警察推理短編小説5つ。群馬県警察本部刑事部捜査第一課葛(かつら)警部。余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。『彼らは葛をよい上司だとは思っていないが、葛の捜査能力を疑う者は、一人もいない。』警部の鮮やかな思考と推理で事件を捜査報告や資料から細かな不明点や矛盾を丁寧に粘り強く紐解き事件解決につなげる。スノボでの遭難?頸動脈を刺され失血死した男性の遺体があった。犯人は一緒に遭難していた男とほぼ特定できるが、凶器が見つからない犯人は何を使って刺殺したのか?・・・「崖の下」、強盗致傷事件の容疑者の深夜の交差点での交通事故、複数の証言が不自然に一致・・・「ねむけ」。バラバラ殺人死体遺棄、不審な遺体・・・「命の恩」、住宅街で起きた可燃物ゴミへの連続放火、読めない動機・・・「可燃物」、郊外のファミリーレストラン立てこもり事件が発生、かみ合わない証言・・・「本物か」。とにかく情報集めて取捨選択。意味のなさそうな雑多な情報が、真実に近づくための鍵に、淡々と謎を解く予想を裏切る展開で短編ながらスリリングでとても面白かった。
2023年11月文藝春秋社刊

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