菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

Doposition

2013-12-29 00:00:00 | 国際法務

 係属中の米国集団訴訟(class action)の証言録取手続き(deposition)を支援するため、12/30(月)から1月4日(土)の間に出張し、ニューヨークで年を越します。帰国は、新年1月5日(日)の予定です。

 クラスアクションとは、民事訴訟の一種で集団訴訟に関する手続きのことをいい、日本の現行法にはない訴訟形態です。個々の利益帰属主体が個々に訴訟手続きをしなくても、その代表者による訴訟を提起し、消費者の権利を一括して行使する権限が認められます。
 ちなみに、消費者庁は、法案提出を準備している集団的消費者被害回復にかかる訴訟制度(日本版クラスアクション)の法案提出を準備しています。しかし、企業法務の立場から、米国の状況をみれば、悪用・濫用の現実も否定することはできず、この制度には大きな問題があると実感しています。この点、経団連や米国商工会議所も反対する立場を表明しているようです(日本における集団訴訟制度に関する緊急提言)。

 また、証言録取(deposition)とは、米国独特のディスカバリー(証拠開示)制度のひとつで、法廷外で証人が自分の知識・経験や考えなどを供述し、それを記録に取る手続きです。

 今回の出張では、期間中のほとんどを現地の法律事務所での打合せに費やしますが、大晦日の夜だけは、米国弁護士たちとEleven Madison Park RestaurantでNew Year's Eve Dinnerを楽しむ予定です。


運送法改正の今後

2013-12-07 06:30:00 | 学会・研究会

 法務省・運送法制研究会(座長・山下友信東京大学教授)の「運送法制研究会報告書」が公表されました。来春以降には法制審議会が開かれると思われます。

     http://www.shojihomu.or.jp/unsohosei/unsohosei.pdf

 この法制審において、運送法制研究会での検討結果がどのような方向で議論されるかについては、予想・推測の域をでませんが…

① 現行商法(運送法)には時代遅れな部分が多々あるため、運送実務を踏まえた現代化が図られるでしょう。

② 海上と航空に関しては、国際性の視点も重要です。しかし、航空分野に限っていえば、国際運送(モントリオール条約)と国内運送(各社約款)との規律に異なる点もありますが、コードシェアが広く行われる現状下、同一便の旅客に異なる約款が適用されるケースは珍しくないため、実は規律を一律に統合する必要性は高くありません。

③ 陸上・海上・航空に共通な部分は、総則的な規律を設けることになりましょうが、各運送手段に特有の問題のほうがむしろ多いと思われるため、各論的な特例規定を検討することになると思われます。

④ 他法との整合性にも配慮が求められるでしょう。たとえば、民法(債権法)改正に関する法制審の約款議論と無縁ではいられません。

⑤ 運送法制研究会は、主に運送事業実務の専門的な観点から議論されましたが、法制審では利用者・消費者的な視点も加味されることが予想されますので、研究会報告とは少し異なった方向性で議論される部分も出てくるかもしれません。

 これから運送法分野は注目されると思います。
 ちなみに、慶應義塾でも数十年ぶりに「航空法」講座が復活し、来年度秋期から法学部・大学院法学研究科で開講する運びとなりました。