暦の上ではもう冬だ。
この地では、カラマツの紅葉が山々を染めている。
もう、何度か近くの山に雪が降った。
我が家から見る北アルプス、白馬三山から唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳と続く後立山連峰は真っ白だ。
槍、穂高と南に行くほど雪は少なくなる。
今年ももう少しで終わっていくのだなあ。
11月になって、信州百名山の熊伏山、茶臼山、鬼面山の三つの山を登った。
同じ信州とはいえ、二百数十キロ先の、静岡県境にあるのが熊伏山、愛知県境にあるのが茶臼山、信州のチベットともいわれる大鹿村にあるのが鬼面山。
飯田市の砂払温泉に宿を取り、かみさんと義姉を伴って登りに行った。
ちょうど紅葉真っ盛りで、いい時期に連れてきてもらったと義姉とかみさんは大喜び。
義姉はこの秋79歳になった。
それでも、山登りへの情熱はすごいものがある。
次週、雲取山のツァーに誘われているが、どうしようか迷っているという。
歩きぶりをみれば、とてもやめた方がいいなどと言える状態ではない。
是非行って来て、と強く勧めた。
最初に登ったのが、熊伏山。
国道152号線が青崩れ峠を挟んで途切れている。
ガイドブックによれば、登山口は信州側と遠州側にある。
信州側から登る計画を立てたが、何か虫が知らせて、現地に問い合わせた。
すると、もう10年ほど前から、信州側のルートは立ち入り禁止になっているという。
そこで、遠州側に回り込んでの登山となった。
南アルプスの雄大な山脈の脇にあり、ひっそりとしているが、実に良い山であった。
茶臼山は愛知県の最高峰だが、信州側の根羽村から登った。
往復で1時間もかからない山だが、愛知県側の眺望が開けていた。
簡単に1座を稼いだ。シメシメ。
砂払温泉は以前にも泊まったことがある。
食事も、温泉も実に満足のいく宿だ。
翌日は大鹿村回りで、鬼面山の登山口、地藏峠に向かった。
村はリニア新幹線の工事準備でダンプカーやトラックが走り回っていた。
この静かな山里は、工事の間だけは賑わうのだろう。
工事が終われば、一層過疎が進んだ、荒廃が目立つ村になってしまう。
儲かるのは土建業者だけだ。
この村には、もう40年以上昔、塩見岳に登る時に来たことがある。
わが村と同じ、日本一美しい村連合に加入している。
その美しい村が重機で蹂躙されているような気がする。
リニア新幹線、誰のために、何のために作るのだろう。
規模は全く違うが、わが村でも文化交流施設の建設が行われようとしている。
一部の人が建設推進で旗を振っている。
多分、建設乗車も手ぐすね引いて待ち構えている。
建設費25億から34億円という見通しだ。
世帯数は2,400くらい。
1世帯100万円から140万円くらいの負担となる。
それを作るために100万円出してくれ、と言われて、はいそうですかと言える世帯がどれくらいあるだろう。
羊が泣かないように毛をむしるのが、税の極意とは言いえて妙だが、意識化してみれば、そういうことだ。
高齢化が進み、過疎化が進んでいく村に、立派すぎる建物は必要ないとおもうのだが、、、、、
鬼面山の紅葉は実に見事なものだった。紅葉が沢山あり、ブナの林もあった。
この夏に登った聖岳、多分来年登る荒川岳、赤石岳の姿も見えた。
帰りに小渋川沿いに建つ赤石荘の温泉に浸かった。
浴場からの写真撮影は厳禁だという。
以前、裸の入浴客が写った写真がSNSにアップされて、問題になり、ひどい目にあったと受付の人は言う。
どこの温泉にもそんな問題が付きまとうご時世になったのだな。
少しぬるめの温泉からは紅葉に染まる赤石岳や、名前を知らない周囲の山々がよく見えた。
信州百名山は、これで80座の登頂となった。
本格的に雪が来る前に、今年はあと一つか二つは登ろう。
何しろ、麓まで行きつくのが大変な山ばかり残っているので、簡単ではないが、やってみよう。
そのあとは、東海道歩きの残された2区間、水口、石部、草津を歩きに行こう。
あとがき
写真はたくさん撮ったけれど、どの写真も捨てがたく、結局選び出せなかった。
また、自分の目で見たものを大切にしたくて、写真は敢えて載せなかった。
さらに言えば、この山旅は、すでに自己完結してしまって、改めて文章にすると、何か違うものになってしまうような気がして、詳細を書くのはやめにした。