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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

荻原浩著「千年樹」

2009-09-21 | 荻原浩
主人公は楠の大木。
関東地方の小さな町を見下ろす丘の上に立っており、今は無人の神社だが古くは日方神社と呼ばれた側の樹齢千年の楠の大樹「ことりの木」と呼ばれている。
木は千年もの長い間生き続けすべてを見ていた。
人間達の生と死のドラマが、時代を超えて交錯する8話からなる連作短編集。
1篇の中に「過去」と「現在」を並行して二つの時代の話が交互に入る筋立てで、
その二つの時代の話が絶妙にリンクしあって千年樹をめぐる人々の話が綴られていく。
それぞれをつなぐ鍵になっているのは、神社付属の幼稚園を卒園した子どもたちの「その後」。
楠の木陰で遊び、根元にタイムカプセルを埋めた幼稚園時代。
その後、子どもたちはどのような人生を歩んでいったのか。
平安時代、謀反にあって山中に打ち捨てられた国司の一家。
1970年代ごろ、級友にいじめられて自殺を考える中学生。
空襲を命からがら逃げ延びた小学生。
暴虐、憎しみ、憧れ、諦め・・・多種多様な人間の感情が木の下でむき出しになりながらも静かに時間は過ぎて行く。
時を経て時代は変わるけれど同じような事件が何度となく繰り返されることは、時代が変ろうと人間の欲望の浅はかさは変らないことが示される。
人間たちの思いが、千年樹を介して交錯する。
過去と現在、その奇妙な符合を知っているのは千年樹のみで当人たちは知る由もない。
樹は、やがて人間の愚行をさんざん目撃したあげく伐採というきびしい運命に遭遇するが、しかし木の命は種子の形でまたどこかに運ばれて・・・。
飢饉の間引きと子連れ再婚を扱った「郭公の巣」はホラーぽい終り方で面白かった。
2007年3月 集英社刊

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