2016年日本空想特撮映画。監督・脚本鹿野秀明。特撮監督樋口真嗣。ゴジラ映画第29作目。東京羽田沖で大量の水蒸気が噴出、同時に海底を通るアクアラインでもトンネル崩落事故が発生。政府は、原因を海底火山などの発生と見て対応を進める。矢口蘭堂内閣官房副長官(長谷川博己)は、ネット上の一般人による目撃報告や配信動画などから、いち早く事故の背景にある巨大生物の存在を示唆するが、周囲からは一笑に付される。しかし間もなく巨大生物の尻尾部分がテレビ報道されたことで、政府は認識を改める。巨大生物は多摩川河口から大田区内の呑川を這いずるように遡上し、蒲田で上陸、北進を始める。政府による対処方針は駆除と決まり、自衛隊は害獣駆除を目的とした出動が要請される。ゴジラと名付けられた怪物は進化・成長し、鎌倉に再上陸。重火器・戦車砲・ロケット弾、などの武力攻撃はことごとくゴジラに跳ね返され、やがて省庁が集中する霞が関近くまで到達する。国際世論は核兵器によるせん滅に傾くが、それだけは容認できないと政治家たちは声を上げ、矢口たちのアイデアに期待が集まる。多くの政治家・高級官僚が、「何をすべきか」ではなく、してはならない理由を口にする。早口なテンポで交わされる言葉の数々は現実的かつ具体的で、一刻の猶予もならない事態の緊迫感が感じられた。ゴジラに翻弄される政府中枢の人々の人間模様が描かれる。最高権力者である総理大臣の権限が強大ではない日本、自衛隊の武力行使には膨大な会議と手続きが必要な上、各省庁の思惑が交錯しなかなか一本化しない。その上優柔不断な総理代行の態度にアメリカをはじめ列強が口出しを始める。まるで、仮想敵国の武力侵略へのシミレーションを見ているようだ。政治家・官僚・学者・自衛隊・ 在日米軍など危機管理に関する国家を動かす裏側を見た感じ。仕事への誇りとか国家への忠誠とか家族への思いなど個人の苦悩や感情的な動きといった「ドラマ」を一切描かない一風変わったドラマだった。
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