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読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

楡周平著「羅針盤」

2013-08-01 | な行
敗戦が濃厚な時生まれたサイパンを其処に残る父と別れ母と妹弟で引き上げ船さんとす丸で帰国し、やがて商船学校を出ると家への仕送り為当時高給取りだった船乗りになった。
昭和三十七年。三等機関士になった関本源蔵は北洋にサケマス漁の航海に出た。航行のさなか、かつてない大時化に襲われ、船は遭難危機に。その時源蔵が思いを馳せたのは、十八年前にサイパンで別れた、今は亡き父親のことだった。父親は言った。
「お母さんを助けてやれ」と。
「生きればこそ、人間には必ず道が開ける時がくる、だからどんな困難があっても生きなければならぬ・・・、人間が生きる上で最も大切な武器は知だ」(P265)
北洋でサケマスを追い、南氷洋で鯨を狙う。荒ぶる昭和の海に生きた男のロマン。後半南氷洋での捕鯨シーンや船のエンジンが止まり氷河に閉じ込められた船を捨て流氷の上を歩いて脱出するシーンは圧巻。親と子の関係、仕事とは生きるとは仲間とはを熱く語った男の物語でした。
「エンジニアとして、より生き甲斐のある仕事ができるか、それで会社を選ぶべきだ。」
源蔵の紹介で事業員として同じ船に乗ることになった枝川敏雄は当に現代の若者の代表みたいな存在。
仕事・試練・仲間を通じて成長する過程も楽しみだった。

2012年1月文藝春秋刊
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根本起男著「喰屍の女」

2012-12-16 | な行
ミステリーホラー。人間の禁忌に触れるおぞましい悪夢。 封じられた土着信仰と、呪われた家系の末裔による人肉食! !
「もともとは、伴侶を亡くした女性を追う番組のはずだった―」
番組制作会社『ル・テスク』ディレクターの紺野美咲は、ドキュメンタリー番組の取材のため、婚約者が遭難死した江田真理のもとを訪れる。しかし、真理は転居した後だった。真理の行方を捜す美咲はやがて、彼女が他人から奪った名前で転居を繰り返していることを知る。そして、その配偶者はすべて事故死を遂げていた……。
保険金殺人を疑い、美咲がつかんだ手がかりは、“クサマ”と呼ばれる呪われた家系にあった。
“クサマ”―それは人間最大の禁忌。愛した人を自分のものとする為に殺して食べる・・・カニバリズムの悪夢だった。
それは、失った悲しみを基に自分の中で再生し永遠に自分のものとするという。忌まわしき血と歪んだ愛情が交錯したとき、恐ろしい悪夢が・・・。
単純に食べるということではなく、食材としておいしくいただいていくという、普通なら吐き気を催すシーンが続く。
他人から見れば幻覚かもしれないけれども、自身の感覚によみがえらせるという理解しがたい感覚だった。


2012年11月 エイ出版社刊
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中山智幸著「ブラスデイズ」

2012-09-05 | な行
高校の吹奏楽部がくりひろげる青春群像グラフィティ。
ブラスバンドに青春を賭けて、学校生活のエネルギーの大半を注ぎ込んでいる地方の高校生たちが主人公。
群像劇だから次から次へと登場する吹奏楽の名門・熊本県北倉高校吹奏楽部の高校生たちなのだ。
いくつかの不測の出来事が重なって、惜しくも銀賞となった昨年の雪辱を果たすべく、今年も県のコンクールでの金賞獲得を目指して練習精進する毎日だったが、今年もまた不穏な出来事が続発して・・・。
希望していない楽器を割り当てられたうえに、ただただリズム練習をさせられている一年生とか、主力としてパートをまかされても、家庭の事情でなかなか集中しきれない二年生。
部長や副部長となって、頑張ろうとするのだが空回り気味の三年生。
そして、どこか心ここにあらずの巨漢指揮者兼顧問の前園先生。
それぞれがそれぞれのドラマを演じながら、終盤のコンクールへと向かっていく。
「もやもやむやみにもがいて、ちょっとのきっかけでからっと晴れて、学校ってそういう場所だったかも。」(ウラモトユウコ=表紙及び挿入のイラスト担当者)
映画の「スイングガール」に比べて感動は少ないのは残念。
異次元の自分やブラバン「♯○○」で表される分身との会話がややこしい。
2012年7月NHK出版刊
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根本起男著「さんくすないと」

2012-05-08 | な行
ゴールデン・エレファント賞第2回<特別賞>受賞作。
久光デパートで年に1回行われる「サンクスナイト」。
それは社員やその家族等から選ばれた12人の女性を深夜のデパ地下に集め、商品を好き勝手に食べさせてくれるという夢のようなイベントはずだった。
久光デパート勤務の夫をもつ妊婦・波川秀美もその参加者の一人。
みなが思い思いに食欲を満たす最中、突然、スピーカーから突然声が流れ、各自が食べたものに毒が噴射されていることを告げる。ショーケース内に噴霧されていた神経毒により一人、また一人と倒れていく参加者たち。そして解毒剤もまた、ある食べ物の中に入っているという館内放送。死から逃れる唯一の方法は、フロアに隠されている解毒剤を求め食べて食べて食べ進めることのみ・・・。
デパ地下グルメの食べ放題イベントなんてあったらと奇麗なお話しと思いきや、展開はグロイ場面の連続悪い女の本音炸裂オンパレードでこれが極上のブラックユーモアミステリーなんて・・・。
「日々の営みの延長戦上に潜む狂気と恐怖」に愕然。


2012年4月出版社刊
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中村弦著「クロノスの飛翔」

2012-04-18 | な行
ファンタジー&ミステリーサスペンス小説。クロノスは鳩に付けられたギリシア語で「時」を表す名前のこと。
高度経済成長真っ盛りの1961年(昭和36年日米安保条約再締結翌年)、明和新聞の記者・坪井永史の元に日米安保に絡む特ダネを学生運動の活動家の女子大生・山岸葉子が持ち込んだ。
だが接触した直後に彼女は失踪してしまう。米軍の核弾頭が日本に持ち込まれているらしい。
安保条約に違反するこの情報の裏を取るため川俣飛行場に向かった坪井は、そこで維新決死隊と名乗る集団に捕まり、旧日本軍の要塞の一つだった白壁島に監禁されてしまう。
見張りの隙を見て何とか逃げ出した坪井は、たまたま訓練のため連れ出していた伝書鳩・クロノスに経緯を記した手紙を付けて飛ばす。
50年後の平成23年7月、アルバイトの溝口俊太は明和新聞の屋上で一羽の鳩と出会う。
鳩の足につけられた通信管には、日本の命運を握るメッセージが記されていた・・・。
二人の主人公と時空を飛ぶ鳩の目線で語られるサスペンスでしたが、読んでるときは気付かなかったがよく考えると不都合な部分や納得のいかないところもあるが安保密約を絡めて上手く纏めてあり面白かった。
2011年6月祥伝社刊
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野崎 雅人著「天王寺クイーン」

2012-01-22 | な行
「私、あなたの目になる」と、引きこもり気味の女子高生が恋した盲目の美青年は、秀吉以来の『環黄海帝国』(=韓国中国台湾フィリピンからインドネシアにシンガポールマレーシア、グアムハワイオーストラリアといった広域にわたる圏)をもくろむ闇の結社を束ねる名家の御曹司だった。大阪のダウンタウン、天王寺の隣駅の信用金庫に真夏の白昼、強盗が押し入り、営業マン風の男とヒップホップファッションの若者、妙に色気の女と制服の女子高生の4人を人質に取り、銃を持った犯人が籠城。そして彼女が巻き込まれた信金強盗に謀略が隠されていた。この事件の背後では、戦国時代の闇の勢力、実は戦国下克上時代の松永久秀が織田信長に背き、抱いたまま自爆したという伝説の「平蜘蛛の茶釜」を権力の象徴とする女王と配下の忍者たちがうごめいていた。巨大な荘園を建設して伊丹空港を封鎖、大阪を乗っ取り、かつての「帝国」を支配する・・・。なぜ4人が人質になったのか?そして、「女王」の正体は・・・。不思議な展開と構成をもった物語。それぞれに事情を抱え、強請り強請られ、脅し脅され、誘い誘われて集まり、重なり合った男たち女たちの、その経験と告白から垣間見える日本の闇の断片をつなぎ合わせる・・・。
為我慢して読み続けていくと・・・。この作者の作品読むの2作目だけど今回も奇想天外というか読みにくい小説でした。

2011年11月 日本経済新聞出版社刊
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乃南アサ著「禁猟区」

2011-12-17 | な行
43000人近くもの人が働いている巨大組織に属する警察官。「規律を厳正に保持」し「清廉にして、堅実な生活態度を保持」することが求められているのだが、警視庁警察職員服務規程に違反していると判断されるものに関して監察を実施し、職務倫理を保持する、所謂警官の非行を摘発する警視庁警務部人事一課の監察チームに属するまだ未熟な若い女性警察官沼尻いくみが主人公でそのチームの活躍を描いた連作中編が4つ収録されている。
ホストクラブに通い続ける女性刑事。彼女は、ひいきにしているホストのために、立場を利用し非合法的な方法でお金を手に入れていた・・・表題作「 禁猟区」他健康食品の販売に加担する刑事・・・「 免疫力」時効寸前の事件の解決をあせる男を描いた・・・「 秋霖」警察官のいくみがストーカー被害に・・・「 見つめないで 」。捜査情報が漏れている!?刑事が立場を利用して金を動かしている!?警察内部の犯罪を追う監察官はあくまで陰の存在だ。隠密行動を貫いて「密猟者」を狩り出してゆく。尾行される刑事は意外にも無防備だ。獣道に沿って仕掛けられた罠に気づきもしないのだ。プロとしての自負が邪魔するのだろうか。

2010年8月新潮社刊

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中村 啓著「鬼の棲む楽園」

2011-09-01 | な行
第7回『このミス』大賞優秀賞受賞後第一作。ノロの儀式や風習をはじめ、奄美群島の歴史や風土、風俗を網羅した美しい奄美群島を舞台にした伝奇ホラー。
奄美大島で主人公のフリーライター夏木武史は落ち合う場所に現れないカリスマ占術師の自宅を訪ねてそこで発見したのは、脳をくり抜かれたカリスマ占術師の死体だった。
彼は死ぬ直前に実家・喜多住島に伝わる“鬼の呪い”に怯え、島の偉大な民間霊媒師“ノロ”一族のもとを訪れていた。
これを知った夏木は、事件との関連性を感じて喜多住島へ向かう。
しかし周囲で次々と事故死が起っており、犯人らしい目星をつけるも決定的な証拠が挙がらずにいるうちに、やがて夏木にも危険が迫ることに。
鬼→貴→喜(喜界島らしい架空の島=喜多住島)
南の島とカニバリズムを結びつけて凄惨な事件現場を描いているのだがちっとも怖さが伝わってこないのは何故?ダイビング中の恐怖は伝わってくるから著者の経験が下敷きになっているのだろう。
「言霊とは、言葉に宿るとされる霊的な力のこと・・・良い言葉を発すれば良い事象を生み、悪い言葉を発すれば悪い事象が生まれる。」(P225)

2010年6月宝島社刊
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七河迦南著「七つの海を照らす星」 

2011-08-24 | な行
第18回鮎川哲也賞受賞作。様々な事情から、家庭では暮らせない子どもたちが生活する児童養護施設「七海学園」に勤めることになった保育士の北沢春菜が主人公のミステリー小説。ここでは「学園七不思議」と称される怪異が生徒たちの間で言い伝えられ、今でも学園で起きる新たな事件に不可思議な謎を投げかけていた。孤独な少女の心を支える"死から蘇った先輩"。非常階段の行き止まりから、夏の幻のように消えた新入生。女の子が六人揃うと、いるはずのない"七人目"が囁く暗闇のトンネルなど、七人の少女をめぐるそれぞれの謎とは・・・。6つの連作短編が七つ目の表題作でその個々の関連と大きな謎が明らかになる繊細な技巧で一つの物語となり終焉する。「ものの見方は、立つ位置や目の高さによってひとりひとり違うもの。自分なりの角度から違った風景をみつけ、描くこと」(P3)というように日常の謎を解き明かすミステリーになっている。しかし登場する児童養護施設で暮らしている子供たちはいずれも家庭崩壊やDVなど昏い過去を持っているので その子供たちの心情を丁寧に描いてあり面白かった。
著者名の「Nanakawa kanan」はローマ字の回文だそうです。
この本の続編が「アルバトロスは羽ばたかない」。
『真実っていうのは人を幸せにするものだ・・・真実と事実は違う・・・無限にある事実の中から自分にとって意味あるものを選び、つなぎ合わせ、解釈して自分を主人公にした納得のいく物語を作っていく、・・・真実とはそういうもの。』(P253)

2008年10月東京創元社刊
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七河迦南著「アルバトロスは羽ばたかない」 

2011-07-06 | な行
アルバトロスとは日本名アホウドリのこと、「彼らは気流の力を使って風を切って飛ぶの。グライダーのように空を滑るようにとぶのよ」(P150)
「彼らは飛ぶために崖から身を投げて、そして羽ばたくことなく遠くまで行くんだ」(P297)
児童養護施設・七海学園に勤めて三年目の保育士・北沢春菜の毎日はとても多忙だ。
仕事に追われながらも、学園の日常に起きるちょっと不可思議な出来事や事件の解明に興味をもつからなのか。
そんな慌ただしい日々に、学園の少年少女が通学する県立七海西高校の文化祭の日に起きた、校舎屋上からの転落事件。自殺?事件?警察の見解通り、これは単なる「不慮の事故」なのか?
だが、この件に先立つ春から晩秋にかけて春菜が奔走した、
学園の子どもたちに関わる四つの事件に、意外な真相に繋がる重要な手掛かりが隠されていたのだった・・・。
すっかり、著者に騙されました。名前の思い込みや普段の常識、すり替え・入れ替わり、
物語の展開が前後して書かれ視点が変わっていてなかなか凝ったミステリーでしたが、読み返すといろいろ無理してるなぁ~とういう点もあるような、ヒントは随所にあったようです。

『希望は「だから」待つというものでなく、「にもかかわらず」もつものなのだ」(P309)

2010年7月 東京創元社刊
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西村健著「残 火(のこりび)」 

2011-02-09 | な行
衆議院議員会館に勤める若手衛視・富士見は、その男の鋭い殺気に度肝を抜かれる。
衆議院議員会館からその男が出て行った直後、「民自党」のドンである戸川代議士の部屋で強盗事件が起こったようなのだが、代議士の関係者はのらりくらりと対応し、秘書の一人は姿をくらませてしまう。
元マル暴で議員会館に勤めるのベテラン・久能は、監視カメラに映った男に驚愕する。けっして表たてできない裏金1億円が強奪された。現役ヤクザ・矢村は、かつての兄貴分花田秀次を追撃する指示を飛ばす。
最期のケジメ、きっちりつけさせてもらいます。「よう見とけ」。これが日本人への遺言じゃ!
犯人は、バブル期、仁義をなくしたヤクザを見切り引退した伝説の極道「人斬り秀」。
追うは元マル暴刑事久能。
元ヤクザが辿る仙台から青森、北海道へと至る人生の総括の旅。最終目的地北の大地で明かされる驚愕の行動とは。
疑惑の政治献金 政治家と建設業界の癒着、政界汚職、黒幕とヤクザと地上げ・・・
追いつ追われつ「命の最後の残火を懸けての行動・・・」。展開が速く面白い任侠道小説でした。

2010年9月 講談社刊

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永田 俊也 著「県立コガネムシ高校野球部」

2011-01-27 | な行
長野県立の進学校の弱小野球部に年収40億の凄腕の若きオンナホリエモンごとき
女性実業家・小金澤結子が財力を背景にのりこんでく来た。
こんな破天荒な設定で始まる物語。目的は野球部長に就任しこの高校で甲子園出場を果たすため。
新部長の真の目的を知るにつけ納得のいかないキャプテン菊池昇平も、次第に結子のやり方に取り込まれてしまう。
誰もが無理だと決め込んでいるのに、新部長は思いもよらない方法を繰り出しお金を懸けたゴージャスかつエグい手練手管によって
始めはヘキエキしていた部員たちはだったが、少しずつ勝利する喜びを知ってゆくのだった。
ビジネスにおける経営的手法を駆使して万年弱小チームがいかにして県大会を優勝して甲子園出場の奇跡を起すのかが展開される。
お金をつぎ込めば勝てるチームを作れるとは限らないがありえない話しについ乗せられました。
『世間知らずのガキのままだった。目標を持つこと、それに向って努力することの大切さにも気づかずに、・・・ただやり過していた。』(194P)
『この世には一生勝ちっ放しの人間も、負け続きの人間も存在しない。自分の人生が不幸の連続だと嘆いているのは、ただ単に負けることに馴染んでしまっただけ。失敗を糧にしょうとする限り、人はいつだって浮かび上がれるものなの』(236P)

2010年7月文藝春秋刊
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永井するみ著「マノロブラニクには早すぎる」

2010-12-01 | な行
タイトルの「マノロブラニク」というのはセレブにも人気の実在するシューズブランド。
主人公は20代の働く女性向けのファション雑誌「ダリア」の新人編集者の小島世里。
大学を卒業して華やかに見えるファッション誌の世界に飛び込んだ世里。
その裏側には女のプライドがせめぎ合い、信頼していた先輩からでさえ陥れられたり足をすくわれたり。
厳しい現場の中で、自分の居場所を見失っていた世里。
しかし、彼女の前に現れた中学生・二之宮太一とカメラマンの彼の父親の事故死の真相を探るうち、少しずつ自分らしさを取り戻して、編集者としても人間としても成長していく。
サクセスストーリーにミステリーを加えた展開、何時もながら女性心理を深く描いていて面白い。
センスのない主人公、ファッションに興味のない世里が美しい靴に魅せられていく様子が上手いが男の私には理解不能。
真相を探るミステリーなのだがラストの予想がついてしまうのはしかたがないのか。
2010年10月 ポプラ社刊
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永井するみ著「悪いことはしていない」

2010-11-26 | な行
大手企業リーロテックに入社して4年目の真野穂波は、尊敬する上司・山之辺営業本部長の秘書として慌ただしくも充実した日々を送っていた。
ところが、ある日、同期の坂東亜衣が自分のブログに「会社の上司にホテルに連れ込まれそうになってショック…」と最後の書き込みをしたまま、突然失踪したのだ。
穂波は海外出張中の山之辺を疑い始めて電話で問いただすのだが否定され、管理人同行の上、亜衣の部屋を訪ねてみるとそこにはピスタチオナッツの殻が散っていた。・・・「ピスタチオ・グリーン。」
憧れの上司にスカウトされベンチャー企業エタナール社に転職した穂波は、帰宅途中に知らない男に着けられたり、突然頭上から植木鉢が落ちてきたりとと不可解な事件に巻き込まれる。・・・・「デビル・ブラック」
自分の周囲の人たちの感情にあまりにも鈍感な主人公、穂波。
「悪気はなく知らぬ間に人を傷つけている」ことって意外にあるかも、日常に潜むちょっとしたミステリーを描いた連作中篇2つ。
読後感・・・何がを訴えたいのやらちょっと中途半端な不満な気持ち。
2009年3月毎日新聞社刊
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永瀬隼介著「狙撃ー地下捜査官」

2010-10-24 | な行
この小説はフィクションではありるが2010年3月に殺人罪の公訴時効(15年)を迎えた未解決の警察庁長官狙撃事件、所謂1995年3月に日本の國松孝次警察庁長官が何者かに狙撃された事件を強く意識させる小説。
庁内不倫が原因で郊外の所轄署に異動させられた刑事の上月涼子は、痴漢犯を得意の空手で逮捕した功績と度胸を買われて署長から本庁への配置転換を告げられる。
しかし配転先は、本庁でも警察組織を脅かす内部の犯行を処理するために新設された特務監察室だった。
数カ月後、室長の鎮目と涼子は機密漏洩の名目で公安総務課が監視下に置く公安部の貴島の身柄を確保する。
だが、数日後、貴島は1枚のディスクを残し謎の死を遂げる。
涼子は、貴島が保管していたディスクに、14年前に鎮目の眼前で起きた警察庁長官狙撃事件に関する驚くべき映像が収められていることを知る。
刑事部対公安部、キャリア対ノンキャリなどよく言われる対立を軸に警察の隠蔽体質を描いた警察小説です。
有名な長官狙撃事件を著者らしい視点で推理している。
私はマスコミで知った知識位しか事件のことをよく知らないが警察小説、ミステリーとして一気に読んでしまいました。
著者の映画化された3億円事件を扱った「ロストクライムー閃光」と同じで警察の隠蔽体質が未解決の事件に絡んで
いると思うと日本の将来に憂いを感じた。
2010年5月角川書店刊


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