今回取り上げるのは、getの過去分詞としてgotを用いるか、それともgottenを用いるかという問題についてです。教科書ではどちらも使われる、という記述で終わっていますが、どちらも等しく用いられる、というようなことは普通考えられません。つまりどちらが用いられるのかはある程度決まっている、といってよいでしょう。しかし、それは国(や地域)によって傾向をつかむことが大事だと思います。
非常に参考になるのは『オーレックス英和辞典(第2版)』のプラネットボードでしょう。次の文で、アメリカとイギリスでどのような違いがあるかを明らかにしてくれています。
(1)We have gotten to know each other very well.(僕らはお互いをよく知るようになってきた。)
(2)We have got to know each other very well.
これらの文でアメリカでは約7割の人が(1)のgottenを用いると回答し、イギリス人の約5割が(2)を用いると回答しています。またアメリカではどちらも用いられると回答したのが約2割(ただし後で述べるように、アメリカやカナダでは(2)は別の意味で解釈されるので実際には(1)だけが用いられる、といっても言い過ぎではないと思います)イギリスでどちらも用いられるとした人は3割近くを占めています。このことからイギリスでもgottenが用いられるようになってきてはいるが、まだ一般的なのはgotのほうである、といえるでしょう。
私自身、この問題については気になって調べてみたことがありますが、ほぼ上の結果と同じでした。もう少し詳しい話をすると、そもそもはgottenのほうが古い形らしく、アメリカではそのまま残っていましたが、イギリスではgotが用いられるようになったようです。しかし、アメリカ英語の影響で、最近はまたgottenもイギリスで用いられるようになってきているようです。また、イギリスではgottenを口語表現、あるいはスラングで用いる、という解釈をする人もいます。もうひとつ例を見てみましょう。次の例文は『総合英語Forest(第6版)』で用いられていた例文です。
(3)You should have got up at seven.(君は7時に起きるべきだったのに。)
先ほどの話からもわかるとおり、この例文はアメリカやカナダでは容認度が下がります。カナダ出身のネイティブスピーカーは自分は(3)は用いず、次の(4)が正しいと言っていました。
(4)You should have gotten up at seven.
一方、イギリス出身のネイティブによれば、(3)も(4)も同じように用いられるが、自分は(4)を使う、と言っていました。また、(4)のほうが口語的だ、とも述べていました。イギリスでも口語表現としてgottenが広まってきていることがうかがえます。しかし、この傾向がイギリス全体に当てはまるのかはわかりません。
私の結論としてはアメリカではほぼgottenが用いられ、イギリスではgotを用いることが多いが、口語表現としてgottenも用いられるようになってきている、ということです。
最後に(2)の例文に関して、アメリカでは(1)と同じ意味では解釈されません。プラネットボードでも述べられているとおり、この文は「私たちはお互いをよくしらなければならない」という意味で解釈されます。「have got to」はアメリカでもイギリスでも「have to」とほぼ同じ意味で使われます(正確には少し意味が異なります。このあたりの議論については柏野(2002)を参照されたい)。そこでアメリカではこのhave toの意味で解釈されるようです。また、プラネットボードではアメリカでは(2)のhave got toがhave toと解釈される、としていますが、実際にはイギリス人の中でも、(1)(2)の両方を容認する場合have toの意味で解釈する人も多いようです。プラネットボードで調査した例文が別の問題での混乱を招いているので、(1)や(2)の例文でインフォーマント調査するべきではなく、調査の仕方に少し改善の余地があるように思います。とはいえ、プラネットボードは個人的にかなり興味深いのでぜひ項目を増やしていってほしいものです。
このようなgotとgottenの問題は、指導の際は混乱を招くので特に言及する必要はないと思いますが、教師は指導に際して例文に配慮する必要があるでしょう。
【参考文献】
柏野健次.(2002).『英語助動詞の語法』.研究社.
非常に参考になるのは『オーレックス英和辞典(第2版)』のプラネットボードでしょう。次の文で、アメリカとイギリスでどのような違いがあるかを明らかにしてくれています。
(1)We have gotten to know each other very well.(僕らはお互いをよく知るようになってきた。)
(2)We have got to know each other very well.
これらの文でアメリカでは約7割の人が(1)のgottenを用いると回答し、イギリス人の約5割が(2)を用いると回答しています。またアメリカではどちらも用いられると回答したのが約2割(ただし後で述べるように、アメリカやカナダでは(2)は別の意味で解釈されるので実際には(1)だけが用いられる、といっても言い過ぎではないと思います)イギリスでどちらも用いられるとした人は3割近くを占めています。このことからイギリスでもgottenが用いられるようになってきてはいるが、まだ一般的なのはgotのほうである、といえるでしょう。
私自身、この問題については気になって調べてみたことがありますが、ほぼ上の結果と同じでした。もう少し詳しい話をすると、そもそもはgottenのほうが古い形らしく、アメリカではそのまま残っていましたが、イギリスではgotが用いられるようになったようです。しかし、アメリカ英語の影響で、最近はまたgottenもイギリスで用いられるようになってきているようです。また、イギリスではgottenを口語表現、あるいはスラングで用いる、という解釈をする人もいます。もうひとつ例を見てみましょう。次の例文は『総合英語Forest(第6版)』で用いられていた例文です。
(3)You should have got up at seven.(君は7時に起きるべきだったのに。)
先ほどの話からもわかるとおり、この例文はアメリカやカナダでは容認度が下がります。カナダ出身のネイティブスピーカーは自分は(3)は用いず、次の(4)が正しいと言っていました。
(4)You should have gotten up at seven.
一方、イギリス出身のネイティブによれば、(3)も(4)も同じように用いられるが、自分は(4)を使う、と言っていました。また、(4)のほうが口語的だ、とも述べていました。イギリスでも口語表現としてgottenが広まってきていることがうかがえます。しかし、この傾向がイギリス全体に当てはまるのかはわかりません。
私の結論としてはアメリカではほぼgottenが用いられ、イギリスではgotを用いることが多いが、口語表現としてgottenも用いられるようになってきている、ということです。
最後に(2)の例文に関して、アメリカでは(1)と同じ意味では解釈されません。プラネットボードでも述べられているとおり、この文は「私たちはお互いをよくしらなければならない」という意味で解釈されます。「have got to」はアメリカでもイギリスでも「have to」とほぼ同じ意味で使われます(正確には少し意味が異なります。このあたりの議論については柏野(2002)を参照されたい)。そこでアメリカではこのhave toの意味で解釈されるようです。また、プラネットボードではアメリカでは(2)のhave got toがhave toと解釈される、としていますが、実際にはイギリス人の中でも、(1)(2)の両方を容認する場合have toの意味で解釈する人も多いようです。プラネットボードで調査した例文が別の問題での混乱を招いているので、(1)や(2)の例文でインフォーマント調査するべきではなく、調査の仕方に少し改善の余地があるように思います。とはいえ、プラネットボードは個人的にかなり興味深いのでぜひ項目を増やしていってほしいものです。
このようなgotとgottenの問題は、指導の際は混乱を招くので特に言及する必要はないと思いますが、教師は指導に際して例文に配慮する必要があるでしょう。
【参考文献】
柏野健次.(2002).『英語助動詞の語法』.研究社.
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