三酔人の独り言

ルポライター・星徹のブログです。歴史認識と国内政治に関わる問題を中心に。他のテーマについても。

イスラエル製の攻撃型ドローンを買うな

2024-07-14 19:11:27 | 外交・安全保障
↑ 市民側は防衛省と外務省に対し厳しい質問や要求を突き付けた。中央が杉原浩司さん。(2024年6月21日、衆院第一議員会館。撮影:星徹)

 社会民主党の機関紙「社会新報」2024.7.11号の3面に掲載された無署名記事「イスラエル製攻撃型ドローンを買うな」を以下に転載する。私(星徹)が取材・執筆に協力した記事で、編集部から転載許可を得ている。

「社会新報」2024.7.11号(3面)
イスラエル製攻撃型ドローンを買うな
NAJATが防衛・外務両省交渉


 イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区でのジェノサイド(集団殺害)はとどまることがなく、同ヨルダン川西岸地区でも蛮行・虐殺が続いている。

政府のご都合主義
 こうした状況下で、防衛省(自衛隊)はイスラエル製の攻撃型ドローンの採用を検討している。現段階での候補は7機種で、うち5機種がイスラエル製だ。

 この問題をめぐり、6月21日に市民と防衛省・外務省の面談交渉が衆院第一議員会館で行なわれた。主催は武器取引反対ネットワーク(NAJAT)で、「ジェノサイドに抗する防衛大学校卒業生の会」と「BDS Japan Bulletin」が賛同。

 市民側は事前に、両省に対し合わせて28項目の質問状を提出していた。

 交渉の中で、「防大卒業生の会」の平山貴盛さんは「イスラエル製の兵器はパレスチナ人に対する人体実験・虐殺によって性能が担保されている」と述べた。

 その上で、市民側は「イスラエルによるガザ地区などパレスチナ侵攻」についての見解を求めた。だが、防衛省担当官は「ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難し」などとする一方で、パレスチナ人を虐殺し続けるイスラエルへの批判の言葉はなかった。

イスラエル擁護ありき
 また国際司法裁判所(ICJ)が今年5月24日に出した「(ガザ地区南部)ラファへの攻撃の即時停止」暫定措置命令をイスラエルが無視し続けることに対し、防衛省担当官は「ガザ地区の危機的な人道状況を深く憂慮し」などとするのみで、イスラエルに対する批判的な言葉はなかった。

 NAJATの杉原浩司代表が「本来であればイスラエル製を輸入することはあり得ないはず」と批判するも、担当官は「特定の国の無人機の取得を予断するものではない」などと繰り返すのみだった。

 外務省担当官も、防衛省と同様、イスラエル擁護の姿勢に基づいて答弁した。

 市民側は「ICJの3度にわたる暫定措置命令を守らせるためにも、日本政府はイスラエルに対し強い制裁を発動すべき」と要求したが、外務省担当官は「適宜、適切に判断していく」など無内容な答弁を繰り返すばかりだ。

 こうした政府側の姿勢に対し、市民側から「イスラエル擁護ありきだ」などと批判の声が相次いだ。

  《「社会新報」記事の転載はここまで》

 イスラエルは昨年10月7日以降、パレスチナ自治区ガザ地区でパレスチナ人に対しジェノサイド(集団殺害)とも言える集団懲罰的な蛮行を続けている。またヨルダン川西岸地区に於いても、国際法に違反する「占領地への入植活動」を強化させ、パレスチナ人の人権を無視した蛮行・虐殺を続けている。

 特にガザ地区でのイスラエルの蛮行に対しては、国際司法裁判所(ICJ)が3度にわたり「ジェノサイドを防ぐための全ての措置を講じろ」「パレスチナ人の人権・人道を守るための即時かつ効果的な措置を講じろ」「(ガザ地区南部の)ラファへの軍事攻撃をするな」等の暫定措置命令を出している。だが、イスラエルはこうした命令を無視し続けている。

当ブログ2024.1.30「国際司法裁判所の「対イスラエル」命令に反する日本など」
同2024.2.3「篠田英朗氏の「イスラエル問題」論説は秀逸」


 こうした不正義を前にして、日本政府はイスラエルに対し制裁を課すなど厳しい措置を採るのではなく、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対する拠出金の停止に踏み切った〔*「昨年10/7のハマス等によるイスラエル襲撃にUNRWAの職員数人が加わった」とのイスラエル側のリークに基づく。だが、イスラエル側から確たる証拠は示されていない。また、たとえ数人が襲撃に関係したとしても、UNRWA全体の責任ではないはず〕。

 このような天と地がひっくり返ったような「UNRWAいじめ」は、「米国などG7諸国との同調を意識した堕落外交」と言わざるを得ない。

 日本政府は本来、国連やICJさらには国際刑事裁判所(ICC)など国際立憲主義を前提とする国際機構を尊重する立場のはずだ。だから当然、ICJの暫定措置命令を無視・冒涜するイスラエルに対し、厳しい態度・措置を採るべきなのだ。ところが、どうだ。日本が実際に採ったのは「イスラエルを擁護し、抱きしめる」行為だった。

当ブログ2024.3.31「日本の中東外交 「いやな感じ」と不合理」

 日本政府は10年ほど(?)前までは、米国が強固にイスラエル側に立つ中で、イスラエル側に偏ることなくバランス外交を心がけてきたように思う。

 だが近年、徐々にイスラエル擁護の側に移行しつつあるように思う。もちろん、国連の決議などでは「平和的に解決を」とか「停戦を求める」などと態度表明するが、イスラエルを批判するようなことは皆無だ〔*ただし、ヨルダン川西岸地区での「占領地への入植活動」に対しては、一応は「国際法違反だ」とは言う。だが、だからと言って制裁を発動したりするわけでもない〕。

 私は、こうした日本政府の「イスラエル側への移行」の背景には、やはり「日米同盟の深化」が大きくある、と思っている。外交・安全保障の面で「米国への抱きつき」「対米一本足打法」の基本姿勢を近年より強めているからこそ、「米国の最大のお友だち」たるイスラエルを擁護する、又は少なくとも批判しないよう、心がけているではないか。

 こうした日本政府の姿勢の危うさについては、これまで何度も指摘してきた。

当ブログ2024.7.11「日米比軍事連携の危うさ」
同2024.6.2「そろりと「米国離れ」を進め、日本の独自外交を」
同2024.5.1「日米軍事「一体化」とイスラエル擁護」


 安全保障上の危うさだけでなく、外交上の中長期的な影響も踏まえるなら、日本政府の現在の姿勢は非合理であり、国民益を大きく損なっている、と言わざるを得ない。

 こうした多角的な面を踏まえるなら、イスラエル製品の輸出入を制限するなど制裁措置に踏み切ってしかるべき時に、冒頭の転載記事で紹介した「攻撃型ドローンなどイスラエル製兵器」を日本が「これから」輸入するなど、あってはならないことだ。

 引用記事の中で平山さんも言っているように、「イスラエル製の兵器はパレスチナ人に対する人体実験・虐殺によって性能が担保されている」〔*イスラエルの多くの軍事企業がセールスのために同趣旨のことをアピールしている〕のだから。

 武器取引反対ネットワーク(NAJAT)・「ジェノサイドに抗する防衛大学校卒業生の会」・「BDS Japan Bulletin」は、イスラエル製攻撃型ドローンの輸入に反対する署名活動も展開している。以下。

change.org「防衛省と日本企業4社はイスラエルの“死の商人”から攻撃型ドローンを買うな!」
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