読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

荻上直子著「モリオ」

2010-09-29 | あ行
映画「めがね」「かもめ食堂」の監督で知られる著者の表題作「モリオ」と「エウとシャチョウ」の中篇2つのはじめての小説集 。
単調な会社生活を無目的に送る青年モリオは、母の形見の足踏みミシンを前に思い出していた。
子供のころミシンの下に隠れるのが好きだったこと、ミシンを踏む母が大好きだったこと、そして姉のために母が作った花柄のスカートを穿きたかったことを。
新築の為に取り壊しとなった実家からミシンを貰いうけ修理して動かしてみることそしてある日、モリオは自分が着たかった花柄のスカートを縫い始める。
ミシンで服を縫う作業を通じて、またある少女との出会いによって、モリオは自分が生きる道を見つける。・・・「モリオ」
末期癌の猫シャチョウを飼う耳鼻科の女医ヨーコと同棲することになった「僕」エウ。
日々、シャチョウの面倒を見ているうちに、才能など何も無いと思っていた自分に、「猫と心を通わせる力」があることに気がつく。
コンプレックスに苛まれる男と女が、一匹の猫を看取りながら、心の拠り所を得て再生する姿を描いた・・・「エウとシャチョウ」。
どちらの物語にも、昭和初期の空気が流れる路地裏の「ひだり布地屋」のおばさんと黒猫「三郎」が登場しているのがだがその存在が二作品をつなぎ、同じ世界観を作り出している上手い構成。
監督の映画のようなゆったりとした空気が流れ「閉じこもっていた殻を破り、周囲の人たちとの関わりを深めていく、自らの存在を認めること、そして自分とは異なる存在を認めること」の
世界観が読み取れます。「エウとシャチョウ」は猫好きにはうれしい小説でしょう。
2010年8月光文社刊

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