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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

SPACE BATTLESHIP ヤマト [監督:山崎貴]

2010-12-31 07:56:12 | 映評 2010
個人的評価: ■■■□□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]

素直に第一作のヤマトをベースに脚本化すればよかったのに、なんで「ヤマト2」とブレンドしたのだろう・・・

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ストーリーが好きじゃない・・・というと好みの問題でしかないから、これから書くのは単なる感想である
本作の物語は基本的な骨組みこそ映画版でいう第一作だが、脚本化の上では白色彗星帝国との戦いを描いた映画版第二作のインスパイアの方がはるかに強い。
うろ覚えだから正しくないかもしれないが、松本零士 先生は映画版第二作に強い不満を抱き、若者は死ぬために闘うのではなく、生きるために闘うものだとかなんとか言っていたと記憶している。テレビ版の尺を縮めた劇場版第一作とはあべこべに、劇場版の尺をのばして制作されたテレビシリーズが「宇宙戦艦ヤマト2」で、こちらは主要キャストのほとんどが生き残りハッピーエンドで終るよう改変された。映画版の2を無かったことにしたおかげで、ヤマトはさらにテレビシリーズが続き、劇場版も続けて数作が作られた。
ともかく劇場版2のようにラストで古代進が若い命をかっこよく散らせて地球の危機を救うわけだが、そんなことをしなくても感動させることはできたのではないだろうか。
(「まだ僕たちには命があるじゃないか」などと言って森雪まで道連れに死ぬアニメ劇場版2よりは救いのあるラストだが)
ヤマトを突撃させて波動砲のトリガーを引くくらいリモートコントロールでもできそうな気がするし、波動砲発射口を塞ぐ異物を取り除くのもやれなくはない様に見えた。そういうことが得意そうな真田さんがろくに技師長として活躍する場も与えられずに死んでしまったのですぐにはできないわけだが(真田さんの「こんなこともあろうかと」を聞きたかった・・・)。それよりも何よりも、アニメ劇場版2にはいなかった沖田がいるのである。

話はかわるが最近でも自らの命を犠牲にして危機を救う映画というものをいくつか観た。イーストウッドの「スペースカウボーイ」に「グラン・トリノ」だ。ただし両作とも命を散らすのは老人であり、しかも余命わずかである設定がちゃんと説明されていた。黙ってても数ヶ月で消える命なら誰かのために使おうという決断が感動を誘ったのである。
老人で余命わずかという共通点を持ちながらラストの戦いの前に、アニメ第一作の名台詞名場面を再現するためだけに脚本家によって殺された沖田を思うと悲しくてたまらない。
沖田が尽きようとする自らの命をもって地球を救い、それを見守る古代というラストにするほうがよほど感動できた気がしてならない。
そういえばアニメの「宇宙戦艦ヤマト 完結編」で(実は生きていた)沖田が波動砲の内部爆破でヤマトを自沈させるという実写版で古代がやったのとおなじことをやっていた。

アニメを実写化したことによる弊害か判らないが、セットの狭さや計器類の古さがどうにも気になる。
実際の戦艦大和のスケールでブリッジを設計するとあの程度の広さかもしれないが、どうにも狭苦しい。
そのせいかカメラアングルも似たり寄ったりで表現が広がらない。
娯楽室も寝室もいちいち狭い
古代進の席を俯瞰で写すショットで、現代のパソコンと同じハードキータイプのキーボードが置かれているのが見えて、ひどく興ざめ。
「スタートレック」のエンタープライズ号のブリッジのようにとはいかないまでも、せめてキーボードをタッチパネル型にできなかったものか

敵を集合意識体にしたのは別に良い。「スター・トレック ファーストコンタクト」のボーグとか、「スターシップ・トゥルパーズ」のバグズとかそういうの見慣れているので。
ただその割には「ヤマトの諸君」とか言わせてみたり、これからやろうとしていることを丁寧に説明してくれたり、我々を怒らせすぎたとか、感情的な部分を出しすぎた気がする。伊武雅刀さんの声にはもちろん感動したのだけど。
それ以上に、敵を個々としての自我を持たない集合意識体としたことで、戦いの凄惨が薄れたことが問題だ。無機的なガミラス人は殺してもあまり可哀想ではない。
ヤマトの第一作で一番いい場面と個人的に思っているのは、ヤマトの波動砲により滅亡し廃墟と化したガミラス帝国を観て古代と雪が俺たちはなんてことをしてしまったんだと悲嘆にくれる場面だ。
戦争が悲惨なのは味方や仲間が死ぬからというだけでなく敵を殺すからでもあるのだ・・・ということをあの場面は子供の私に教えてくれた。
しかし実写版で伝わるのは仲間たちの死ばかりであり、そしてその死のほとんどはかっこいい死だった。
そのためばかりでもないが、恐らく1000人くらいはいたであろう乗組員が地球帰還時には30数名にまでなっていたほどの激戦だったことが正直いって劇中からはあまり伝わって来なかった。
ガミラスでの白兵戦もアナライザーの活躍には感動したが、あれだけの多勢に無勢の絶望的な戦いぶりだったのに、帰る頃には敵が掃討されていたのが何でなのかよく判らない。

VFXありきでストーリーがそれを繋ぐ程度の役割しかないような印象を受けた

[追記]
柳葉敏郎さんの真田さんの芝居が、アニメ版で青野武さんが演じられていた喋り方にそっくり。マーロン・ブランドそっくりのデ・ニーロを観た時のような衝撃。それだけに真田さんの活躍が少なかったのが惜しい。わけわからん新兵器とか発明とかいっぱい披露してほしかった。

[追記2]
なんだかんだいって、アニメと同じ声が聞こえるとテンション上がる。
アナライザーもデスラーも、スターシャの声も懐かしいと思ったけれど調べてみると第二作のテレサの声の方で「新たなる旅立ち」以降は二代目スターシャとなられたそうな
そしてささきいさおさん。ナレーションを担当しておられました。正直に言いますとナレーションなんかうっちゃらかして歌い出してくれねーかなーと思いました。
エンディングはなんとかタイラーの歌う英語のバラードなんかかけずに、ささきいさおさんの「真っ赤なスカーフ」にして欲しかった

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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円


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