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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

西本 秋著「向日葵は見ていた 」

2010-09-14 | な行
15年前の夏休み最終日。あるひまわり荘といわれた下宿の住人が一夜にして姿を消した。
後には呪われた館と、咲誇るひまわりと、ひとつの死体が残った。
少女をずっと待っていた少年と、大人になった少女の過去を巡る旅が交互に語られるミステリーで、現在と過去を盛んに行き来しながら展開されます。
過去の場面に登場するそれぞれの登場人物の個性が一つ一つの会話に上手く書き現せられいて、
村人からは田舎の呪われた館といわれていたがそこに住む他人だけど他人と言い切れない住人たちのひと夏のお話は本当の家族のようで活き活きしていて面白い。
それに比べて現在の、ヒロインの博物館に勤める加納の過去を探索するシーンが読みづらいのは、
ミステリーの性格上正体を明かさないままなのが響いているのか、
氏名、苗字、本名が巧妙に使い分けられてイライラする。
予想どおりの展開と最後のドンデン返しも、語り手に対するあの使い方は納得できなかった。
500ページを越える長編だがもっと展開を早くしたほうがダラダラ感がなくてよいのでは。
『自分で過去を構築するのって、・・・他人によって知識を刷り込まれるだけじゃない。
自分で本物を知る手立てがあるのなら、妥協せずに知りたいと。それはとても前向きなことだと。』(503P)
2010年7月双葉社刊

日曜日から疲れから来る免疫力の低下による細菌が身体に侵入された結果による高熱による
ダメージの中読んだので特に長く感じたかも知れない。
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永井するみ著「逃げる」

2010-08-09 | な行
優しい夫昌彦と愛しい娘雪那との日々に、突然襲いかかる避けていた行方不明の父との再会。
甦る育てのもらった祖母の言葉「あの男に出会ってしまったら、殺しなさい」・・・忌まわしい父との過去を、おぞましい父の存在を、家族には決して知られてはならない。
家族を捨て、憎しみを胸に秘め、死と隣り合わせの癌に侵された父親と彷徨の生活が始まった。
「どこへ行けばいいのか、いつまで逃げればいいのか…。」
妻澪の突然の家出に夫の昌彦は妻の友人冴子を訪ねて妻の居所を聞いたり警察に相談に出掛けるが手掛りが見つからない。
やがて、ある手掛りを元に居所を追求するが・・・追う夫、逃げる妻、最初は突然現れた父からの逃亡が、夫からの逃亡になりやがて
実は逃げているのは自分の過去の幼い頃の虐待体験から自らも娘に虐待をするのではないかという影に怯えて逃げているのが解る。
金もなく病人の父を抱えての逃亡の追いつめられた女の苦渋の選択も切なくてハラハラさせられる。やがて思い込みの事実の真実があきらかになり・・・、
哀しい過去を持つ主婦のあてのない逃避行サスペンス物語。
冷静に客観的に見ればチョット無理がある展開だが思いつめた人間の行動なら仕方がないか。
女性らしい著者の視点の心理サスペンスでした。

2010年3月光文社刊
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永瀬隼介著「灼夜」

2010-08-03 | な行
成績も柔道もぱっとしない中学3年の森本篤は、団地で夜の勤めの母と二人暮らし。
夏休みを目前に控え、彼は自分の境遇に嫌気がさして腐っていた。
そんなとき、江戸川近くの神社で仔犬と遊んでいた中国人の子供飛(フェイ)をつい苛めてしまう。
翌日もフェイを見つけた篤は再び鬱憤を晴らそうとするが、義姉の美少女梨華(リーホワ)という中国人の美少女に見つかり殴られる羽目に。
だがその夜、リーホワが現れ、彼が苛めた子供・フェイがいなくなったと・・・。
フェイを助けたいと柔道部の先輩尾崎とともに動き出すのだが、尾崎は以前、
ちょっと怖い裏組織に居た経歴があり、その組織は中国残留孤児が作ったものというところから、中国人裏社会と通じていた。
在日中国人の誘拐騒動に巻き込まれた中坊のアツシ。
マフィアの暗躍、不法滞在者の実態、巧妙な地下銀行。中国人裏社会の知られざる闇の部分を舞台にノンストップで話しが展開されます。
日本社会に巣くう“底知れぬ闇”を知ったとき、一晩の冒険で14歳のアツシが学んだことは・・・。
携帯読書サイトに配信された作品らしく、小節の区切りが設けられておらず読みにくかった。
話しがでっかすぎて中学生が主人公などリアル感が欠如、人が何人も死んでも新聞にも載らない事件なんて今の日本では考えられない。

2009年8月角川書店刊
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楡周平著『血戦 - ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京2 』

2010-07-30 | な行
前作の続編。今回は政権交代を賭けた衆議院選挙が舞台。
今は弁護士として事務所勤めの元大蔵官僚・有川崇は、ついに出馬を決意する。
自分を飼い殺しにした義父への「刺客」として野党最大の目玉候補として同じ選挙区で議席を奪い合う、義父と娘婿の選挙戦。
それは、母と娘の、姉と妹の、壮絶な戦いでもあった。
完璧な閨閥をつくり、権力の頂点を極める野望が絶たれた一族は、真っ二つに割れ、欲望と憎しみをぶつけ合う・・・。
崇の奥さんとその妹のお受験対立や弟の恋愛問題などのエピソードもあるが、2代続けての政権短期投げ出し後の1年間の
現実政治経済情勢を背景にしている為オリジナリティの少ない予想できる背景での展開は何処か他で読んだ印象。
政権をめぐる与野党の駆け引きの裏事情を覗き見る面白さはあるが、これも新聞や週刊誌で過去に読んだ思い。最後は比例復活当選で幕。
最初と最後の宣子の話を語り続編の下準備?
2010年3月講談社 刊
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永瀬 隼介著「越 境」

2010-07-21 | な行
元警官の菊村は今は巣鴨でバー「ソクラテス」のマスター。
一月前に求人に応募してきた中国人の女に300万円程持ち逃げられた。
女を追って女の故郷の中国のハルピンに渡るのだがそこには日本と中国の哀しい歴史が存在した。
結局女の手掛りを得ずに帰国後、中国で知り合ったガイドの劉と中国の公安警察官楊が巣鴨にやって来たのだが・・・裏社会トラブルに巻き込まれていく。
日本のやめ刑事と、中国の公安警察のタフガイが日本を舞台に大暴れ。
警察の隠し金を襲ったりのやりたい放題。痛快な、いぶし銀の犯罪の悪漢小説です。
展開は早くそれなりに納得性もあるのだがリアル感のなさとどこかで読んだようなありふれた背景とヤメ刑事菊村の性格や生活感が気薄でなじめなかった。
ハラハラドキドキもサスペンス性もなかったのは不満。

2010年03月徳間書店刊
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弐藤水流著「怨み返し」

2010-06-03 | な行
主人公は49歳のノンキャリアの祖父江忍警部補。東京文京区の住宅街の一角で発見された、右手首のない絞殺死体。
側には、チョークで描かれた奇妙な図形と数字。
これは、「次の犯行予告かもしれない」。
次々に起きる背筋が凍る猟奇性の殺人事件。被害者に共通するのが山形県の小学校の同級生と解る。
小学校時代のイジメの様子と事件の捜査状況の展開が交互に描かれ、犯人もいじめられていた人物の怨みによる犯行ではないかと推定されてストーリーが進むが、
しかし、さすがミステリー途中から予測できないスリリングな展開ですすむ。・・・そして、驚愕の結末。
「新世代警察ミステリー」とあるように陰惨な事件の真相とは対極に、裸にならないとトイレに行けない上伺や不倫・ストーカーなど女性刑事たちを含む日常がとてもコミカルに描写されていて、その軽さが気になる部分ではあるが、猟奇性や、辛酸なイジメが絡んでいる話の割りには気軽に読めた。
子供時代のあだ名が特定できずにそれが鍵になっている。
親と子の偶然のご都合的な部分もあるが子供遊びの「どこ行き」を絡めて面白いミステリーに出来上がっている。
2010年3月幻冬社刊
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永嶋 恵美 著「W―二つの夏 」

2010-04-20 | な行
20歳の大学生の「ナナミ」は、成行きから駅で出会った施設からの家出中学生二宮セリを一人暮らしの家に連れて帰ることになる。
過去に起こした事件でネンショー帰りの元ヤンキー「クニコ」は今は友人の死に責任を感じながら運送屋の助手をしている。
そして長い間合っていない友人同士の「ナナ」とメールを交わしている。
「ナナミ」と「クニコ」の生活は、紋きりのメール以外何ら繋がりのないような関係だが・・・
実はある点で繋がっており、ラストで明かされる家族関係、人間関係の絡みが巧みな仕掛けとなってミステリーを完成している。
各章のタイトルにWで始まる英語が使われWithout (なしで) Where?(どこ) Whom?(だれ) What?(何) When?(いつ)
Why?(なぜ) Who?(だれ)最終章のWith you (あなたと共に)まで読み終わってみるとなるほどの疑問詞の使い方。
はったりやごまかしのないトリックテクニックを各所に配置して、登場人物たちのどこか不安定さが巧みに描き出されていて
最後まで見届けたい意識を持たせるミステリーで面白かった。
2010年2月講談社刊
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楡 周平著『ゼフィラム ZEPHIRUM』

2010-03-03 | な行
ゼフィラムとはゼロを意味するラテン語。=この物語に登場するエタノールハイブリッド車の名前。
日本自動社工業の米営業戦略室に勤務する30歳代の女性ビジネスウーマン栗林絵里香を主人公とした経済物語。
日工が社運を賭けて発表するハイブリットカーを発表するにあたりいかにして市場にインパクトを与えて売り出すかというところから始まる。
サブプライム問題、金融危機、そしてアメリカの自動車産業の苦境などつい最近の事柄がフィクションではなく
今起きている現実の世界との同時進行を反映させたリアリティがある展開。
日本自動車工業社長・牧瀬亮三は、CO2を劇的に削減する新型車開発のために、栗林のアマゾンの原生林保護の考え方を利用した
販売戦略をもとにアマゾン産サトウキビを利用したバイオエタノールハイブリッドカーを着想する。
CO2削減に専心する牧瀬たちの苦悩と戦いを描いた、地球環境問題壮大な最新ビジネスモデル小説。
黒木亮「 排出権商人」とよく似た環境問題を中心とした時事ネタを理解するための入門書だと思えばいいがミステリー性やサスペンスを期待するとガッカリする。
『自然環境保護は・・・世界的レベルで経済活動を行なっている企業が先鞭をつけるべき』(133P)
2009年12月朝日新聞出版 刊
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中村啓著「霊眼」

2010-02-17 | な行
2009年第7回『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞受賞作。
「霊眼」とは霊を見る眼。=心眼
著者は、ヤングジャンプ他で7回の入選歴ありとか。
冒頭のツカミが凄い、オカルトぽくなる手前でサスペンス&ミステリーに引き戻し読み人の心を厭きさせないコミック的展開で最後まで読ませられた。
主人公の柳川享子は、愛する夫のマンション飛び降り自殺の現場を目撃したあと1ヶ月経つが心理的ショックを回復できずにいた。
やがて尋ねて来た刑事から大学時代の友人・真弓が失踪したことを知る。
フリーライターだった真弓は、山梨で起きた死体損壊遺棄事件に関心を示し、取材に出かけたまま行方がわからなくなったという。
真弓の行方を捜し始めた享子だったが、次々と不審な現象に遭遇する。
やがて幽霊や、前世の因縁が渦巻く怪奇の世界に足を踏み入れることに。
そして、霊的な知覚を可能にする『第三の眼』を巡るある組織の大きな企みに巻き込まれていく。
外国為替証拠金取引、レバレッジ効果、死体損壊、鳥葬、臓器売買や代理母、遺伝子操作の人体実験などを絡めて面白く纏め上げられたホラーサスペンスです。

2009年3月宝島社刊
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中野順一 著  「セカンド・サイト 」

2009-12-27 | な行
著者は1967年浜松生まれ、出版社勤務。
第20回サントリ-ミステリ-大賞受賞作。
主人公は、キャバクラ「クラレンス」のボ-イのリ-ダ-「タクト」。
店の女の子からスト-カ-被害で困っていると相談される 
店のキャバ嬢のエリカから頼まれたのは、ストカー男の撃退。
店が引けた後、エリカの自宅マンションで見張りを続けるタクトが友人のアキラと一度は追っ払ったと思った束の間、今度はエリカが殺される。
責任を感じたタクトが犯人を追うが意外な展開に・・・・
スリルサスペンス、スピード感ある展開、カルト的要素も織り込みながら
一気に読む者の心を引きつけるストーリーに続編も期待したくなる。
2003年 文藝春秋 刊
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中村弦著「ロスト・トレイン」

2009-12-20 | な行
吉祥寺の居酒屋で、心優しき鉄道ファンの平間さんは「日本のどこかに、誰も知らない廃線跡がある。
それを最初から最後までたどると、ある奇跡が起こる」とつぶやいた。
その直後に彼は失踪。牧村は彼を慕う「鉄子」の倉本菜月さんとともに、その姿を追って北へと向かう。
なつかしくなる、旅に出たくなる、大人のためのファンタジー青春小説。
『人の一生は鉄道と似ていて、ところどころに乗り換え駅がある。乗り換え駅では、よくよく注意しないと番線や列車をまちがえて、
目指しているのとは全くちがう場所につれていかれてしまう。』(288P)
自分はこれまでどれだけ間違った列車に乗ってしまったんだろう?と考えてしまった。
ある人は『違った人生もあったかもしれない』という、もうやり直しようのない日々への鎮魂だ。」  居場所を探す人間たちの物語だ。』
『「誰も知らない廃線がどこかに眠っていて、それを探す旅」なんて、なんてすごくロマンチック。』という感想も。
携帯電話流行りの昨今、駅の伝言板を使ったやりとりや、たった6文字「キリコノモリ」のメモから始まる
ネットや図書館を利用した綿密な調査の謎解き、2本の路線を駆使した追跡劇
文献調査と実地検分からしだいに幻の廃線がうかびあがってくる展開などミステリーファンも鉄道ファンもファンタジーファンも引き込んでしまう作品です。
ちょっと読み出したら、やめられず最後まで一気に読んでしまいました・・・18きップで旅することが大好きな私にとっての鉄道ファンタジー。
誰かを想うよろこび、何かを失うさみしさがよく書かれています。
2009年12 月新潮社刊
        ε=⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥⋤⋥
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永瀬 隼介 著「完 黙」

2009-11-17 | な行
住居不法侵入で身柄を拘束した女は完全黙秘を貫らぬかれて釈放。取り調べをした刑事はその俺好みのいい女の薬指のラリックリングに注目しての大胆な賭けに出た・・・表題作他
定年間近のハコ番巡査部長の警察人生最後の大勝負・・・「東京から来た男」。
断酒会で聞いた扼殺の告白、アルコール依存症のために飛ばされた元捜一エリートの雪辱は・・・「秘密捜査」。
憧れの仕事につき初めての捜査に意気込む新米女刑事への洗礼・・・「昔の男」。
警視庁の窓際警部補が離婚し別れた家族のために行った単独捜査の結末・・・「師匠」。
「所轄は本庁の犬にあらず!」捜一から飛ばされた元エリートの屈辱、苦悩の日々、警察組織の底辺で奔走する刑事たちのざわついた日常を、闘う刑事たちの感情の揺れや昂ぶりの心理を描いた、心に傷を持つ警察官の短篇集五編。
短編の為心理描写や設定に不完全で理解出来ない箇所もあったが振り込め詐欺を扱った「師匠」が面白かった。
2009年10月実業之日本社刊
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西條奈加著「はむ・はたる」

2009-11-06 | な行
変った表題の 「はむ・はたる」とは作中の注釈によるとオランダ語か?
「ファム・ファタル」=男を惑わす女、らしい。
心に傷を負った若き侍「長谷部柾」と、江戸の下町でたくましく生きる孤児たちとの交流と強い絆の柾の過去への思いを描く青春時代小説。
6編のミステリー連作集になっており「あやめ長屋の長治」「猫神さま」
「百両の壷」「子持稲荷」「花童」「はむ・はたる」
各話ちょっとした謎解きがあり江戸の下町の人情話で屈託のない子どもらの心理描写が上手い、柾の過去のいきさつ、
自ら「ぶらぶら病」といって諸国を巡っていた柾だったのだが、実はそれには隠されたわけがあった
・・・仇討ちを縦糸に孤児達の日常に起きた謎解きをストーリーにした時代小説。
『烏金』の続編らしいが読んでいないので?
2009年8月光文社刊
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二階堂黎人著「智天使〔ケルビム〕の不思議」

2009-09-08 | な行
探偵ミステリー小説。
智天使(ちてんし)〔ケルビム〕とは天使の一種で「天使の階級」では第二位に位置づけられる。
現在と過去の二つの事件。巧緻を極めた驚くべき完全犯罪計画の全貌を暴く探偵小説。
古代ハスと紅白歌合戦と東京ブギブギ、犯罪の陰にいつも登場する男、密室殺人、自殺か他殺か
・・・犯罪の行なわれたのは何時なのか、容疑者のアリバイは完璧。

第一の殺人から出生の秘密まで「すべてを秘して、完璧に笑う女。」漫画家天馬ルミ子こと二古寺郁美の犯罪。
若き名探偵、水乃サトルの推理は。。。「矛盾です。まったく不可解です。考えれば考えるほど、訳が解らなくなりますよ」・・・完全敗北か!?
DNA鑑定などなかった時代だからこそ出来た完全犯罪だ。
ミステリーのためのミステリー小説である。
『犯人を登場させ、綿密周到な用意のもとに罪を犯させ、そのすっかり読者に知れている秘密を、探偵がいかにして解くかという興味を主眼とする探偵小説』
<江戸川乱歩の倒叙探偵小説の定義>(P5)
2009年6月 光文社刊
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楡周平著「骨の記憶」

2009-07-09 | な行
没落した東北の旧家の嫁のもとに届いた宅配便は51年前に失踪した父の頭蓋骨だった。
差出人は、中学卒業後、集団就職で町を出てその翌年に火事に遭って死んだはずの同級生。
添えられた手紙には父親の失踪の理由と最期の様子、さらには最愛の夫が失踪事件の当事者だったという驚愕の事実が記されていた。
昭和30年代、少年期に罪の記憶を抱え、集団就職で上京した中卒の東北の貧農の少年が、下宿先の火事を機会に、それまでの名前を捨て他人になりすます。
金を掴み、起業して成り上っていく様子が、集団就職から東京オリンピック経て
高度成長といった昭和の時代をとらえつつ現代までその他人に成りすまし生きてきた隠されていた過去が、昭和の記憶とともに徐々に明らかにされる。
昭和33年から現代にまでに至る長い日本の戦後史、運送業から始めて
不動産転がしのビジネス、政治家・代議士の口利きや金の流れといった経済の裏の側面とともに、男と女の愛情と憎悪の形、男の嫉妬など、
人間を生かし動かすその動力源とは何なのかを追求しています。
人生の光と影と、何が人にとって幸せななのか考えさせられる
圧倒的なリアル感で重厚に描かれています。
ミステリーな部分と共に他人のまま生きぬいた男の一代記です。

2009年2月文藝春秋刊
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