三酔人の独り言

ルポライター・星徹のブログです。歴史認識と国内政治に関わる問題を中心に。他のテーマについても。

米国を引き込むための集団的自衛権行使?

2014-03-04 16:50:03 | 外交・安全保障
 「朝日新聞」2014.3.3(朝刊)は、集団的自衛権の問題にかなり力を入れた紙面作りをしている(*「社説」を含めて)。「朝日」の意気込みが感じられる。

 この中の「集団的自衛権 [読み解く] 同盟強化へ「一緒に戦う」」(園田耕司)で私が興味を持ったのは、次の2つの箇所だ。

<・・・米国内では中国との戦闘にもつながる「尖閣有事」に巻き込まれることを懸念する声は根強い。
 外務省が昨年末に公表した米国での対日世論調査によると、日米安保条約を「維持すべきだ」と答えたのは67%で、前年と比べて22ポイント減と急落>─①

<安倍政権の安全保障政策をめぐる有識者会議に加わるメンバーの一人は「米国はあんな岩礁のために戦いたくない。日本が『いざとなったら米国と一緒にやります』と用意しなければ、米国は日本の離島防衛に『ハイ、サヨナラ』ですよ」と話す。
 日本が集団的自衛権の行使を認め、米国が関わる戦争で自衛隊が米軍と一緒に戦う覚悟を示せば、米国を「尖閣有事」にも巻き込めるというわけだ>─②

 上記①に関しては、当ブログ2013.12.27「安倍首相が靖国参拝 国内専用政治の愚」ですでに取り上げた(*元ネタは「朝日新聞」だが)。

 この「朝日」記事に加えて私が言いたいのは、米国民の「思い」を形作る要因として、「安全保障面の事柄」とともに「歴史認識面の事柄」の重要性も認識すべきだ、ということだ。

 そのことについて、私はこれまで当ブログで訴え続けてきた(*当ブログ2014.2.26「中国に「プレゼント」を送り続ける安倍首相」など参照)。

 そういった視点を持って上記②を併せ読めば、仮にこの「有識者会議に加わるメンバー」氏の主張を全部認めるとしても、「だからこそ、安倍首相やその『分身』(取り巻き・お友達)らの歴史認識に関わる言動(*靖国参拝など)は有害無益だ」ということになるはずだ。

 少し横道に反れる。②の「日本が『いざとなったら米国と一緒にやります』」の意味が、分かりづらいのだ。この「メンバー」氏の意図が、2通り考えられるからだ。

 その1。「『尖閣有事』に限らず他の案件についても」と理解することだ。こう考えると、「そのために、日本は集団的自衛権の行使を容認するべきだ」という主張につながる。

 その2。「『尖閣有事』についてだけ」と理解することだ。もしこう取るなら、「日本が『いざとなったら米国と一緒にやります』」というのが「当然」というより、「日本が前面に出てやるのが当然でしょ」ということになるはずだ。しかしそれならば、事は集団的自衛権の問題ではなく、個別的自衛権の問題になるはずだ。だから、焦点がずれてくる。

 ②のこの後の文章から、園田記者は「その1」の意味でこの「メンバー」氏のコメントを紹介したことが分かる。しかし、「メンバー」氏の真意はよく分からない。園田記者の理解を前提にして、話を元に戻そう。

 ②の「メンバー」氏は、「俺は現実派だ、リアリストだ」と自認しているのかもしれない。しかし私には、同氏は「浪花節の世界」に生きているようにしか見えない。

 「会社で上司に高級なお中元・お歳暮を欠かさず贈り続けているので、出世するはずだ。間違っても、リストラされるはずがない」と考えるようなものだ。

 あまり良い例えではなかったか? 自分で書いてみて「ちょっと違う面もあるかな」と思ったのは、お中元・お歳暮の贈答であれば金銭支出で済む問題だが、事は国家の安全保障の中核に関わることなのだから(*自分で納得)。

*そもそも、日本は米国に対して、国内で多くの米軍基地を提供し、併せて多額の「思いやり予算」も提供している。これらは、米国に対する「多大な貢献」と言えるはずだ。

 日本が米国のために「集団的自衛権の行使」をやり続ければ、米国は「尖閣有事」の際に日本を決して見捨てないのか? 逆に、「行使」で米国に貢献しなければ、見捨てられるのか? その因果関係はどの程度あるのか? それぞれの選択の長所・短所を、総合的に判断する必要があるのではないか。

 どの国も、「国益を最大限にする」ことを中心に考え、行動する(*個々の政治家の多くにとっては、「自身の地位の確保」が最重要だろうが)。米国も同じだ。だから、日本が米国に「尖閣を守り、日本を守るために、協力してほしい」と望むのなら、米国が「そうしたい」「その方が国益にかなう」と思う状況を日本自身が作り出す、ということが重要になるはずだ。

                                  [2014.3.5 加筆等修正]


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