犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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2017年01月08日 | 書の道は
褚遂良(ちょすいりょう 596-658)の
『雁塔聖教序(がんとうしょうぎょうじょ)』を
ひと月くらい前から、ちびちびと臨書している。

特徴的な字だ。
しかしそれはひとくちにまとめられるものではない。
一画一画に、いちいち様々な筆法が用いられている。
ようだ、としか言えない。だって初心者なんだものー。
初心者なりに、こいつはあれこれやってて難しいや、ということだけは分かる。

三蔵法師は『西遊記』でおなじみだろうか。
夏目雅子とか言う人は私よりちょびっと年上の人か。
インドまで行ってどっさりお経を持って来て、中国語に訳した。
三蔵こと玄奘(げんじょう 602-664)の偉業を称える塔が、
唐の都、長安に建っている。
太宗皇帝と皇太子が文章を書き、それを褚遂良が書き、
誰かが石碑に彫ったのだ。
653年のことだと言うから、死の5年前、57歳の書。

仏教の教義を短くまとめ、これまでの中国では正しい教えが無かったことを嘆き、
発祥の地インドに学ぶ必要を語り、玄奘の高潔さを誉め、
正しい教えを求めて西方に旅した次第を述べている。

17年かけて旅し、657部の経を持ち帰ったという。
国家の大事業だ。

石碑に彫る、という習慣のおかげで、千何百年後の日本のオッサンが
苦心している。

どう書くと、つまりどう筆を使うと、線がこのような形になるのか。
筆をどう持っていたのか。
どんな速さやリズムで書いていたのか。

最近やっとわかってきたこと。

・タメている箇所や、すっと行っている箇所があるようだ。
 誰かの本に「思い入れ」という言葉が使われていたなあ。
 なんじゃい思い入れって、と思っていたが、たしかに、
 タメた瞬間に腹の底に何か気持ちが含まれる。

・左払い(「者」の4画など)の終わり寄りが少し太るのは、
 逆筆になっているからじゃないかな。
 筆が少し倒れて、押し出すような感じになるのだろう。

・縦画の始めがくにゃっと長いことがあるが(「則」の1画など)、
 これは逆入しているのだろう。
 写真のものよりも、もっとピロンと上に飛び出ている字が多い。
 筆を立てて入れるのではなく、飛び出ている分は筆を向こうに伸ばして書く。
 引いて立てて、本来の画の始まりの点に来る感じ。
 だからそこに横画が来る。

褚遂良がこう書いていた、なんて確信にはほど遠いが、
このように筆を使うとこの形が出る、という感じが
実に面白い。
古典の臨書は謎解きのようでもある。

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