般的にいえば、日本においては、契約そのものが当事者間の「信頼の証し」であり、両社の協力関係を築く第一歩として契約書を交わすに過ぎない。一元客として発注と納品を重ねていって、お互いに気心が知れてきたから、「じゃあ、そろそろビジネス・パートナーとして正式な商取引基本契約でも締結しましょうか」ということになり、契約書を交わす。

 しかし、国際取引の場合、相手方とは、国籍も違えば、使用する言語も違う。人種や民族や通貨が違う。見た目も拝む神様・仏様も違うのである。要するに、相手のことなど、そう容易くは信用できないのだ。したがって、欧米において契約書とは、あらゆる最悪の事態を想定して書かれた、いわば「不信感の象徴」なのである。

 こうした契約観の違いを前提とすると、国内契約を審査するとき以上に、細心の注意をもって内容を慎重に吟味する姿勢が必要となってくる。たとえば、手紙のような形式の書面であっても、軽々にサインしてはならない。

(次回に続く)


最新の画像もっと見る