読書の記録

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トーキョー博物誌東京動物観察帳

2008年10月27日 | 東京論
トーキョー博物誌東京動物観察帳 1 ---日高トモキチ

 僕の妻はなんだか道端の花や植物や鳥にめっぽう詳しい。軒先のエンゼルトランペットが満開だ、路端のタチアオイがそろそろ咲きそうだ、このアカザは食べられそう、ムクドリが騒いでいる、カケスが横切った、などと固有名詞を出してくる。こちらはすべて同じような花や虫や鳥にしか見えていなかったものだけに、なんだか自分がとてもつまらない無粋な人間に思えてくる。
 それどころか、葉っぱの裏側に潜んでいるアゲハの幼虫とか、落ち葉に潜む小さいツチガエルのような、普通ならば見過ごしてしまうようなものも道すがら器用に見つけてしまい、お前はナウシカか、とつっこみたくなる。なんとなく視界に入ってくるらしい。
 ただ花だ鳥だ虫だと認識するよりも、妻やこの著者のようにひとつひとつの違いを知れば、日常の風景がはるかに多彩で楽しい世界に見えることには違いない。

 この「トーキョー博物誌東京動物観察帳」は、そういう首都圏での普段の生活の範囲で接する様々な動植物を取り上げている(ついでにギャグのネタがかなりサブカルなのが特徴。個人的には大笑い)。かなり細かい観察ながら、トリビア雑学に堕さずにうまく情緒におさまっていて好感度が高い。文理の垣根を越えた引用だけでなく、ひとつひとつのコトバやカットに吟味のあとが見られ、実は野心作とさえ伺うことができる。

それにしてもよく野外のフェンスなんかに絡まっている野生の朝顔って、あれ外来種だったんだ。初めて知った(ユウガオとヨルガオはまったく違うというのも初めて知った)。

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