この夏の初め、ふと思いついて始めた飯山線と千曲川に沿って走るランニング旅も今回で3回目。
立ヶ花駅からきた飯山駅までの18.5キロ、きた飯山駅から上桑名川駅までの15.5キロと計34キロほどの距離を走った。
どうしても身についてしまったリズムは、ともすればキロ5分台を刻もうとする。
長い距離を走ろうとすれば、それでは体力が持たない。
そこで、今回は岐6分30秒から7分を狙うことにした。
前回行き着いた上桑名川駅からスタート。
毎度の悪い癖だが、ウォーミングアップは無し。ゆっくり走ればそれでいいだろう(本当はよくない)。
天気は上々。
極めてローカルな自然豊かな道で、車はたまにしか通らない。
田んぼでは稲刈りを終えた後のハゼ掛けがあったり、わらくずを燃やしていたり、のどかな農村の風景があった。
この辺りでは4キロから5キロ走ると次の駅がある。
ほとんど無人駅だが、駅舎は何とも趣がある。コンクリートの巨大な駅舎なんかよりよほどいい。
ふらっとトランクを下げて寅さんが現れそうな気がする。
左側は山になっていてそこから豊かな清流が流れ、千曲川に合流する。
千曲川もここまで来ると川幅も広がり流れも緩やかになる。
こんな景色の中をゆっくりと走っていられるなんてなんと贅沢なのだろう。
奥信濃の秋が心にしみる。
左側が飯山線。右側が千曲川。
真ん中の道路はかつての幹線道路だが、今は川向うに立派なバイパスができ、ほとんどの車はそちらを通る。
そんなわけで、この道は地元の人の車が時たま通るくらいで、自分専用のランニングロードと言ってもいいくらいだ。
長野県の河は、電力会社のダムでずいぶん景観が損なわれてしまったが、原発に頼るよりはいい。
自然エネルギーの割合を増やしていかないと、地球環境は壊滅的な影響を受ける。
いよいよ越後の看板が出てきた。
ここまでほぼキロ6分30秒のペース。順調だ。
信州の最北端の村、栄村に入る。
この村は平成の大合併の嵐にも負けず、独立を守った。
大きな市へ身売りすることなく尊厳を守ったのだ。
僕らの村でも合併話が持ち上がった。村長が乗り気だったのだ。
曲がりなりにも自分たちの裁量で物事を決められるのと、すべては陳情してお願いするしかないのとは雲泥の相違。
僕らの村も自立を選んだのだ。
栄村は豪雪地帯で人口も少ない。
そして、東北の大地震の夜に、震度6の地震に見舞われて大きな被害を受けた。
信濃白鳥駅。この美しい名前の駅は本当にど田舎にある。
折しも列車がやって来て、10代半ばくらいの少女たちが5人降りた。
この小さな村に、こんなにまとまって若い人が居るはずもなく、多分何所からかやってきたのだろう。
駅舎の写真を撮ろうと中に入って行った僕に「こんにちは」と向こうから声をかけてくれた。
この年代の女の子にどう接したらよいか戸惑う世代の僕はあわてて「こんにちは」と返した。
路はくだんのバイパスと合流し、車がひっきりなしに通った。
そしてまたわき道に逸れ、横道駅に着いた。
この駅には先ほどまで管理人がいたが、丁度鍵をかけて出ていくところだった。
昼間は2時間に1本ほどの列車間隔なので、ずっといる必要はないのだろう。
鳥の絵がコンクリートのトンネルの無機質さを和らげてくれる。
この向こうは村の中心部だ。
森宮野原駅。
日本最高積雪地点。昭和20年2月12日、積雪量7.85m。
終戦半年前のこの村の人々はどんな暮らしをしていたのだろう。
そんなことに思いを馳せながら、一休み。
駅向かいの八百屋さんで売っていたお弁当。
コンビニのものとは違って手作り感があってうまかった。
駅舎にはセルフサービスのお茶もあって、ゆっくり休ませてもらった。
2階には絵手紙の展示もある。
もう少し足を延ばして越後田中まで行ければ、というのが当初の目論見だった。
車でいっぱいの道の駅を横目で見ながらそのまま通過。
あの橋を渡れば越後だ。
だが、駅へは左の脇道に入る。
昔ながらの集落がポツンポツンとある。
次の駅、足滝を探しながら行くと、左手の山際の小高いところに駅舎がある。
ところが、驚いたことに、そこに行く道がどう探しても見つけられなかった。
後で調べると、この駅は工事のために設けられた駅で、工事が終わると閉鎖されたのだが、地元の要望で再開されたそうだ。
主に通学の高校生が利用する。で、道は草むらの中に細く付けられているそうな。次回探してみよう。
最終目的地、越後田中駅に着いた。
距離23.01キロ、時間2時間30分20秒(走った正味時間)、ペース6:32/km
次回は十日町を目指す。およそ25.6キロ。さらに終着駅の越後川口まではそこから25キロ。
あと2回走ればたどり着けるだろうか。
越後に入った千曲川は信濃川と名前を変える。
信濃川に沿い、飯山線の駅を繋ぐランニング旅。
列車や車の窓からではわからない空気がある。風のそよぎや匂いがある。
越後はどんな風物を見せてくれるのだろうか。
この大地の上をもっと自由に、もっとしなやかに走りたいと切に思う。
重さなどないかのように軽やかに、野生の動物のように、力強く。
来週から野沢菜採りの仕事を頼まれた。月、木、金、たまに土の日程。
火、水には巻き割の手伝いも頼まれた。
昨年移住した人に山の話でもしに来ないかと誘われた。
区の仕事も例大祭や粗大ごみの搬出手伝いなどがあり、会計監査の仕事も控えている。
80歳になった義姉も次の山の誘いを楽しみにしているとかみさんは言う。
忙しさというのは突然襲うようにやって来るものなんだな。
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