メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

東京の嵐

2006-02-03 23:55:55 | lyrics
月が電線にからんで感電死
少女がまたひとり自分を生贄に捧げた
母ツバメはコンクリートビルに作った巣に帰る
子犬が1匹主人を探して歩いている
青年は髪を染めて天に怒鳴る
黒猫が音もなく闇夜を横切る
3人の黒衣の女たちが大声で笑う

突然ひらめく稲妻とドラミング
電灯を消した私の部屋にも
ライトニングのおすそわけ
大自然が催すスリリングで美しいショーに
アイスバー片手にみとれてしまう

天空のシャワー

汚れた空気を汚れた川へ流せ
いつかその水でカップラーメンを作って食べるだろう
急な客を家路に乗せるタクシーの
ヘッドライトに浮かんだ
無数の雨粒のモダンアート

自転車をこいでゆく母と娘
1日中照りつけた太陽の下
汗で汚れた肌を洗い流せ
光と音はみるみるうちに遠のいて
数分間のショーは引き上げる
みんなまたそれぞれの東京の夜に
戻されてゆく


目を開けるとどこまでも広がる空があった
故郷へ向かう電車の中で考える
どっちが今生きている現実で
どっちが20数年かけて追いかけてきた幻なのか

世知辛く乾燥した狂気と超意識で
作られた現実を後ろに置いてきたのか
緑と空気とぼんやりした温もりのある前方は
頭上に高く掲げた理想郷か
またはその全く逆か

分かっているのは

重たい問題と独りに慣れた女を
アパートに残して
少しずつ確実に回復してゆく

すべてうまくいくはず

ぼんやりした少女に戻った自分を連れて
私はなにか義務のように取り繕いはじめている
生を支えたり、無理に笑顔を作らずに済む
ひとつも義務を背負う必要のない
いつまでも女子学生のままでいれたらなあ

夏毛にかわった愛犬のやさしい感触を
何度も思い描いてみる
体温と太陽であったかい背中
久しい家族の再会の喜びを
落ち着きなくからだいっぱいにあらわして


1995.8.5 実家に帰る列車の中で記録
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