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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

マルドゥック・スクランブル 圧縮 [監督:工藤進]

2010-12-31 07:52:10 | 映評 2010
個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]


実家の用事で帰省した。札幌だ。忙しくなりそうだったので友達に会う約束は意図的に入れなかったし、実際会う暇もなかった。
だが初日に空き時間ができた。
兄貴に4時ごろ家にきてくれと言われていたが、千歳空港に降り立ったのは12時くらいだった。
1時半くらいには札幌駅についた。4時まで映画でも観て暇をつぶそうと思った。しかし移動時間なども考えると普通に2時間くらいの映画を観るわけにはいかなかった。それでもiモードのMovieWalkerで上映中の作品を探していくとちょうどいい感じに60分程度の上映時間の作品が二つあった。一つはマノエル・ド・オリヴェイラ監督の新作「ブロンド少女は過激に美しく」で当然観たいと思ったが、一日一回の上映で、時間が合わなかった。
もう一本の映画はうまいこと時間が合った。「マルドゥック・スクランブル 圧縮」というタイトルのアニメだった。なんとなく綾波レイ似のヒロインが露出度の高い衣装と銃を持って佇んでいるポスターだった。しかも声は林原めぐみだという。
正直、あまり興味をかきたてられる映画ではなかったが、他に選択の余地もなかったので、私はその映画を観るため地下鉄東豊線の豊水すすきの駅で降り、昔はスガイビルと呼んでいた映画館(現在はディノスシネマと名前が変わっていた)に入っていった。12月の札幌は雨が降っていた。
作品紹介を読むとこの作品は3部作の第一部だと言う。だったら90分ずつの二部作にすればいいのに・・・と思ったが、入場料金は全国一律で1200円均一だという。ということは三作全部みてもトータルの料金は同じか・・・とちょっと納得。安い料金で短い時間でちょちょいと観れるのもいいなあなどと思っていると映画が始まった。

・・・すごく面白かった。

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露出度の高い服を身にまとうスーパーヒロインが悪党どもを次々と殲滅していくSFアニメ。残虐性の強いアクション描写の中でヒロインが徐々に殺しに恍惚を感じていくクライマックスはまさに圧巻。感情の暴走により力を失ったところに現れる最強の刺客。さあどうなるというところで第1部完。続きが観たい

殺人事件の犠牲者である少女ルーンが、事件の証人となるため禁じられた科学の力で蘇る。サイボーグ的なものか。
彼女に力を貸すのはやはり禁断の科学で突然変異的に生まれた極めて高い知能をもつネズミのウフコック。こいつが何にでも変身できる。「ターミネーター2」のT-1000型ターミネーターはラジオや拳銃など複雑な部品や電子機器を要する物には変身できなかったが、ウフコックはそんなものおかまいなしで何にでも変身する。物理法則を無視して明らかに質量の大きいものにも変身するし、電子部品にもなるし、拳銃に変身すれば銃弾だって発射する。あの弾はどこからきてどこへ消えていくのか疑問だが、質量が増えたり減ったりしている時点でそういうことはどうでも良くなる。
そんなウフコックは本来、禁断の科学の産物であるがゆえに処分されねばならないのだが、存在価値が認められれば処分は免れるとのことで、現在は証人保護システム的なものに協力しているようだ。
そしてウフコックはその不思議な力で少女に協力し、彼女をスーパーヒロインにする。ウフコックの力を得て全ての身体能力が超人的になり、射撃の腕も格闘能力も常人離れしたヒロインは無敵だ。
そんな彼女を狙うのは殺人事件の被告側に雇われた男ボイルド。少女が本来通りに死ねば被告は不起訴となるので少女を殺すべく動く。こいつも超人能力を持っていて重力を操ることができるらしい。壁や天井をスタスタと歩くのだ。
そう、ルーン&ウフコックvs ボイルドの戦いは、「ミニドラを連れたパー子がハットリ君と戦う」と説明すればイメージが湧きやすいだろうか。なわけないか

裸も多いし、残虐描写も多いので、子供にはお勧めしない。
しかしアクションシーンにおける血や肉が張り裂け吹き飛ぶ残虐描写の表現力は極めて高い。
ルーンにはまずボイルドに雇われた五人の刺客が襲いかかる。五人は見た目はキモイし殺した奴らの体の一部をコレクションにする倒錯的な趣味をいちいち披露したり、殺しの技を自慢したりするなど、死亡フラグ立ち過ぎな彼らは、定石通りに美しいヒロインによってなす術無く殺されていく。
ここまではありがちな展開だが、おおっと思ったのは刺客を倒すにつれてヒロインが自制心を失っていき、最後は恍惚の表情を浮かべながら刺客を嬲り殺しにする場面。
ここまでキャラクターを観るに耐えないくらい狂わせるのは凄い。
そんでその暴走のせいでウフコックのセーフティ機能が働いて彼の体は強制的な拒絶反応を起こして変身も強制解除されひん死の状態になる。ルーンは我に返ると、ひん死のウフコックを観て自責の念にかられるは、力は失うはで散々な状態になった時に、最強の敵ボイルド登場で絶体絶命。このボイルドが見た目はイケメンだし頭はいいしがたいはいいし余計なことは喋らないし、笑っちゃうくらい「イカニモ強ソウナ奴」なのだ。

ベタな展開といえばそうだが、「過剰な描写」を作り手たちがただ楽しんでいるのでなく、ストーリー全体を覆う「狂気と自制のせめぎ合い」を表現するための手段としてきちんと用いているところが良いと思う。
第二部も第三部も観たいと思ったが・・・地方都市のシネコンにかかるといいな。

[追記]
ルーンの林原めぐみは色々な声色を使い分けて「パプリカ」のときもすごいと思ったけどやっぱりうまい。
ウフコックの声は八嶋智人で、軽妙な感じも、クールな感じも、その裏にルーンへの思いが滲んでいるようでうまい。2人の掛け合いはとてもよい。
うまい人が演じるとアニメのキャラは一気に立つ。
ボイルドの磯部勉さんも例によって例のごとしの強面な声がかっこよかった。私の中では「超音速攻撃ヘリ エアーウルフ」のストリングフェロー・ホークの声の方としてインプットされているのだけど。

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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円


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