読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

桐野夏生著「日 没」

2022-03-01 | 桐野夏生
ある日突然、エンタメ女性小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、千葉と茨城の県境の断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。読者から寄せられた著作本へのクレームにより「ブンリン」と呼ばれる療養所で、風俗を乱す小説執筆をやめるように「療養」を促される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いが始まった。・・・・解説によるとラスト15行は雑誌連載時の校了直前に追加したとあるので期待し思っていた結末とは真逆になってしまっているが言論の自由とは何なのか。コンプライアンスがとかSNSでの炎上とか自由が狭まってきている世の中での、作家たちの叫びとも思える物語。統制される恐怖、独裁国家の恐怖、空腹の恐怖、逃げ出せない恐怖などを考えさせられる小説でした。
「その狙いは、政府の言うことを聞く愚民を大量生産することにあるのでしょう」(P185)
2020年9月岩波書店刊


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 散歩。木蓮蕾 | トップ | 黒木亮著「カラ売り屋、日本... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

桐野夏生」カテゴリの最新記事