菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

事業譲渡をめぐる実務問題

2014-03-04 00:00:00 | 学会・研究会

 3月4日、慶應義塾大学法学部・大学院法務研究科共催「シンポジウム・企業再編の現代的課題――日中民商法比較の観点から」が開催され「事業譲渡をめぐる実務問題~債権者保護を中心に」と題した研究報告を行います。


 事業譲渡は、わが国の会社法上、一定の事業目的により組織化された有機的一体としての機能的財産の移転を目的とする債権契約をいいます(会社法21~24条・467条)。会社が自らの事業部門を他社へ移管する場合や、企業買収などのM&A事例においては、株式譲渡(会社法127条)、合併(同法2条27・28号)、会社分割(会社法2条29・30号)等、さまざまな会社法上の手段が用いられていますが、株式譲渡や合併の場合は、不採算事業部門や多額の負債もいわば丸抱えで承継することになるため、譲渡対象の資産・負債の選択が可能な事業譲渡が選択される場合も少なくありません。たとえば、事業譲渡の手段を用いれば、企業全体を再建することは困難でも、採算性の優れた事業部門だけを切り離して再生することが可能となります。

 しかし、この事業譲渡には、いくつかの実務的な問題が内在しています。

 その第一は、事業譲渡の存在を推認する方法です。特に債権者が譲受会社に対して商号続用(会社法22条)や債務引受広告(同法23条)による責任を主張しようとする場合、事業譲渡の存否に関する紛争が生じる可能性は高くなります。しかし、当事者以外の第三者からは事業譲渡の存否が判然としないため、その存在を推認する方法が実務的に問題となるのです。

 第二に、事業譲渡と会社分割の手段選択の問題です。自社の事業を他社に譲り渡すという現象面では、事業譲渡と会社分割は類似しますが、両者には、いくつかの相違点ないし長短があります。したがって、企業再編の当事者としては、いかなる基準で法的手段を選択すべきかが実務的に重要な課題となります。

 第三に、事業譲渡では、会社分割その他の組織再編と異なり、債権者保護手続が法定されていません。しかし、債権者保護手続に関する規定がないからといって、不適正な対価・方法の事業譲渡が許されるわけではありません。そこで、事業譲渡における債権者保護が実務的にも大きな問題となるのです。悪用的な事業譲渡に対する債権者の救済方法について、商号続用(会社法22条)、債務引受広告(同法23条)、詐害行為取消権の行使(民法424条)、否認権行使(破産法160条)、産活法による保護、法人格否認の法理などについて検討しなければなりません。

 本報告では、事業譲渡の意義を俯瞰したうえで、前記の実務問題について各々検討を試みたいと思います。

IATA Legal Symposium 2014

2014-03-01 12:00:00 | 学会・研究会


 2月22~25日の間、サンフランシスコにて開催された国際航空運送協会(IATA)の法律会議とシンポジウムに出席してまいりました。

 EU Regulation 261-2004の裁判例と航空会社の対応や中南米を中心としたレギュレーションの動向などが議論されました。
 それに先立ち開催されたStar Alianceのlegal conferenceにも参加しました。

 同時期に期日の入った継続中のclass actionのdepositionにも立会しなければならなかったため、内容の濃い(予定の詰まった)出張となりました。