白樺小舎便り(しらかばごやだより)

北信濃の田舎暮らしの日々

伝説の美しく静かな奥深い山 黒姫山

2020年11月02日 16時56分46秒 | 日記
「黒姫物語」
  今の長野県中野市に、室町時代後期、高梨氏という一族が勢力を張っていた。高梨氏の武将高梨政盛に黒姫という美しい娘がいた。
  ある日、殿様は黒姫をともなってお花見に出かけた。 その花見の宴のなか、黒姫の前に、一匹の白い蛇が現われた。  宴の楽しさにつられて出てきたのだろう、と殿様は上機嫌で、「姫、あの蛇にも、酒盃をあげてやりなさい」と娘に勧めた。姫は蛇を怖がらずに、酒盃を白蛇の前に差し出した。蛇は嬉しそうにそれを飲み干すと、去っていった。
  その後、この殿様のところに、一人の立派な姿の若者が訪れた。「私は、あのお花見の宴の時、黒姫からお酒をいただいた者です」殿様は彼の話に驚いた。若者は、自分は、志賀山の大沼池に棲む龍だというのである。白蛇に化けて散策していたところへ、花見に来ていた殿様一行と出くわし、酒を飲ませてくれた黒姫の姿が忘れられないと言うのだ。「姫をさらうのはたやすいことですが、それでは道理に反するので、こうして伺いに参りました。黒姫をぜひ妻に貰いたいのです」殿様は断わった。人でない者に、大事な娘を渡せなかった。しかし、この龍はその後も、毎日毎日、殿様もとを訪れた。屋敷を厳重に警備しても、無駄だった。龍は必ず殿様の前に現われた。そして、龍の熱心な姿に、いつしか黒姫は龍に心ひかれるようになる。
  殿様は部下と相談し、龍に策をかけた。罠にまんまと陥った彼は、殿様たちから、殺されそうになる。
  「礼をつくした返答がこれか!」龍は激怒し、本性を現わすと、たちまち天にかけのぼった。とたんに、大嵐がおこった。あちこちで洪水がおこり、あたり一面地獄のような光景と化した。黒姫はこれを見て、矢も盾もたまらない。  「龍よ、私はあなたのところへ行きましょう。だから嵐をしずめておくれ」
  たちまち龍が下りてきて、黒姫を乗せると再び天にかけのぼった。龍は妙高と戸隠の間の山に降りたち、山頂の池で黒姫と暮らすようになった。以後、姫嶽山と呼ばれていたその山を「黒姫山」と呼ぶようになったという。



『信濃の民話』の「黒姫物語」
1957年(昭和32年)発行の『信濃の民話』に収録された「黒姫物語」は、中野市中町の綿貫市郎・松谷せつによる話を作家の松谷みよ子が再話したものである[11]。内容を要約して以下に記す[11]。
春、高梨政盛は黒姫と共に家臣を連れて花見に出かけた。盃を上げていると一匹の白蛇が姿を現し、黒姫は政盛に促されて白蛇にも盃を分けてやった。その夜、黒姫のもとに狩衣を着た小姓が現れて求婚する。彼は昼間に姫から盃を頂いた者だといい、その気高く美しい様に、姫も心を惹かれた。数日後、その小姓は黒姫を嫁にもらおうと政盛のもとを訪ねた。政盛から見ても立派な青年ではあったが、自らを大沼池の主の黒龍であると話す小姓に対し、人間ではないものに黒姫を嫁がせる訳にはいかないと破談にした。それから毎日のように小姓が城を訪ねて来るようになって100日、政盛は小姓に試練を課す。しかしそれは政盛が仕掛けた罠であり、痛めつけられた小姓は正体をさらし、怒って四十八池の水を落とそうと嵐を呼んだ。黒姫は小姓に酷い仕打ちをした政盛を責め、黒雲に向かって嵐を鎮めるよう叫び、鏡を高く投げ上げた。すると黒龍が姿を現し、黒姫を乗せて駆け上った。洪水で荒れ果てた下界を見て嘆き悲しむ黒姫に、黒龍は許しを乞うた。それから二人は共に山の池へと移り住み、その山は黒姫山と呼ばれるようになった。


この他にも色々な伝説が残る山、信州百名山の5番目の山、黒姫山。
この山に初めて登ったのは四十数年前のことだ。
六月の残雪の頃で、途中で出会ったのは東京からきたという二人の女性だけだった。
北信五岳と言われる斑尾山、妙高山、黒姫山、戸隠山(高妻山)、飯綱山の中で、多分一番登る人が少ないと思われる。
山を女性に例えるのは現代では非難されるのだろうか。それでも蔑視するのではないし、許されるのではないだろうか。
妙高山は貴婦人、高妻山は優しく凛とした武士の奥方、飯綱山は明るく気立ての良い商家の娘、斑尾山はおきゃんな長屋の娘、そして黒姫山は深窓の令嬢といったイメージ。
いつも目にする北信五岳に、ずっとそんなイメージを抱いて来た。
二番目に登ったのは数年前の秋のことだ。
この時の紅葉は見事だった。
戸隠の近くからのルートは西登山道というが、新たに西新道が出来ていて、二時間近く時間が短縮されるようになっていた。

今回、三回目の登山に行ったのは11月1日。
五岳の、他の山はもう何回も登っているので、やっぱりこの山は気軽に上りにこれる山ではない。
新道と旧道を組み合わせて登ると七時間位の歩行時間となる。
時間ばかりの問題ではなく、名前からばかりでなく黒く暗いイメージがある。
山全体が黒い樹木に覆われ、明るく弾んだ気持ちで登るというわけにはいかない。
それでも、朝五時半に登り口に着くと、もうすでに数台の車がある。
まだ良くの闇があたりを多い、丸い月が出ている。
県外ナンバーで、随分遠くから来ているので驚いた。
今や県外からも登りに来る人気の山になったのだなあと感慨ひとしお。

太陽が昇る前の古池と黒姫山。

旧道と新道の出会う場所。


しなの木。信濃の語源となったという。

霜柱。

稜線は美しく楽しい。

すぐ隣に高妻から乙妻に続く稜線。

右火打山、左焼山。

富士山。

手前飯縄山、奥八ヶ岳。

後立山の名主五竜岳、鹿島槍ヶ岳。

先日登った斑尾山と野尻湖。

山頂、二千五十三メートル。

帰路は旧道。北側にある為積雪。


黒姫と龍は今もこの池で静かに暮らしているのだろうか。

そばざるを作るという竹取りの翁。戸隠はそばの里、そして竹細工の里。

唐松の葉が風もないのにはらはらと舞い落ちて、静かに降り積もっていく。

踏むのがもったいない。

旧道の登山口に着くと、たくさんの県外車。もう奥深く静かな山とは言えないのだなあ。


帰路、満ち足りた達成感に包まれて、隠し湯に立ち寄った。
この温泉はほとんど地元に人しか来ないので、混雑していないのがいい。
ぬるい源泉は長湯をするのにもいい。
茶色の泉質は、上がった後も湯冷めしなくて効能がありそうでいい。
その後の、てんぷらうどんも絶品。
この温泉は毎年の恒例、飯綱山の元旦登山の後に立ち寄る温泉。
名前を明かすと混み合うといけないので、ヒミツ。




 





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