メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『モモ』 ミヒャエル・エンデ著 岩波書店 大島かおり訳 vol.2

2020-09-06 12:03:40 | 
『モモ』 ミヒャエル・エンデ著 岩波書店 大島かおり訳 vol1.


同じ頃、大きなカメが1匹、モモの顔をまっすぐ見ています
その甲羅にほんのり光る文字が見えます

「ツイテオイデ!」






円形劇場に灰色の自動車が何台も着いた時にはモモはいません

「本部に知らせるべきだ 大部隊に出動命令できる」


大都会は真夜中過ぎになっても眠りません
大勢がせかせか動き回って、イライラと押しのけあい
自動車がひしめき、ネオン広告が点滅しています


モモの部屋がからなのを見たベッポは
モモが彼らにもうさらわれてしまったと思う

ベッポ:モモになにか恐ろしいことが起きたんだ!

ベッポはジジに見たことを全部話しました

ジジ:
そいつらがモモを見つけたのは確かかい?
どこかうろついているだけかもしれないじゃないか
明日になればなにもかも、すぐまたよくなるよ

(先日読んだ『遠い部屋、遠い声』と同じセリフ!


時間貯蓄銀行員は大動員命令が発せられ
町には灰色の男たちがひしめいています


モモはややこしい道をカメのあとについて歩いています
カメはどこに追っ手が現れるか正確に知っているようでした


灰色の男:
子どもを見かけたのは、まるで知らない地区です
時間の境界線ぎわにあるみたいです


角を曲がると、突然ふしぎな光があたり一面から降り注いでいます
ここには見渡すかぎり誰もいません






カメは前よりもっとゆっくり歩いているのに、すごく早く前進するのにビックリしました
速度を上げるほど進まなくなります

灰色の男たちはチクショウ!と叫びながら必死に走りましたが
力尽きて、モモは消えてしまいました


煌びやか宮殿のようなところに
<さかさま小路>と標識があります

カメの甲羅に「ウシロムキニススメ!」と浮かびました

後ろ向きに歩くと、息も逆向き、考えることも逆向き!


<どこにもない家>





小さなドアをくぐると、「ツキマシタ」
ドアの名札には「マイスター・ゼクンドゥス・ミヌティウス・ホラ」とあります

※マイスター(賢者)・ゼクンドゥス(秒)・ミヌティウス(分)・ホラ(時間)の意味




灰色の男たちの幹部は全員、特別会議に召集されました

「我々の時間金庫は無尽蔵ではない!
 女の子は逃れてしまい、時間はムダに使い捨てられてしまった」

「我々はあの子を厄介払いした
 この成果に満足したいと考えます」

「あの子は普通ではありません
 捕まえて初めて害にならないと保証されるのです」

「今回の事件にはほかの力が手を貸している
 みんなも分かっているはず マイスター・ホラのことです」

灰色の男たちは殴られたように体を縮めました

「例の人物は、我々に対抗できる方策を授けて送り返してくる
 すべてを犠牲にする覚悟をせねばなりません!」

「我々に実際何ができる?」

「我々には、人間の手下がたくさんいる
 モモに関する危険をすべて排除すればいい
 諺に“打ち負かすことのできない相手こそ、友だち”というのがある
 
 この子はその道に案内することもできる
 あの場所をわがものとすれば、無限の権力を握れる!

 逆に利用すればいいのだ」

「我々の計画を教えてやるのだ
 代わりに欲しいだけの時間をやると約束するとか」

「あの子はもう欲しいだけの時間を持っている
 それなら彼女から時間を奪えばいい」

「我々は彼女の友だちを捕まえるべきだ
 友だちを取り戻すためなら、道を教えるでしょう」


うなだれていた男たちには、いっせいに勝ち誇った笑いが浮かんでいます



どんな広いホールより大きな広間に入るとあたり一面ロウソクの火が灯り
数えきれないほどの時計の音がします
それらは全部別々の時間をさしています

螺旋階段をのぼると、やさしい声が聞こえました

ホラ:カシオペイア! モモは連れてこなかったのかね?

細い老人は、金の刺繍の上着、青い絹のズボン
銀髪は頭の後ろに束ねて編んであります

モモに近づくと子どものように若返ってしまいました

ホラ:
これは星の時間をあらわす時計だ
宇宙には特別な瞬間が時々あるのだ
でも人間はその瞬間を利用することを知らず
気づかれないまま過ぎ去ってしまうことが多い

朝ごはんの支度が整っているよ


時間の国の時計の森に入ると、しゃれたソファやイスがあり
金褐色にパリっと焼けた巻パン、チョコレートの入ったポット・・・

モモは飲めるチョコレートがあるなんて知りませんでした
このパンほど美味しいものはありません
食べるにつれて疲れも取れ、食べるほどますます美味しくなります

ホラ:
君は彼らの1人にほんとうのことを白状させてしまった
しかもみんなに彼らの秘密を知らせようとした

カシオペイアはきっちり30分先までに起きることが確実に分かるんだ
だから大勢の灰色の男たちと出会わなかった
しかし、起きることを変更はできない

私は彼らをよく知っているし、向こうも私を知っている
私はあの連中をいつも見張っている
なんでも見えるメガネを持っているんだ


モモ:なぜ灰色の顔をしてるの?

ホラ:
死んだもので命をつないでいるからだ
人間は一人ひとり自分の時間を持っている
自分のものである間だけ、生きた時間なんだ

彼らは人間の姿をしているだけ
ほんとうはいないはずのものだ

人間がそういうものの発生を許しているから生まれてきた
そして彼らに支配させる隙まで与えている

お前はなぞなぞは好きかね?

3人のきょうだいがいる

一番上は今いない これからあらわれる
二番目もいないが、もう家から出かけた後
三番目だけがここにいる

三番目がいないと、あとの2人はなくなってしまうから


モモは苦戦するが

モモ:
一番目は未来だわ!
二番目は過去、三番目は今のことだわ!
つまり未来が過去に変わるから、現在があるんだわ!

答えは時間 この世界のことよ!

でも、時間って一体何なの?
分かった 一種の音楽なのよ
あたしはしょっちゅう聴いていた気がするわ


ホラ:
ここは、あらゆる人間の時間のみなもとなんだ
私はただ時間を司っているだけ
一人ひとりに定められた時間を配ること

その時間をどうするかは自分で決めなくてはならない
時計は、人間の胸の中にあるものを真似て象ったものなのだ
心が時間を感じとらない時は、ないも同じだ

モモ:私の心臓が鼓動を止めたらどうなるの?

ホラ:
おまえの時間もおしまいになる
あるいは、人生を逆に戻って、最後にたどり着き
またその門を出ていくのだ
おまえ自身がひとつの音になるのだよ

もし人間が死とはなにか知っていたら怖いとは思わないだろう
死を怖れなければ、時間を盗むなんて誰にも出来ないはずだ


でも人間は死を怖がらせる話のほうを信じたがるようだ
これも謎のひとつだ

時間のみなもとに連れていってあげよう
そこでは沈黙を守らねばならない



丸天井の下 天井には穴が開いていて光の柱がおりている
真下には池があり、どこからぶら下がっているのか大きな振り子が動いている

振り子が近づくと、これまで見たことのない美しい花が咲く
振り子が遠のくと花はしおれ、反対側に別のさらに美しい花が咲く

はるかかなたから聴こえてきた音楽は
星空の下で聴いた歌だと気づく

あらゆる惑星と恒星がそれぞれ本当の名前を告げている言葉
それが時間の花を咲かせている


ホラ:
どの人間にも今のような場所がある 心の中だ
お前の中で言葉が熟しきるまで時が必要だ
それだけ待てるかね?

モモはすぐに眠りに落ちる





モモが起きると円形劇場にいる
さっき覚えた歌をまた歌ってみる

カシオペイアが足元にいる

モモがいない間、灰色の男たちの計画は順調に進んだ

ジジは観光案内の権利金を相当受け取り大人気となる
ラジオ、テレビに出て、今では大邸宅に住んでいる
どんどん膨らむ需要に追いつかず、とうとうモモだけの物語まで話してしまうが
他のと同様、みんなはよく味わうことなく忘れて、さらに要求してくる

そのうちただ新しい題をつけて、内容はほぼ同じ
それに気づく者はいなかった

ジジは昔の生活を懐かしくてたまらなくなることがあるが戻れない
予定表はびっしりで、貧乏で無名のジジにも戻りたくない

灰色の男たちの話をしてしまおうと決心すると

灰色の男:
やめておけ お前をつくり出したのは我々だ
成功が来たのと同じ速さで逃げてゆくだけさ
深刻に考えないことだ

ジジは自身に対する尊敬をすっかり失くしてしまいました
今ではイカサマ師、聴衆の道化なのです



ベッポはまず交番に行きましたが
浮浪児の女の子で苗字も住所もないとなると捜索願の書類も作れない

警官:
私はヒマじゃない
体力も神経も参りかかっている

酔っ払いじゃないなら気違いだな
留置場に入れておけ!

ベッポは精神病患者の病院に入れられてしまう

灰色の男:
助け出そうなどとすると、あの子は償わされる
条件を飲むなら返してやる
身代金として10万時間貯蓄してもらおう

ベッポは今では仕事への愛情など持たずに、ただ時間を節約するために働いている



灰色の男たちにとって、最大の難事業は子どもたちを操ること
子どもたちはモモがまだいるかのように円形劇場で遊んでいた

そこで子どもにあれこれ指図できる大人たちが利用された

大人:
子どもは未来の人的資源だ
道徳的に堕落し、非行に走る可能性があるから対策を講じるべき

「子どもの家」が建てられ、親が面倒を見きれない子どもはみんなそこに入れられた
緑地などで遊ぶことは厳禁

子どもたちは楽しみ、夢中になること、夢見ることを忘れていった
小さな時間貯蓄家となり
好きなことをしていいと言われても何をすればいいか全然分からない

円形劇場には誰も来なくなった

モモは誰もいないのを不思議に思い、丸1年眠っていたと知る
自分の部屋に行くとジジからの古ぼけた手紙があった

「帰ったらすぐに知らせてくれ
 お腹が空いたらニノの所へ行けばいい
 勘定を全部僕に回してくれる」




モモは翌日から古い友だちを1人ひとり訪ねに行く

まずはニノの酒場に行くと「スピード料理 レストラン・ニノ」
大きなビルに変わっている

(ファストフードか

陳列された料理をとってレジに並ぶ長い行列
小さなテーブルでせかせか食べる人々

ニノはモモを見てとても喜び、ジジが払うからいくらでも食べていいと言うが
2人が話していると文句が飛び交い、ニノは落ち着いて話していられなくなる

ニノ:
ベッポはサナトリウムみたいな所に入れられて、それ以上は知らない
頼むからもう行ってくれ!



次の日はジジを訪ねる
郊外の高級住宅地の一番立派な屋敷でしばらく待つと
クルマが来て、ジジはモモを抱き上げ、何度も頬にキスをする

話をする時間がないため、空港まで行くクルマにモモを乗せる
後ろには3人の女性がいて、モモが物語の主人公だと分かると

「新聞社に連絡しましょう!」
「映画会社に引きあわせましょう!」
「せめてインタビューだけでも」

と2人の会話を遮り、ジジはクスリを飲み、それだけはダメだと断る

ジジ:
分かったろう? 戻りたくても戻れない
人生でいちばん危険なのは、叶うはずのない夢が叶うことだ
僕にはもう夢が残っていないんだ

でも貧乏でいるのはイヤだ
だから今のほうがマシなんだ
地獄でも居心地はいい

モモは彼が死の病だとよく分かった

ジジ:
僕と一緒にいてくれ!
一緒に住んで、話を聞いてくれるだけでいい

でも、もしモモがモモでなくなったら
彼の力になることもできません
モモの目に涙があふれ、首を横にふりました

モモはジジを失った気持ちになり、カシオペイアともはぐれてしまったと気づく


ベッポを探してあてどもなく彷徨い歩いても見つからない
その間も灰色の男たちは油断なく見張っていた

孤独にはいろいろある
モモは時間の山に埋もれてしまい
この2、3か月はとても長い時間でした



ある日、円形劇場に遊びに来ていた子ども2人に出会うが
灰色の制服みたいなものを着て、生気のない顔

子ども:
遊戯の授業で遊び方を習うんだ 将来の役に立つってことさ
最初は何回かここから出ようとしたけど、すぐに捕まった


灰色の男:
お前にやってもらいたいことがある
お前の友だちも返してやる

トラックに乗せられ、逃げる気がなくなるモモ
あの人たちを助けることができるのは私だけだと思うと
不安は勇気に変わり、負けるものかという気持ちになる



からっぽの広場に着き、四方を灰色の男たちのクルマに囲まれる

灰色の男:
本当のことを話そうじゃないか
お前はあらゆる人間から切り離されてしまったんだ

我々はマイスター・ホラに会ってみたいのだ
だが彼の居場所が分からない
お前は案内してくれるだけでいい

彼が物分かりよく話に応じれば大丈夫
そうでなきゃ、ムリにも分からせる方法がある

我々は一人ひとりからちびちびと時間を集めるのにうんざりした
全部をそっくりまとめてもらいたい

人間なんてもうとっくに要らない生き物になっている
今度は我々がこの世界を支配する!

モモ:知ってるのはカシオペイアだけだわ

灰色の男:緊急警報を出して、そのカメを探せ!


カシオペイアはモモの足元にいる
「ホラノトコロニ ユキマショウ スグチカクデス!」

灰色の男たちは、音もなく2人のあとを追いました
振り向くと時間泥棒たちがびっしりやって来るのを見て驚く

しかし「さかさま小路」に入ると男たちの体が消えてなくなる
彼らは怒りに燃えた顔でそれ以上追いかけるのをやめる





ホラ:
カシオペイアは私にとっても謎みたいなことがよくあるよ
灰色の男たちは私たちを包囲している

でもさかさま小路の時間の逆流のせいで消えてしまう
あすこを通るとその分だけ若くなる

人間は時間だけでできているわけじゃなく、それ以上のものだ
だが灰色の男たちは盗んだ時間だけでできているから何ひとつ残らない

時間の2つの流れは互いにつり合いを保っている
一方を止めれば、もう一方も消えてしまう・・・

そこでホラはある秘策を思いつく

始めがあった以上、終わりもある

彼らは私に無理強いさせる方法があると言った
私自身に手を出すことはできないが
人間にもっとひどい害を与えることで脅迫するつもりだ

私は人間にそれぞれの時間を送っている

彼らはあの葉巻なしには生きていけない
時間の花に冷気を吹きつけて凍らせておいている
それで葉巻を作るんだ
花は自由になれば、それぞれの持ち主のもとに帰ろうとする


彼らの煙がこの家を包んだら、時間が送り出せなくなる
すると人間は死ぬほどひどい病気になる

ある日急になにもする気がなくなる
何をしても面白くなくて感情をなくす(うつ病みたい

笑うことも泣くことも忘れる
致死的退屈症だ

私は人間が自力でこの悪霊から逃れるようになるのを待っていた
その気になればできたはずだ
やつらの生まれるのを助けたのは人間なのだから

でも、もう待てない 手伝ってくれるかい?
世界が永久に静止したままになるか
再び動き出せるかはお前次第になる

頼りになるのは自分だけ

私は絶対眠らない 眠れば時間が止まってしまう
しかし灰色の男たちも時間を盗めなくなる

時間がなくなれば、私は眠りから覚めることができなくなる

お前に一輪だけ時間の花を渡そう これで1時間だけ時間がある

時間が止まれば、彼らは時間貯蔵庫に駆けつけるだろう
彼らが蓄えた時間を取り出せないよう邪魔しなければならない
時間は人間に帰ってはじめて、私は眠りから覚めることができる


カシオペイア:ワタシモ イッショニユキマス!

ホラ:
カシオペイアは時間の圏外に生きているからね
自分の中に自分だけの時間を持っている

いつかまた会うこともあるだろう
私たちはいつまでも友だちだ
ごきげんよう かわいいモモ


ホラが眠りに入ると時計の音がいっせいに止まる





無数の時計が止まり、街中は一瞬で止まった状態になる
灰色の男たちはそれに気づいてパニックになる


灰色の男:
補給が途絶えた?!
じゃあ、今ある葉巻がなくなればどうなる?
時間貯蔵庫に駆けつけよう!
私の葉巻はあと27分しかないんだ

大混乱状態となり、相手の口から葉巻をひったくると
相手は怯えた顔で消えてしまいます

彼らの人数は少しずつ確実に減っていきました
彼らは長い距離を走ることに慣れていないので、すぐに息が切れます


モモはとうとうベッポを見つけるが、優しい顔はげっそり痩せています

カシオペイアに急かされて都会の北のはずれに出ました
灰色の男が入った建物にはこんな掲示があります





土管を滑り落ち、迷路のような地下道を通ると
辛うじて生き残った灰色の敗残兵たちが座っています
巨大な金庫が奥に見えます

灰色の男:
蓄えを大事に使わなくちゃいかん
ここにいる人数をずっと減らさなくてはいけない

議長はクジに負けた男の葉巻を取り上げ、残ったのはわずか6人です

灰色の男:
扉が開いているために冷凍室の温度が上がり
時間の花は解けて持ち主のもとに戻ったら、我々には防ぎようがない


カシオペイア:
トビラヲ シメナサイ!
ハナデ トビラニフレナサイ!

モモは花で扉に触るとガチャンと錠が閉まる

灰色の男:あの子の時間の花を取り上げないと一巻の終わりだ!

モモは逃げ回り、追うのに夢中で葉巻を落として消える男
2人だけになり、互いに花を奪い合い1人になり
そのちびた葉巻がポロリと落ちて消えてしまう

最後の男は「これでいいんだ なにもかも終わった」

(なんだか気の毒な灰色の男たち・・・
 常に時間に追われて生きるなんて地獄のような人生だ
 この幻想の男たちを作ったのも人間なんだ


カシオペイア:トビラヲ アケナサイ

無数の人間の命の時間が、春の嵐のように飛んでいく
本当の居場所に帰ったのです 人間の心の中に


カシオペイア:モモ トンデオカエリ!


モモはベッポと再会し、2人は笑ったり、泣いたりして
休みなくあらゆる話をしました


都会では長いこと見られなかった光景が繰り広げられていました
子どもたちは道路の真ん中で遊び
クルマに乗った人は降りて一緒に遊びました

お医者さんも、患者一人ひとりに時間を割いています
労働者もゆったり愛情こめて働きます

円形劇場に戻ると、友だちが全員集まってお祝いが始まりました
モモは澄んだ声であの歌をうたいました


ホラは、なんでも見えるメガネでそれをニコニコして見ています

疲れたカシオペイアは風邪をひいて手足をひっこめて眠る前
甲羅にはこの物語を読んだ人にしか見えない文字が浮かびました







【作者のみじかいあとがき】
この物語は私が人から聞いたのを、記憶通りに書いたものです

私が長い旅に出ている時、汽車で奇妙な乗客と同じ車室に乗りあわせました
その夜の間に私にこの物語を話してくれたのです






「過去に起きたことのように話しましたが
 将来起きることとして話してもよかったんですよ
 私にはどちらでも大きな違いはありません」


(宇宙人!?

それきり二度と会えないままですが、会えたらいろいろ質問したいと思います




【訳者のあとがき】
「時間がない」「ヒマがない」 今では子どもまでそう言います

人間の心のうちの時間
人間が人間らしく生きることを可能にする時間が
だんだん失われてきたようなのです

この町は典型的な現代の都会であり
完全に組織化されてしまい、浮浪児の存在を許しません

モモは自然のままのシンボルのような子どもなのです

人々は「よい暮らし」のためと信じて必死に時間を倹約し
それに気づいて警告しようとすると
ベッポのように狂人扱いされて隔離されるでしょう

見せかけの能率のよさ、繁栄とは裏腹に、都会は砂漠化してゆきます

この都会のどこかには、まるで四次元世界への通路のような地区があります
その向こうにあるのが「時間の国」です

物語がはじまるのは円形劇場
劇場は、人間の生の根源的な姿を芝居という形で見せてくれます

内容は大人にも子どもにも関わる現代社会の問題を取り上げ
病根を痛烈に批判しながら、楽しく美しい幻想的な童話形式
エンデはこれを「メルヘン・ロマン」と名付けました

この本の表紙カバー、挿絵、カットは作者自身の筆になるものです




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