もう最初から高山さんと決めていた。
何の迷いもなく、脇目もふらず、ただ一筋だった。
地元の信州生まれだったし、愛想もよかった。
ずっと付き合っていくものと思っていた。
ところがふとした気の迷いで、今をときめく茨城の柿沼さんに目移りしてしまった。
まあ、一度だけなら...
* * *
これは蕎麦の製粉所の話だ。
確かに良い蕎麦粉で、お取り寄せは高山製粉と決めていた。
全種類のそば粉メニューを打った。
だが、たまには違うそば粉で打ってみたくなった。
常陸秋そばは最高峰の蕎麦粉という呼び声が高い。
それを扱う柿沼製粉から、せいろそば粉と丸うすそば粉、丸抜きを取り寄せた。
メーカーが違えば、包装の仕方も違うのだなと、改めて感心する。
どんな手触りなのだろう。
どんな色なのだろう。
そしてどんな食感なのだろう。
早く打ってみたい。
かねてから常陸秋そばは、気になってはいた。
それに、これも大きな理由だが、そば粉の値段がかなり安い。
遜色がなければ、二股掛けることになりそうだ。
我が家の畑でも、今蕎麦の花が真っ盛り。
例年、僅かばかりだが、蕎麦を栽培する。
だが、一度も収穫したことがない。
結構大変な作業なのだ。
今年こそ収穫して、石臼で挽き、蕎麦を打とうと固く決意している。
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