読書の記録

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ダーウィンの覗き穴〔マンガ版〕 虫たちの性生活がすごいんです

2019年04月17日 | サイエンス

ダーウィンの覗き穴〔マンガ版〕 虫たちの性生活がすごいんです

日高トモキチ (原作:メノ・スヒルトハウゼン)
早川書房

 

 ぶらりと書店を覗いたら、おおーめずらしい!日高トモキチの新刊が出てる、と即買い。寡作だがこの人にハズレはないのである。

 

 中身は昆虫や動植物のひたすらオスメスのセックスの話だ。そしてやたらにオスの生殖器すなわちちんちんが出てくる。

 そんなテーマだが、知的興奮というか、豊穣かつ深遠な性の世界にくらくらする。曰く「コスパの安い精子とコスパの高い卵子」。これが複雑な性淘汰の進化と現象をつくりあげる。雄も雄なら雌も雌の子孫存続をかけた壮絶な戦いがそこにはあるのだ。おそまつながらここに書かれてることの10分の1も知らなかった。

 もともと原作はメノ・スヒルトハウゼンという生物学者の「ダーウィンの覗き穴:性的器官はいかに進化したか」という本があって、それを日高トモキチが要所をつまみながらコミカライズしたものだが、すみずみにまで図解や擬人化、関係ない雑ネタにお笑いネタがはりめぐらされて徹底していて情報量ハンパない。捨てゴマのように八代亜紀やブルース・リーやスカーレット・オハラが出てくるが、なんとなくメタファ的に言いたいことはわかる。原作のほうを読んでいないのだけれど、たぶんこのマンガ版のほうが圧倒的に頭にはいりやすく、しかも原作にくらべてそんなに情報は欠落してないんじゃないかと想像する。これこそ日高トモキチの真骨頂だ。

 

 理系ネタのコミカライズといえば「まんがサイエンス」のあさりよしとおが有名だ。あさりよしとおはもともとは(今でも?)サブカル系のマンガ家だが、この人のサイエンスまんがは定評がある。すでにベテランである。

 また、僕が小学生のころは学習研究社すなわち「学研」が全盛期で、そこに内山安二というマンガ家がいた。この世界ではレジェンドとでもいう人で学研まんが「できる・できないのひみつ」とか「世界びっくり旅行」とかに魅惑された小学生は多かったんじゃないかと思う。

 最近の学習まんが事情がどうなっているのかわからないが、うちのむすめが小学生のときに何か買ってやろうかと書店なんかでパラパラ見てみたりするのだが、情報過多なわりにストーリー進行が雑で頭に入りにくかったり、絵はこまやかだけどかえって重要情報と付加情報のめりはりがわかりにくくなったり、ドラえもんやポケモンなどとキャラクタータイアップして一瞬とっつきやすそうだけれど肝心の学習部分は全部文章で頭に入りづらかったりする。なんだか学習まんがとしてのメソッドが衰えているんじゃないかなどと思ったりする。

 思い出補正と言ってしまえばそれまでだがそうとばかりは言い切れない。むかしの学習まんがが古本に出ていたのでそれを買って、同じテーマの最新の学習まんがも買って両方を娘に読ませたら、昔のやつのほうがわかりやすいし覚えやすいといって、そのあとは昔のほうばかり読み返していた。

 

 日高トモキチ氏はプロフィールによると学習まんが編集出身者だそうで、なるほどどうりでツボをおさえているわけだ。なんとなく「オトナむけ」の仕事が多そうだけれど、子どもむけ学習まんがもやってみたらどうか。


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