↑ 東京・池袋駅前で、多くの人が「パレスチナ人を殺すな」と声を上げてデモ行進した。ハニンさんやアイーダさんらも参加。(2024年4月21日)
社会民主党の機関紙「社会新報」2024.5.9号〔憲法特集〕に寄稿した拙稿「ガザ・ジェノサイド 抗議する人々の叫び」を、編集部の許可を得て以下に転載する。今回は署名記事。
過去の無署名記事や写真〔*当ブログでも紹介したもの〕と重複する部分もあるが、今回の記事は「まとめ記事」的な構成を心がけたので、ご理解いただきたい。
「社会新報」2024.5.9号「ガザ・ジェノサイド 抗議する人々の叫び──憲法の精神に反する日本政府──」
文・写真=ルポライター・星徹
イスラエルは、昨年10月7日のイスラム組織ハマスなど武装勢力からの襲撃を受け、「ハマスをせん滅する」「人質を奪還する」などと宣言し、これまでガザ地区内で無差別に近い形でパレスチナ人を虐殺し続けている。
同10月以降のガザ地区内の遺体確認死亡者数は3万4000人を超え(4月19日、ガザ地区保健当局発表)、うち約7割が女性や子どもだという。
◇
イスラエルによる集団懲罰は軍事攻撃にとどまらず、ガザ地区内の人々を意図的に飢餓状態に陥れたり、最低限の医療さえ受けられない状況をつくり出している。
ジェノサイドを放置する〝先進国〟
こうした状況下でも、米政府はイスラエルに対し、「やり過ぎだ」などと苦言を呈する一方で、気前よく武器・弾薬や資金の援助を続けている。また、国連安保理での「人道的停戦」を含む決議案に拒否権を行使し続けている。
日本は国連での決議では米国と一線を画するものの、他の場面ではG7(日本の他、米・英・仏・独・伊・カナダ)と歩調を合わせているようだ。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の一部職員が10月7日の襲撃に加わった疑いを受け、日本政府は他のG7諸国と共にUNRWAへの資金拠出を一時停止した。国際司法裁判所(ICJ)によるイスラエルへの暫定措置命令に反する非人道的行為だ。
G7は、ウクライナに軍事侵略するロシアを厳しく批判する一方で、イスラエルを基本的に擁護している。こうした姿勢に対し、「二重基準だ」と厳しく批判する声が世界中で湧き起っている。
不正義に対し市民連帯
このような状況下で、イスラエルだけでなくG7など日米欧諸国に対する抗議行動が世界中で繰り広げられている。日本国内でも、各所で頻繁に行なわれている。
昨年12月10日に国会議事堂正門前で行なわれた抗議集会で、千葉大学教授の栗田禎子さん(中東近現代史)は次のように語った。
「ガザ地区で起きていることは、民間人に対する無差別攻撃であり、ジェノサイド(集団殺害)だ。『現代のホロコースト』と言ってもいい。これは米国の戦争のやり方(と同じ)だ。湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争を振り返れば、いずれも欧米諸国の安全を脅かした相手を『テロリスト』とか『ならず者国家』とレッテルを貼り、『テロに対する自衛だから国際人道法を守る必要はない』という〝論理〟で(軍事攻撃を)強行する。(敵を)どこまでも追いつめ、民間人も無差別に殺害する」
同じ集会で、パレスチナ人と日本人の血をひくタティアナさんは、「私たちが目撃しているガザでの出来事は民族浄化であり、大量虐殺だ。これはナチ・ドイツがユダヤ人に行なったことと変わりがない。ホロコーストがあったからといって、『もう一つのホロコースト』を行なってもいい、とはならないはずだ」と訴えた。
↑ タティアナさん(中央)は、イスラエルによるジェノサイドを徹底批判した。(国会前、2023年12月10日)
ガザ地区出身のハニンさんは、昨年11月12日に東京・渋谷ハチ公前広場で行なわれた抗議集会で、「イスラエルが行なっているのは戦争ではなくジェノサイドだ。基本的な人権すらない人々の苦しみから目を背けてはならない」と力強く訴えた。
↑ ハニンさんは、パレスチナの窮状を必死に訴えた。(東京・渋谷、2023年11月12日)
私たち皆が「パレスチナ人」
同地区出身のアイーダさんは、今年3月2日にJR新宿駅南口前で行なわれた抗議集会で、絶望と怒りの思いを吐き出した後、「(応援してくれる人を含めて)私たち皆が『パレスチナ人』だ。これからも『パレスチナ人』は増え続ける」と希望を込めて語った。
↑アイーダさん(中央)は、絶望と怒りとともに希望の言葉も口にした。(東京・新宿、2024年3月2日)
↑ JR新宿駅南口前で多くの人が「虐殺をやめろ」と声を上げた。(2024年3月2日)
同じ集会で、ユダヤ系英国人のドミニクさんは固い面持ちで「『苦しみ』についてよく理解している(はず)のユダヤ人は、その思いを抑圧に反対するために生かすべきで、苦しみを繰り返すために使うべきでない。ユダヤ人こそが結集して『私たちの名を利用するな』と抗議しなければならない」と訴えた。
↑ ユダヤ系英国人のドミニクさん(右)は、「ユダヤ人の名を利用するな」と訴えた。(東京・新宿、2024年3月2日)
日本政府は今、憲法前文がうたう「全世界の国民が(略)平和のうちに生存する権利」に背を向け、「先進」欧米諸国の不正義に付き従う道を進みつつある。
だが、日本こそが憲法の下で率先し、国際的な正義を実現する道を追求すべきではないか。
社会民主党の機関紙「社会新報」2024.5.9号〔憲法特集〕に寄稿した拙稿「ガザ・ジェノサイド 抗議する人々の叫び」を、編集部の許可を得て以下に転載する。今回は署名記事。
過去の無署名記事や写真〔*当ブログでも紹介したもの〕と重複する部分もあるが、今回の記事は「まとめ記事」的な構成を心がけたので、ご理解いただきたい。
「社会新報」2024.5.9号「ガザ・ジェノサイド 抗議する人々の叫び──憲法の精神に反する日本政府──」
文・写真=ルポライター・星徹
イスラエルは、昨年10月7日のイスラム組織ハマスなど武装勢力からの襲撃を受け、「ハマスをせん滅する」「人質を奪還する」などと宣言し、これまでガザ地区内で無差別に近い形でパレスチナ人を虐殺し続けている。
同10月以降のガザ地区内の遺体確認死亡者数は3万4000人を超え(4月19日、ガザ地区保健当局発表)、うち約7割が女性や子どもだという。
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イスラエルによる集団懲罰は軍事攻撃にとどまらず、ガザ地区内の人々を意図的に飢餓状態に陥れたり、最低限の医療さえ受けられない状況をつくり出している。
ジェノサイドを放置する〝先進国〟
こうした状況下でも、米政府はイスラエルに対し、「やり過ぎだ」などと苦言を呈する一方で、気前よく武器・弾薬や資金の援助を続けている。また、国連安保理での「人道的停戦」を含む決議案に拒否権を行使し続けている。
日本は国連での決議では米国と一線を画するものの、他の場面ではG7(日本の他、米・英・仏・独・伊・カナダ)と歩調を合わせているようだ。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の一部職員が10月7日の襲撃に加わった疑いを受け、日本政府は他のG7諸国と共にUNRWAへの資金拠出を一時停止した。国際司法裁判所(ICJ)によるイスラエルへの暫定措置命令に反する非人道的行為だ。
G7は、ウクライナに軍事侵略するロシアを厳しく批判する一方で、イスラエルを基本的に擁護している。こうした姿勢に対し、「二重基準だ」と厳しく批判する声が世界中で湧き起っている。
不正義に対し市民連帯
このような状況下で、イスラエルだけでなくG7など日米欧諸国に対する抗議行動が世界中で繰り広げられている。日本国内でも、各所で頻繁に行なわれている。
昨年12月10日に国会議事堂正門前で行なわれた抗議集会で、千葉大学教授の栗田禎子さん(中東近現代史)は次のように語った。
「ガザ地区で起きていることは、民間人に対する無差別攻撃であり、ジェノサイド(集団殺害)だ。『現代のホロコースト』と言ってもいい。これは米国の戦争のやり方(と同じ)だ。湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争を振り返れば、いずれも欧米諸国の安全を脅かした相手を『テロリスト』とか『ならず者国家』とレッテルを貼り、『テロに対する自衛だから国際人道法を守る必要はない』という〝論理〟で(軍事攻撃を)強行する。(敵を)どこまでも追いつめ、民間人も無差別に殺害する」
同じ集会で、パレスチナ人と日本人の血をひくタティアナさんは、「私たちが目撃しているガザでの出来事は民族浄化であり、大量虐殺だ。これはナチ・ドイツがユダヤ人に行なったことと変わりがない。ホロコーストがあったからといって、『もう一つのホロコースト』を行なってもいい、とはならないはずだ」と訴えた。
↑ タティアナさん(中央)は、イスラエルによるジェノサイドを徹底批判した。(国会前、2023年12月10日)
ガザ地区出身のハニンさんは、昨年11月12日に東京・渋谷ハチ公前広場で行なわれた抗議集会で、「イスラエルが行なっているのは戦争ではなくジェノサイドだ。基本的な人権すらない人々の苦しみから目を背けてはならない」と力強く訴えた。
↑ ハニンさんは、パレスチナの窮状を必死に訴えた。(東京・渋谷、2023年11月12日)
私たち皆が「パレスチナ人」
同地区出身のアイーダさんは、今年3月2日にJR新宿駅南口前で行なわれた抗議集会で、絶望と怒りの思いを吐き出した後、「(応援してくれる人を含めて)私たち皆が『パレスチナ人』だ。これからも『パレスチナ人』は増え続ける」と希望を込めて語った。
↑アイーダさん(中央)は、絶望と怒りとともに希望の言葉も口にした。(東京・新宿、2024年3月2日)
↑ JR新宿駅南口前で多くの人が「虐殺をやめろ」と声を上げた。(2024年3月2日)
同じ集会で、ユダヤ系英国人のドミニクさんは固い面持ちで「『苦しみ』についてよく理解している(はず)のユダヤ人は、その思いを抑圧に反対するために生かすべきで、苦しみを繰り返すために使うべきでない。ユダヤ人こそが結集して『私たちの名を利用するな』と抗議しなければならない」と訴えた。
↑ ユダヤ系英国人のドミニクさん(右)は、「ユダヤ人の名を利用するな」と訴えた。(東京・新宿、2024年3月2日)
日本政府は今、憲法前文がうたう「全世界の国民が(略)平和のうちに生存する権利」に背を向け、「先進」欧米諸国の不正義に付き従う道を進みつつある。
だが、日本こそが憲法の下で率先し、国際的な正義を実現する道を追求すべきではないか。