菅原貴与志の書庫

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改正個人情報保護法の課題

2016-04-02 17:34:19 | 菅原の論稿

 2015年9月3日,個人情報保護法の改正法が,マイナンバー法改正とともに,衆議院本会議で可決・成立しました。同法の2005年4月の全面施行以来,10年を経ての本格的な改正であす。

 その間,IT技術の進展に伴い,ビッグデータを活用した新産業の創出に対する期待が高まる一方で,深刻な情報漏洩事件への対応も求められるようになってきました。こうした環境変化を踏まえて,高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)は,2013年12月20日に「パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針」を決定し,翌2014年6月24日には「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」を決定しました。この制度改正大綱に基づいて改正法案が策定され,2015年3月10日,改正法案を閣議決定し,これが通常国会に提出されたものです。

 改正個人情報保護法では,「匿名加工情報」の定義を新設し,本人の同意なく目的外利用や第三者提供を可能とする枠組みを導入しました。また,現行法では主務大臣が監督しているところ,内閣府の外局として「個人情報保護委員会」を新設し,個人情報保護に関する権限を集約し,監督の一元化を図ることにしています。さらには,センシティブ情報(要配慮個人情報)の取扱いに本人の同意を要求し,オプトアウト方式の第三者提供に個人情報保護委員会への届出を義務づけるなど,実務的にも重要な改正がなされました。

 本稿では,企業法務の視点から,改正法の課題について,いくつかの検討を試みています。なお、本稿は,2015年12月19日の東京大学ビジネスローセンター公開シンポジウム「個人情報保護法改正と今後の課題」における報告内容を素材に執筆したものです。