美しき旋律 麗しき雑音

忘れるための記憶/覚えておかないための記録

秋のあぶらぜみ~Neil Youngの沁みるうた

2006-09-19 23:56:33 | 日記・エッセイ・コラム

何を思ったか突如鳴き出すあぶらぜみよ。いざ、土の中から出てきてはみたものの、すっかり夏は終わっていて、交尾の相手はどこにもおりませぬ。あわれ、季節外れのあぶらぜみよ。その鳴き声が切ないでござるよ。僕にはわかるよ、その切なさが。そして、そのやり場のない性欲をどこへ持って行くのやら。

夕暮れ、同じ木の下の草むらで秋の虫が鳴きまする。こちらは愛のパートナーに恵まれて、ここぞとばかりに鳴きまする。羽根と羽根を幾千回も擦り合わせ、ここぞとばかり鳴きまする。

太陽が落ちて、風は一層涼しくなりまする。クルマの窓を全開にして、堤防の道をどこまでも南下する。六甲の尾根が優しい桃色に染まる頃、僕は妄想のまっただ中にいる。そして、すぐにその妄想が現実でないことにがっかりする。そんな時、カーステレオから流れ出すのは、Neil Youngの優しいというのか、情けないというのか、その独特の声のバラード。僕の切ない心のヒダをそっと撫でるように、Neil Youngのうたは続く。堤防の風は冷たくもあり、暖かくもある。Neil Youngのうたはただただ優しくこころの襞に沁みていくのだった。


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