今日も近藤さん(仮名)は眠れません。
近藤さんは93歳、90年以上も生きてこられた、とても立派なお方です。
さて。ご高齢であるにあたり、近藤さんの不眠に対しては普通通りには参りません。
睡眠薬を使用すると、翌日に残って日中に眠ってしまう。そして、嚥下も悪くなり、面会に来られたご家族ともお話ができない…。
ご家族からは、自分たちが面会に来たら、話ができるようにしてもらいたい、とのご希望もありました。
そんなこんながありまして、睡眠薬はほんのちょっとだけ使うことにして、後はご本人に生活リズムに合わせて様子をみてみよう、ということになっています。
近藤さんの睡眠のリズムは本当によくわかりません。
同じ量の睡眠薬を使っても、ちっとも眠らない時もあれば、何だか眠っているような時もあったり、いつまで起きておくんだろう?と不思議に思うくらい、何日か覚醒し続けるときがあります。
ふと、かまとばあちゃんみたいに、何か、睡眠と覚醒に近藤さん自身のリズムがあるのかしらん?と思いましたが、そのようなお決まりのリズムというものはなさそうです。
ある夜勤の夜。
近藤さんは眠れないので、ナースコールの嵐(=特に用事はないけど、ナースコールを押しまくること)に「なりそう」でした。
あ、そうそう。近藤さん、せん妄もありまして。
せん妄に対しては薬剤も使用しているし、せん妄自体がおつきあい可能な範囲ですので、様子をみるしかありません。
この夜は、混乱はそんなにひどくないな、と感じました。
だけど、眠れない…。
お部屋に行くたびに、目が「らんらんらんらん」
ナースコールの嵐を察知したポンは、これは何とかせなあかん!と思いまして、コールが鳴る前に、ちょこちょこと近藤さんのお部屋に向かいました。
ポン:「眠れへんの~~~?」
近藤さん:「(こっくりとうなずく)足が重いねん」
ああ、そうか、お布団が重たいのか。
そうか、そうか…、お布団を軽めにしよ~っと。
お布団ね…と手に取ってみたけれど…。
ふと気が付きました。
ああ、病院のお布団って、なんて重たいんだと。
病院の布団は高級な羽布団のように素敵なものではありませんから、
この93歳の小さな体の近藤さんにとっては、病院のお布団の重さ自体が耐えられない苦痛になっていたんだろうね…と思いました。
筋力だって、体力だって、ぜんぜーん十分じゃありませんからー。
そういえばねぇ、冬になったら、自分ちの布団や毛布を持ち込まれる方の人数って、多いわよねぇ
お布団が重たいっておっしゃる患者さんも多いわよねぇ…。
今、入院されている小谷さん(仮名)(←別の患者さん)、小谷さんのお部屋には、デパートで購入したとっても素敵な羽布団が届いていました。
すてきな羽布団が届いた日にお部屋に行ってみると、布団があまりにもふんわりと、もりもりっと、まるーく、ベッド柵よりも背の高い、小高い山になっていたので、一瞬、
「きょ、きょ、巨大な亀がおるわ…」とポンは思ってしまいました。
お布団にもぐりこむと巨大な亀に見えてしまう小谷さんは、夜になると薄手のダウンを着て(どんだけ厚着やねん)羽布団にもぐりこんでおられますが、とっても快適そうです。
毛布だって、病院の毛布は重たいよねー。
ポンだって、おうちであんなに重たい毛布はかぶってないもの…。
不眠への対策、ひと~つ☆
「お布団を軽くすること」→はいっ、申し送り~~~~っ。
これは、ご家族にご協力願うしかないのですがね…。
この夜、なんぼか、近藤さんとお話をちょこちょこしながら、一緒に過ごしました。
近藤さん、おむつ交換が終わったあと、ポンにねぎらいの言葉をかけてくれました。
(近藤さんは優しいっ)
「ありがとう。あんたは(おむつを)変えんでええんか?」
わ、わ、私って…。
近藤さんには、どんな看護師さんにみえてるんやろ…いや、看護師さんにみえてなかったんやろうか…。
ポン:大丈夫っ、私、自分でトイレにいけるからっ。ありがとっ。
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