読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

桐野夏生著「女神記」 

2009-06-13 | 桐野夏生
日本の神話「古事記」のイザナミ、イザナキを基にした
著者の想像力によって編み出された新しい神話。
遥か南の海蛇の島で大巫女を務める家系に、二人の姉妹が生また。
仲良く育てられたが、姉・カミクゥは生まれながらに大巫女を継ぐことが運命づけられていたが、妹・ナミマには別の運命があった。
ナミマが16歳になった年、祖母で大巫女のミクラが亡くなり、葬儀の祭祀は掟に従い姉のカミクゥが司った。
しかしその晩ナミマには怖ろしい運命が告げられた為、以前から好きあっていた男、海亀家のマヒトと小船で島を抜け出す。
海上を幾日も彷徨いヤマトを目指すが海上で産気付き「夜宵」という娘を出産したが、何故かマヒトに殺される。
死んで後、地底で目覚めた地下神殿でナミマの前に現れたのは、1日に千人の死者を選ぶ、黄泉の国の女神イザナミだった。・・・
いつもながら著者の描く男は思慮が足りなくて情けない描き方に比べ女は強く冷徹。
何故ナマミが殺されたかその後どうなったかがミステリーとなって読み進めた。
稗田阿礼は女だったの説が面白い。
南の島の風景描写、今も残るというバリ島の風葬の習慣などを連想しながら、
陰と陽の対比、芳醇な愛香りと死んで腐敗した体の発する死臭すら臭って来るような迫力の文章の
『人間と神の対立を交えて描く、愛と裏切りのスペクタクル』を楽しめました。
女でありながら神でもあるイザナミの苦しみ、人間であるナミマやマヒトの嫉妬と欲望。
この世との境、黄泉比良坂をいくたびも往還しながら男神と女神の壮絶な争い・・・陰と陽、
二つに引き裂かれた運命は、ふたたび巡り逢うことが出来るのか?
これは魂と肉体の古代の死生観をもとにこれは神話に模した男と女の話だ。

2008年11月角川書店刊

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 性海寺の紫陽花 | トップ | 柴田 よしき著「神の狩人 203... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

桐野夏生」カテゴリの最新記事