読書の記録

評論・小説・ビジネス書・教養・コミックなどなんでも。書評、感想、分析、ただの思い出話など。ネタバレありもネタバレなしも。

佐藤ナオキのボツ本

2019年04月19日 | 編集・デザイン

佐藤ナオキのボツ本

佐藤ナオキ
日経BP社


 著者は、nendoというデザインオフィスの代表。本書では早稲田大学ラグビー部の新ユニフォームとか、IHI(旧・石川島播磨重工業)の広告とかが紹介されている。

 本書は、いちプロジェクトの過程で日の目を見ることのなかったボツ案が出てくる。そしてボツ案を通すことで、プロジェクトのプロセスにおける著者のこだわりがわかる。

 ふうんなるほど、と思うことは、著者の場合かならず問題解決の要になる「ブツ」をみつけることだ。タカラベルモントの美容室プロジェクトの場合は椅子、早稲田大学の場合はユニフォーム、 ロッテのガムの場合はパッケージ、IHIの場合はその会社のロゴ、スーツケースの場合は車輪である。
 そしてその「ブツ」を徹底的にデザインする。そこで多数のボツ案が出る。

 つまり、フォーカスポイントを探すにあたってたくさんのボツ案が出るのではなく、キーとなるブツを見極めてたあとに、そこのデザインのバリエーションにボツ案が出るということだ。
 このボツ案のデザインバリエーションは、どの方向に企画性を尖らせていくかというものであり、単に思いつくままいろいろ雑多に書き並べていくというのとは違う(おそらくはそういうボツ案も大量にあるには違いないが)。
 その「デザイン」も、おもにプロダクトデザインだから、単にカッコいいとかかわいいではなく、何かしら機能的な意味合いがある。何かを動かす「機能」がある。この「機能」こそが問題解決だ。

 だから思考の順番でいえば、かかえる「課題」があり、その課題解決にはこんな「機能」をもつ何かがあればいいい、と考え、ではその何かに直結する「ブツ」は何かと考える。で、その「ブツ」が見極められると、そこに「機能」を託したデザインがほどこされ、それを中心に周辺のさまざまな施策が考えられていく、ということになる。

 ボツ案がいろいろ出てきて面白そうと思って手に取った本だったのだが、デザイン思考というのはこういうことかというのがとてもわかりやすくて勉強になった。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ダーウィンの覗き穴〔マンガ... | トップ | 知的生産の技術 »