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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

ノルウェイの森 [監督:トラン・アン・ユン]

2011-01-03 22:30:55 | 映評 2010
個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]

とっても面白かった。リー・ピンビンのカメラとか、みどりちゃんの痛さとか、唐突で意味不明で笑っちゃうアート狙いのイメージ映像とか、気の合う仲間と酒を飲みながら再見したい映画だ。

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とっても面白かったです。私が面白いと感じる要素の恐らく50%くらいはリー・ピンビンさんのカメラの美しさだと思います。
うわー、きれいな画だなー、まるでリー・ピンビンの画みたいだなー・・・などと思ってエンドタイトルを迎えたらほんとにリー・ピンビンでした。
窓際というのはテキトーに撮ってもきれいっぽく写るもんですが、それにしてもリー・ピンビンの窓際は美しいです。
そういえば私が過去に観た唯一のトラン・アン・ユン監督作品の「夏至」もリー・ピンビンのカメラでした。あの映画も画がきれいでした。
「空気人形」といい、「ノルウェイの森」といい、日本映画のリー・ピンビンは絶好調。すべての日本映画は彼が撮影すればいいんじゃないかと思うくらいワンショット、ワンショットに風格があります。

登場人物の中ではみどりというキャラが結構ツボです。
演じている水原希子も含めていろいろな意味で痛々しいです。
ナオコというキャラが本当の意味での痛みを知っている女性で、演じる菊地凛子の芝居や存在感もそれを余すところなく表現しているのですが、対してミドリは言うことなすこと一々薄く浅く感じられ嘘くさいです。
男をじらしにじらせて突き放しては近づくツンツンした感じは面白いのですが、聞いてもいないことをぺらぺら喋り、その内容も男を言いなりにする願望話とか、セックスなら経験豊富で何でも知ってます的話。そのくせ、そうした発言を裏付ける行動は一切見せず、見た目もなんか幼くて、すべてが嘘くさく聞こえます。現にお父さんが外国に行っているという身の上話は嘘でした。ただの強がり娘のように見えます。
ミドリの嘘くささは、水原希子の芝居の下手さが助長しています。菊地凛子の海外での華やかな活動の記憶との対比もあって、哀れなくらいに水原希子の芝居は女優としての経験の浅さがにじみ出ているように見えます。
ミドリというキャラが10年後にこの時の自分を思い返して恥ずかしいと顔を赤らめる姿とともに、水原希子が10年後にこの映画を見返して顔を赤らめてしまう姿も想像してしまいます。いや、もしかすると水原希子は意図的にあのような芝居をしているのかもしれません。だとしたらすごい女優です。なんにせよ監督は女優の特性をうまいこと利用して役に膨らみを持たせたと言えましょう。
そんなミドリがなんか痛々しくて応援したくなります。
そして、行動を伴わないSなミドリは、従順Mなワタナベにとっては、シャレになんないナオコとの関係があるだけに、「あー、なんか癒される」と感じられる存在であるのがわかります。

物語としてはインテリ文学青年の性と怠惰と苦悩の日々な感じに「花様年崋」や「2046」の気配を感じ、多分ウォン・カーウァイも村上春樹が好きだったんだなと思いました。
それは置いといて、「イケメンですけど何か?」的シュッとした男たち祭りとか、最後にレイコさんと寝る時の「ほんとにやるんですかー」な流されすぎなモテ男ぶりとか、唐突すぎて意味不明なイメージ映像などなど、つい笑ってしまうバカ映画的要素も盛りだくさん。
とくにイメージ映像は飲みながら観ればキャハハと笑うの必至です。
ワタナベくんなんで木に登ってるの?
海パンで石垣の前でポーズつけて何やってんの?
ナオコが死んでつらいのはわかるけど、なんで海岸で野宿してんの?
もちろん、そんな状況になるまでには色々なことがあって、映画ではその過程をはしょっているだけに違いないからワタナベくんをアホという気はないのですが、そうしたイメージが説明も前フリもなしでいきなり飛び込んでくるので笑うしかないのです。
そんなネタ満載のこの映画は、はキューブリックもベルイマンもアルモドバルもソクーロフも笑って楽しめる気の合う仲間たちと酒を飲んで突っ込みながら観ればきっと楽しい時間を過ごせるに違いないと思うのです

[追記]
音の使い方よかった
特に、初めてワタナベがナオコを抱く時の雨の音の使い方。「悪人」もああいう音の使い方をすべきだったと思います

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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円


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1 コメント

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TBありがとうございます。 (きぐるまん)
2011-01-05 19:04:19
確かにリー・ピンビンのカメラはいつも素晴らしいですね。
それだけに「水原希子の痛々しさ」が浮き出るのかもしれません(笑)。
でも今の彼女に演技力を求めるのは控えておきたいと思います(笑)。
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