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映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

プレシャス [監督:リー・ダニエルズ]

2010-12-31 06:34:10 | 映評 2010
ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円

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個人的評価: ■■■■□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]

アカデミー賞作品賞の候補で、暴力的な母親を演じたモニークが助演女優賞を受賞。脚本賞も受賞した話題作。
大方のアメリカの映画賞で脚本部門では「マイレージ・マイライフ」が評価されていたが、その流れに逆らうように「プレシャス」が受賞した。
比較的低予算で大スターが主役を務めるでもない小品佳作がアカデミーの脚本賞を取ることは過去にもよくあった。「リトル・ミス・サンシャイン」とか(これも作品賞候補で、脚本賞と助演男優賞だけ受賞していた点で「プレシャス」に似ている)

本作は悲惨な物語である。主人公はプレシャスという「いい名前だね」と言われそうな名前の女の子。
彼女は貧乏で、父親にレイプされて、生まれた子供はダウン症で、母親からは暴力を受け、教育も満足に受けさせてもらえないから字もろくに読めず、体重は推定100Kgはあろうかという超肥満(母親が半ば意図的に過食に追い込んだ節も伺える)。唯一の楽しみは妄想で、妄想の中では音楽界のスターであるが、そんな夢に向かって努力することは現実がゆるさない。しかも物語の終盤で更なる不幸が彼女に追い討ちをかける。
見た目も暮らしも家庭も頭も才能も健康も、人より優れているものが何もないような女の子。
そんな人物の人生をある種優越感に浸りながら哀れみの目で見る映画に過ぎないとしたら、これほど高くは評価されなかっただろう。
プレシャスはありとあらゆる逆境の渦に飲まれながらも、あるいは飲まれるがゆえに、他の誰かや他の何かのせいにして生きても始まらないと気づく。
そうした自立意識をもたせたのが、プレシャスちゃんとは対照的に全てを兼ね備えたようなグラマーで美人な先生。言い寄る男も多いだろうがレズビアンの彼女は同性との同居で満ち足りている。男性観客の目の保養目的のキャスティングではなく、幸せは人それぞれということを意識させるための必然的なキャスティング。父によって人生をズタズタにされたプレシャスだが、男性に全く依存せずに自立し幸せを掴み取った先生を見て何を思っただろうか。先生に普通にイケメンな彼氏がいたらプレシャスちゃんは先生をあんなに慕わなかった気がしなくもない。

まあ、それにしてもこれでもかと襲いかかる不幸の波状攻撃のおかげでプレシャス演じたガボちゃんことカボレイ・シディベちゃんがとても愛おしく可愛らしく見えてくる。見た目はあんな彼女だけどこの映画は見た人が彼女に恋するように作られている。ガボちゃんの新作と言われると観たくなるもの。主演はあんまないかもしれないけど

[追記]
アメリカでニューヨークの女の人生といえば「セックス・アンド・ザ・シティ」なる映画を最近DVDでみたが、ああいうライフスタイルにあこがれるぅぅのは全然構わないのだけど、貧乏な社会主義国とか発展途上国の人民へ向けた富裕層って素晴らしいわよプロパガンダ映画みたいに思えて空々しい。ああいう勝ち組人生に酔うと同時に「プレシャス」みたいな負け組人生も学ぶとバランスがとれるし、アメリカとかニューヨークとかに過剰な幻想を抱かなくて済む(「セックス・アンド・ザ・シティ」のファンもニューヨークが華やかなだけでないくらい知ってるだろうけど)

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