goo blog サービス終了のお知らせ 

読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

須田狗一著「神の手廻しオルガン」

2019-06-30 | さ行

島田荘司選第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。正義の在り方と家族愛の問題を問うた社会派ミステリー。

日本とポーランドで起きた2つの殺人事件。一見、無関係に思える二つの事件だが、日本での殺人事件の陰には、ポーランド人の姿が見え隠れする

ナチスの時代ポーランド人強制収容所で書かれた囚人の日記に隠された意外な真実。主人公の吉村学はIT企業のエンジニアを定年退職し趣味である推理小説の翻訳に日頃の退屈さを紛らわせている男。その吉村夫妻がポーランド旅行時に事件に巻き込まれて知り合った女性アンカ・ビドラ。ヨーロッパを舞台にポーランド人との密な交際によって事件を描きながらの謎解きストーリー。

翻訳文や手紙といった形で語られる。アンカの祖父がナチス・ドイツによる強制収用所で記したという日記がこの二つの事件を結ぶ鍵。

1972年プラハで起きた事件が、ポーランド人も強制収容所に入れられた過去など、今なおナチス協力者やナチ残党狩りの現実が「神の手廻しオルガン」の意味が明らかになる濃厚なミステリーで文芸作品のような読み応えがある作品でした。

20175月光文社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

酒本歩著「幻の恋人」

2019-06-12 | さ行

11回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作(発表時・原題は「さよならをもう一度」)僕にはモテ期があった。学生時代から恋愛下手と言われた僕の前に、魅力的な女性が現れて恋人になってくれた。それも、三人もだ。その頃、僕は八年勤めた会社の倒産を機に、ドッグシッターを始めていた。そんな真木島風太に一通の喪中はがき届く以前交際していた美咲の訃報だった。まだ32歳なのにと驚く風太。ほかの別れた恋人、蘭、エミリのことも気になり出しメールや電話で連絡を取ろうとするが、消息がつかめない。彼女たちの友人、住んでいた家、通っていた学校など思い出しながら訪ね歩くが三人はまるで存在しなかったかのように、一切の痕跡が消えてしまっていた。姉御肌の友人南原雪枝、病院SE勤務広田裕一郎とともに謎を追うと果たして3人共ほぼ同時期に揃って死亡していた。前半は恋愛ドラマ風に後半は前半の伏線をミステリー風に、辿り着いた驚愕の真相は正に21世紀だからこその謎でした。20193月光文社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

重松清著「どんまい」

2019-06-01 | さ行

重松さん流の家族愛・友情・絆など、丹念に優しく描かれた人間ドラマ。草野球チーム「ちぐさ台カープ」を通して交錯する「ふつうの人々」の人生を鮮やかに描いた感動物語。草野球チームに参加することにした夫に「捨てられた」ばかりの三上洋子と娘の香織離婚したての母娘。 “ちぐさ台団地の星”と呼ばれたかつての甲子園球児・加藤将大、チームの創立者で謎多き老人通称・カントク、親の介護で広島と東京を往復しながら野球が心の支えになっているキャプテン・田村。いじめで野球部を辞めた中学生の沢松、野球は上手いものの性格に難がある不動産屋の息子ヨシヒコなど、それぞれ現実に翻弄されながらも必死に生きている。不倫されての離婚、親の離婚、単身赴任、親の介護、スポーツの挫折、家族の死、決してきれいごとではなく、悪戦苦闘する日々の少しの希望に草野球を絡ませる。母子の二人が一歩進むために、野球を通していままでとは違う何かを求めるもののど素人が簡単に手にできるものはない。起死回生の大逆転なんてそうそうあるものではない、チームの仲間もそんなに熱くもない。べたべたでもない。でも、解散となると涙が出るような仲間。いまは家族以外の中々チームなんてものが見つからない。仲間と呼べる者がいるだろうか。そんな草野球チーム人間の姿の描き方がこころに染み入る。

「後悔する勇気もなかったこと、歳とっておとなになってから絶対後悔するよ」「大人はみんな後悔しながら生きてんの!後悔することがたくさんあって、もうどうにもならないこといっぱいあって、でも、人生やめるわけにはいかないから必死に生きてんの!」(P425

201810月講談社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

仙川環著「鬼 嵐」

2019-04-23 | さ行

医療ミステリー。女医の及川夏未は、東京の大学病院での研究者生活から結婚生活からも挫折し、北関東の故郷・姫野町に戻って来た。過疎化が進み、外国人労働者の増加が目立つこの町では、町おこしの目玉にと、地元産の食肉を商品化しようとする動きが進んでいた。そんな中、謎の感染死が連続して起こる。感染症医で地元・姫野町の父のクリニックを手伝っていた及川夏未は、大学病院時代の恩師の要請を受け、感染症の調査チームに入る。感染源は何かを探り始める。やがて感染症は大手製薬会社・ドラゴンジャパンの協力の下、感染源が特定され、拡散を抑えられるとみられていたが、独自に調査を始めた夏未を妨害する出来事が次々に起こって・・・

関係者の不審な死により、感染症拡大の真実が暴き出されていく。中国系アメリカ人が出て来た段階で怪しく感じたが今はまだ豚コレラや鳥インフルなど動物が中心だが突然変異で人体にも影響する可能性もあり興味深かった。最後に事件の顛末を一気に語らせる仕掛けは他にやり方がなかったのか残念。

20189月小学館刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

周木律著「死者の雨 モヘンジョダロの墓標」

2019-04-05 | さ行

一度見たり読んだりしたことは永久に忘れない、完全記憶の持ち主、住所不定・異能の数学者一石豊が主役のミステリーシリーズの第二弾。フリーのフォトグラファーをしている森園アリスは、人工知能の権威であるヒュウガ博士のポートレイト撮影のため、パキスタンを訪れる。だが、撮るはずの相手は、インダス文明のモヘンジョダロ遺跡の研究室から屋敷へ帰ってすぐに急死していた。調査を進めるうちに、同時期に世界各地で四人の博士の怪死体が発見された事実が判明、アリスとヒュウガの助手だったコウ博士とともに各国を周り、ヒュウガ博士の死と不可解な連続死の関係、そして、博士が遺した「アトラスの謎」の真相を探ることに。京都で同じ疑問を持つ天才数学者、一石豊と会いシンガポール・イタリア・インドに飛び、人類最大の秘密を探す旅に・・・。

あり得ない展開やご都合な成り行きに疑問が起きたが、同時多発的殺人事件は消えたアトランティス大陸・滅亡の秘密の解明の謎解きと意外な組織の関連が明らかにするための展開だと納得。

一石とアリスの会話を通じて歴史の奥深さに興味を持った。

20189月新潮社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

笹本稜平著「指揮権発動」

2019-03-22 | さ行

ODAの仕事で滞在するコンサルタント会社の社員三宅他2人の日本人が殺された。東京地方検察庁特別捜査部検事の芦名誠一は、アフガニスタンで起きたこの邦人殺害事件の背後に日本の政権与党の大物政治家が絡んでいるとの情報を元に密命得て首都カブールの現地に赴く。合わせて、捜査一課の中原と公安の沢木警部も現地入りし捜査に協力することに。カブールの地元警察はテロだというが、芦名たちは被害者を狙った殺人事件だと推察し捜査を進める。

自爆テロが頻繁に起き不安定なアフガニスタン情勢、政府に敵対するタリバーン勢力、アメリカCIAの関与までが疑われる中、日本政府を揺るがすODA(政府発援助)絡みの裏金システムの存在が浮かび上がり与党政権からの圧力も考えられて、現地に滞在するUFP通信社の記者北島や日本のマルサの協力も得て、検察に対する法務大臣よる指揮権が発動される前に真犯人を上げて真実を解明すべく奔走する。

莫大なODA予算を巡る裏金疑惑にメスを入れた壮大なミステリー小説になっているがいまだ紛争地の感がるアフガンでの捜査に展開が遅く読み進めるのにイライラしたが後半は指揮権発動との駆け引きで面白かった。

20191KADOKAWA

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

笹本稜平著「所轄魂 最終標的」

2019-02-09 | さ行

所轄刑事の父・葛城とキャリアの息子が活躍する警察小説シリーズ第5弾。城東署管内でひき逃げ事件が発生し、20代の女性が重体となる。目撃者の証言などから犯人の目星はつくが、次期国家公安委員長と目される大物政治家の三男坊と判明し、捜査がなかなか進まない状況に。捜査するにつれ他の事件も絡む中、葛木親子、所轄の面々、勝沼刑事局長などが、政治家たちの巨悪を追う。前作で贈収賄事件を追っていた城東署の強行犯捜査係長・葛木邦彦と、警察庁のキャリア組である邦彦の息子・俊史の父子。しかしあと一歩のところで黒幕の国会議員が射殺され、真相は闇に葬り去られてしまった。警察に政治家から様々な圧力がかかるなか、捜査はまたもや警察VS.政治の様相を呈してきて・・・。

中盤まで次から次へと連鎖の容疑者が出てきて中々進まない展開だったが後半犯人の海外逃亡のところから最終の黒幕が見えてくる展開で面白かった。

2018年10月徳間書店刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

柴田哲孝著「リベンジ』

2019-01-03 | さ行

前作「デッドエンド」の続編。千葉刑務所を脱獄し、亡き妻の復讐と娘・萌子の誘拐事件を解決してから三年後。笠原武大は輪島で塗師として修業の日々を送り、萌子は金沢の伯父の家に下宿しながら高校に通っていた。春の雨の夜、何者かが離れて暮らす二人を同時に襲った。笠原は不意を衝かれて囚われの身となるが、萌子は辛くもバイクで逃げ延びた。一方、警察庁警備局公安課特別捜査室〝サクラ〟に所属する田臥健吾と室井智は、父娘失踪の報を聞き、萌子誘拐事件の主犯でありながら罪を免れた日本神道連議会の板倉勘司の関与を疑って板倉もとに乗り込むが・・・。

キックボクシングをし、別居している父親とはSNSで情報をやりとりする高3の美少女。前作デッドエンドではが誘拐され、母親を殺されたが、今度は父親の行方を追って「文殊」のある福井県敦賀から京都へ、バイクに乗って父親を助けに行く。看護婦の塚間有美子も笠原武大を助けに京都へ。残虐な殺人シーンや破天荒で荒唐無稽な筋書きに国の原発政策に絡む利権や北朝鮮のプラトニウム略奪密航集団、ネット掲示板で雇われた男たちなどが絡み現実の事件や政治を散りばめそれらしく展開されるが読み物としては面白いが原発の絡むテーマは良いのでリアル感のあるドラマならもっといいのにと思う。

201810月双葉社刊

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雫井侑介著「引き抜き屋(2)鹿子小穂の帰還」

2018-11-16 | さ行

引き抜き屋(ヘッドハンター)へ転職した鹿子小穂の前作からの読編。ヘッドハンターならではの悩みを描いた「引き抜き屋の苦悩」、仕事を断られたことへの個人的恨みからのトラブルを描いた「引き抜き屋の報復」転職から一年後鹿子小穂が、父が創業したアウトドア用品メーカーの経営危機にヘッドハンターした人間を連れて帰還を果す迄を描いた表題作。各業界の経営者との交流を深め、ヘッドハンターとしての実績を積んでいく小穂の下に、父の会社が経営危機に陥っているとの報せが届く。父との確執を乗り越え、ヘッドハンターとして小穂が打った、父の会社を救う起死回生の一手羽田とは・・・・

企業の要請に応じて優秀な人材を見つけてマッチングさせるというヘッドハンティングの仕事は、中々理解しがたかったが、主人公の小穂が成長する様子は読んでいて楽しかったので一気読み出来た。感動の一作でした。

 

20183PHP研究所刊 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雫井侑介著「引き抜き屋(1)鹿子小穂の冒険」

2018-10-28 | さ行

女性の前向きな生き方を、引き抜き屋(ヘッドハンター)の実情を描きながら描いた経済&人間ドラマ。父が創業したアウトドア用品メーカーに勤める鹿子小穂(かのこ・さほ)は、創業者一族ということもあり、若くして本部長、取締役となった。しかし父がヘッドハンターを介して招聘した大槻と意見が合わず、取締役会での評決を機に、会社を追い出されてしまう。そんな小穂を拾ったのが、奇しくもヘッドハンティング会社の経営者の並木で、並木のもとで新米ヘッドハンターとして新たな一歩を踏み出した。小穂は、プロ経営者らに接触し、彼らに次の就職先を斡旋するという仕事のなかで、経営とは、仕事とは何か、そして人情の機微を学んでいく。個性豊かな登場人物たちが、かけひき、裏切り、騙し合い・・・

予測不能の、そして感涙の人間ドラマに著者の新たな側面を見た感じ。ヘッドハンターは会社を救えるのか、小穂の回りがいい人ばかりなのは気になったが続編が楽しみ。

20183PHP研究所刊

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

笹本稜平地「危機領域 所轄魂」

2018-08-14 | さ行

所轄刑事の父・葛城とキャリアの息子が活躍する警察小説シリーズ第四弾。マンションで転落死と思われる男性の死体が発見された。死亡した男は、大物政治家が絡む贈収賄事件の重要参考人であるという。さらには政治家の公設第一秘書、私設秘書も変死。自殺として処理するように圧力がかかる中、葛木が極秘裏に捜査を開始すると、とある黒幕が浮かび上がってきた・・・。

葛木父子の所轄魂が真実を炙り出すのだが、政治が真実を闇に葬ろうとするとき、葛木父子は警察の矜持を保つことができるのかが見どころ。単純な自殺事件から広がる政界や巨悪とのつながりなど、話の展開や進み方が遅くて面白いのだが読み難かった。カジノ法案に絡む政界と業界との金絡みをもっと追及してほしかった。

20176月徳間書店刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

柴田哲孝著「Dの遺言」

2018-08-05 | さ行

「Mの暗号」の続編。政府通達『十九機第二三五一号』・・・・『ダイヤモンド買い上げ実施に関する件』戦時中、軍需省の要請により立法化され、それに基づき皇室からも供出されたダイヤモンド、その量、32万カラット。戦後は日銀に保管されていたが、その内20万カラットが占領のどさくさの中に消失。GHQのアメリカ軍将校が盗み出したとも、日本の政権運用資金に使われたとも言われていた。

東大教授にして歴史作家・浅野迦羅守は、戦後の特務機関・亜細亜産業に勤めていた曽祖父たちから、消えたダイヤの在り処を示す暗号文の遺言書を託された。しかし、捜索を開始するや何者かからの脅迫を受け、やがて敵の襲撃が・・・。

前作の金塊からダイヤモンドに獲物が変わっただけで、目新しさが無いうえに「こじ付け気味」の暗号解読。主役4人の生活感が描かれていないので最後まで感情移入出来ずに読了。暗号を解いて昔に埋められた財宝を探り当てると言う展開はもう無理があると思う。

2017年11月祥伝社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

柴田哲孝著「赤 猫」

2018-06-01 | さ行

「黄昏の光と影」「砂丘の蛙」の片倉刑事の続編。定年間近の東京石神井警察署の刑事・片倉康孝は、休暇を利用して新潟県の小出と福島の会津若松を結ぶ秘境のJRローカル線「只見線」に乗りに来た。この旅は警察人生の中で気になっていた迷宮入りの、20年前に練馬で起きた放火殺人事件の現場から消えた謎の女「鮎子」の足跡を探す旅でもあった。現地で話を聞くと、練馬の事件のさらに40年前、羽賀鮎子という女性が火事で亡くなっていたことが分かった。二つの火事、二人の鮎子につながりはあるのか。疑問に思った片倉は後輩刑事の柳井淳らと共に、ふたたびこの事件を追うことにした。事件の真相に迫るうちに謎が謎呼び次々に起きる謎。次々に関係者が増え複雑化され誰がどのように誰を恨んで殺人が起きたという肝心な部分が意味不明。封建的な社会風土と非道な男達の元で不遇を強いられた女性の過酷な人生が原因だというのはわかるが60年もの前の事件を絡めて消化不良のまま終了。離婚をした片倉刑事と元妻の関係が一番面白かった。

2018年2月光文社刊

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

笹本稜平著「弧軍 越境捜査」

2018-05-24 | さ行

『越境捜査』シリーズ第6弾。今回も警視庁特命捜査係の鷺沼と神奈川県警の一匹狼・宮野が難事件に挑む。六年前、東京都大田区で老人が殺された。億単位の金を遺していたらしいが、見当たらない。その後、連絡の取れない老人の一人娘恭子が、警視庁の首席監察官村田と結婚していたことが判明。すると、監察から鷺沼らに呼び出しがかかり、捜査に関して探りを入れられる。権力側のキナ臭い動きに鷺沼らは・・・

終盤は鷺沼をはじめとする三好・井上・山中彩香・福富らタスクフォースの面々が土俵際まで追い詰められる展開でハラハラ。国税のマルサや公安の協力者なども絡み2人のテンポのいい会話が面白かった。

20179月双葉社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

櫻田智也著「サーチライトと誘蛾灯」

2018-05-21 | さ行

10回ミステリーズ!新人賞受賞作(表題作)他4編のミステリ―連作。昆虫マニアで探偵役の魞沢泉の推理が難題を解決する。

ホームレスを強制退去した公園の治安のため、ボランティアで『見回り隊』が結成され、ある夜、見回りをしていた吉森は、公園に居座る奇妙な客たちを追い出す。ところが翌朝、そのうちのひとりが死体で発見される。事件を追う吉森に、公園で出会った昆虫採集に勤しむとぼけた青年魞沢(えりさわ)が、真相を解き明かす。・・・表題作。観光地化に失敗し訪問客が減少した高原での密かな計画が・・・「ホバリング・バタフライ」。街の片隅のバー「ナナフシ」での偶然出会い酒を酌み交わした一人が殺された・・・「ナナフシの夜」。火事の引金となった悲劇とは・・・「火事と標本」。他に「アドベンドの繭」

昆虫を追いかけてどこにでも現れる30代の昆虫マニアのオトボケ青年、魞沢泉の遭遇する事件は、軽やかな推理で鮮やかに反転する軽いタッチの作風。もう少し主人公の内面や生活感の記述が欲しかった。

201711月東京創元社刊

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする