メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

シャーロック=ホームズ全集 12 シャーロック=ホームズ最後の挨拶(下)

2022-04-15 11:05:24 | 
シャーロック=ホームズ全集 12 シャーロック=ホームズ最後の挨拶(下) コナン=ドイル/著 偕成社

1985年初版 1989年8刷
装丁/市川英夫&プラスB 挿絵/W.パジェットほか


「ジュヴェナイル」カテゴリー内に追加します



シャーロック=ホームズ全集も残すところあと3冊

以前、このシリーズのあとがきで
「ホームズの新しい物語に触れることができるのはとても貴重な体験だ」
みたいなことが書かれていたのを思い出す

いったん読み始めると先が気になって
各話をあっさり読み終えてしまうけれども
この1ページごとがとても尊い体験なんだな


瀕死の探偵
ホームズがあたかも死にそうな素振りをするほど
ファンから見ると、どこか騙されている気がするのが可笑しい

ホームズはあきれるほど無精で、生活も型やぶりだから
下宿先の女主人ハドスン夫人(彼女の経歴は描かれないんだな)は
ほとほと困っていたにちがいないが、ホームズを心から尊敬していた

ハドスン夫人:
今にも死にそうなんです
ある事件で川べりを調査して病気をもらい
この3日間飲まず食わずでげっそり痩せたのに
医者は呼ぶなとおっしゃる

ワトソンが駆けつけると、目ばかり光り、手を痙攣させているホームズ
スマトラの苦力(クーリー)病で接触伝染するからそばに来ちゃいけないと叫ぶ

ホームズ:
君はただの町医者にすぎない 医学の知識や経験に乏しい
この病気は治療法がないのだ

ホームズの指名した医者を呼びに行くのに18時まで待てと言って鍵を閉める







その間、棚の上の小さな象牙箱を触ると慌てて止めたり
半クラウン銀貨を胸ポケットに入れろだの言って精神錯乱している様子







世界で唯一この病気に詳しい農園主カルバートン・スミス氏を呼ぶよう言われる
スミスの農園でこの病気が発生し、自分で研究している

ホームズ:
甥に酷いことをして死なせた疑惑をぶつけた
彼を説得して連れて来てくれ

外にモートン警部がいて、どこか喜んでいる様子なのも謎

スミスもホームズの容態を聞くと一瞬笑みを浮かべたが
すぐに行くと承知する

ホームズはワトソンにベッドの影に隠れているよう言いつける

スミス:甥のビクターは4日目に死んだよ
ホームズ:犯人はあなただと分かっていた

スミス:いずれにせよ、あんたには証明できない

ホームズ:
できるだけの手当をしてください 僕は全部忘れます
数日前、郵便で象牙の箱が届いた
開くとバネがはじいて血が出た

スミス:
私に殺されたと知りながら死んでいける
ビクターと同じ運命にあわしてやったんだ

ホームズはいきなりしゃんとして、モートン警部も入って来て
ビクター殺しの容疑で逮捕する

証拠がないと言うスミスに、ワトソンがベッドの影で自供を聞いていたことを明かす






ホームズ:
君は素晴らしい医者だが、そらとぼける才能はまるでない(w
3日食べなければ衰弱するものだ
銀貨や牡蠣のことなど喋ると精神錯乱の効果が出せる(なぜ牡蠣?w
だが、脈拍や熱を測ればすぐ見抜かれるから、離れている必要があった
スミスと相続権で問題を起こしたビクターはこの箱の仕掛けで殺された
僕のところにはいろんな郵便物が来るが、いつも用心している




フランシス=カーファックスの失踪
ホームズは得意の推理でワトソンがトルコ浴場に行ったことを当てる
ワトソンの靴ひもの結び方がいつも違っていて
靴屋か浴場のボーイが結び直したから
トルコ風呂は薬がわりと言われている

スイスのローザンヌに1等の旅費を出すと行って誘う

ホームズ:
一番はらはらさせられるのは、友だちもつくらず
あちこちと気ままな暮らしをしている女性だ
しばし世のためになる一方、犯罪者に狙われやすい
ホテルをわたり歩いて行方不明になるケースはよくある

伯爵令嬢フランシス・カーファックスは元過程教師ミス・ドブニーに
定期的に手紙を書いていたが、この5週間音沙汰がなく心配して依頼された

彼女らの銀行通帳は日記を縮めたようなものだ
小切手がメイドのマリー・ドビーヌ宛てに振り出され、現金化された

大抵の場合、僕がこの国を出ないのが一番だ
犯罪者連中が羽をのばすことにもなりかねない

ワトソンが調査を始める
メイドの恋人ジュール・ビバールいわく野蛮な男がつきまとっていた

シュレジンガー博士夫婦と知り合い、夫妻はロンドンに戻り
フランシスも同行したと思われる

ホームズから電報で博士の耳の形を聞かれるが
くだらない冗談と無視する(w

マリーの話を聞いている時も野蛮な男を見かけて
なぜ後を尾けているのか聞くと襲われかけて
フランス人に扮したホームズに救われた





野蛮な男の正体はフィリップ・グリーンという貴族
フランシスを心底愛している

宗教家の耳がぎざぎざだと分かる
本名はホーリー・ピーターズ
孤独な婦人の宗教心につけこんで騙すのが専門
酒場でケンカの際、耳を噛まれた

外国人登録制度があるからフランシスはひっかかるはず
今ごろは監禁か殺されている可能性も高い

その後、質店でフランシスのペンダントが見つかる
グリーンに後を尾けさせると葬儀屋に入り棺を用意していると分かる






ホームズ:
警察が来るのなんか待っていられない
法律を守っていたら、何も出来やしないさ

博士を訪ねて、本名を明かし、フランシスを探すが見つからない

棺の中には妻の元乳母ローズが入っていて、死亡証明書もある
葬儀は明日8時から






ブリクストン貧民病院で聞くと、たしかに夫婦は老婆を引き取り
その後、老衰で亡くなり、医師が証明書を書いたと証言


翌朝、慌てて葬儀に駆けつけるホームズ

ホームズ:
助かる率は百対一だ
間に合わなかったら、僕は自分を許せなくなってしまう!

馬車に積もうとしていた棺をこじ開けると
顔中を麻酔薬のクロロホルムの綿で覆われたフランシスが入っている
ワトソンがエーテル注射などして、ようやく一命をとりとめる







ホームズ:
どれほど優れた頭脳でも、時には働きが鈍る
こうした失敗は人間なら誰でもやるが
それに気づいて訂正する人こそ偉大なのだ


葬儀屋が「特別品だから時間がかかる」と言っていたのがヒント
フランシスの下に老婆を入れて、1枚の死亡証明書で2つの死体を埋葬する手はずだった

ホームズ:
元宣教師の夫婦がレストレード警部から逃げおおせたら
いずれ輝かしい犯罪をやってのけてくれるだろうな


そういう犯罪を待ちのぞんでいるかのようなセリフだな




悪魔の足
ホームズは有名になることをひどく嫌った
この数年、ワトソンが記録をほとんど発表しないのはその態度のせい

ある日、突然、ホームズから「コーンウォールの恐怖をなぜ発表しないのか」と手紙が来て驚く
13年経ち、詳しく書くことにする

ホームズは不摂生も重なり、体が衰弱し、博士から
事件をすべて投げて、完全な休養をとらないと永久に仕事できなくなると脅かされて
転地療養する気になりコーンウォールに出かけた







トリダニック・ウォーサ村のランドヘイ牧師は
資産家モーティマー・トリジェニスとともに事件を持ち込む







モーティマーの兄弟の家でカード遊びをして夜10時頃に帰宅
妹ブレンダはイスで死に、2人の兄弟はすさまじい恐怖に発狂していた
悪魔のしわざだと言う牧師

モーティマーらは錫鉱山を経営し、大金を手に入れて引退
分け前でいざこざはあったが、和解して仲良くなっていた

その晩、兄は窓に不穏な影を見た

ホームズらが現場に行く際、精神病院に向かう馬車に
兄2人が乗せられているのを見てゾッとする







何も新しい情報もなく、ホテルに戻ると
ライオン狩りの名人、冒険家リアン・スタンデール博士が来て
事件の詳細を聞き出そうとする







スタンデールはトリジェニスと従弟関係
牧師から電報を受けて、アフリカ旅行を中断して戻った
まだ何も言えないと伝えると不満気に帰る

翌朝、モーティマーが同様に発狂死した
ホームズは警察、病院より早く現場に行って
フォックス・ハウンド犬のように調査する







モーティマーの部屋にあったのと同じランプを買い推理を始める

ホームズ:
どちらの部屋も最初に入った人は気分が悪くなった
有毒ガスが燃やされたと考えられる
ランプに茶色い粉がついていた

その燃えかすをランプで燃やす実験をして
心の奥底にすむ恐怖に襲われ発狂する寸前で
なんとか理性を取り戻して、ホームズを抱えて芝生に逃げるワトソン







ホームズ:
僕1人でも実験してはいけないのに
君まで巻き込んで、本当にすまなかった!

ワトソン:
君の役に立てれば非常に嬉しい
こんなことは、他の人に譲りたくないよ


(2人の友情はおかしなくらい深いな

最初の犯行はモーティマーだと推理
窓でなにかを見たというのは攪乱のため

スタンデールを家に呼び、モーティマーを殺した様子を細かく明かすと自供する

スタンデールはブレンダと愛し合っていたが
妻がいて、家を出た後も離婚できず、何年か過ぎた

悪魔の足の根と呼ばれる毒物は、まだヨーロッパで標本すらない
根が半分人間、半分ヒツジの形をしている(マンドラゴラっぽいな

2週間ほど前、モーティマーにこれを見せて
ヨーロッパの科学の力ではこの毒は検出されないことも話すと
どれほど効き目があるか詳しく聞き、少量を盗んだ
家族の共有財産を独り占めするのが目的でブレンダも殺した

スタンデール:
こんな話を田舎の陪審員に信じてもらえるでしょうか?
私は人生のほとんどを法の届かぬ所で送った
ついには自分が法律だと思うようになってしまった
私の手で正義を行おうと思った
モーティマーは5分で死んだ
女性を愛したことがあるなら、あなたも同じことをしたでしょう

ホームズはモーティマーがこの事件がなければ
中央アフリカに骨を埋めるつもりだったと聞くと

ホームズ:
では残りの仕事をおやりなさい
僕には邪魔するつもりはありません

僕らの捜査は誰に指図されているわけじゃない
僕は恋愛をしたことがないが、愛する女性があんな殺され方をすれば
同じことをするかもしれない


現場の窓枠にあった砂利がモーティマーの家にもあったことから
トリジェニスを呼び出す時に投げたと推理して事件を解決したと話す



最後の挨拶 HIS LAST BOW:THE WAR SERVICE OF SHERLOCK HOLMES
ずっと読んでいるうちに、ホームズシリーズを書くのに飽きたドイルが
他の試みを知って欲しかったのか?と思ったり・・・


有名なドイツ人2人が話している
フォン・ボルクはドイツ皇帝の忠実なスパイであると同時にマルチスポーツマン
もう1人はドイツ大使館の一等書記官フォン・ヘンリンク男爵

ヘンリンク:
イギリス人はおかしな境界線を持っている
(イギリス的偏見て同じ島国の先進国である日本にも通じるかもしれないな
イギリスとはいずれ戦うことになる
今週は運命の7日間だな

ボルクは大事な書類、家族、家のものをすべて外国に送り
召使のマーサだけが残っている

有能な部下アルタモント(反英感情が強いアイルランド系アメリカ人)から
イギリスの港湾防備、航空機などの情報を買い、あとは海軍暗号のみ

ヘンリンクが去るとアルタモントがやって来る
ボルクが監獄入りとなった部下に冷たいと指摘し
自分も目をつけられているからオランダに逃がして欲しいと頼む

包みを開けると、そこには機密書類ではなくホームズが書いた『養蜂の実用書』があり
アルタモントはクロロホルムをしみこませたスポンジを押し付ける







アルタモントはホームズ、運転手はワトソン、マーサも味方
引退したホームズだが首相まで家に来て断れなかった








ワトソンは軍隊に復帰するつもり?
イラストでは急に白髪っぽくてすごい老けてる

ホームズ:
冷たい東の風が吹き出したよ、ワトソン君
その風をまともに受けて、大勢が枯れゆくだろう
それも神の御心なのだ
嵐が去った後に、もっと清らかで、立派で、強い国が輝かしい光の中に表れるのだ







シャーロック・ホームズを推理する~ミステリーで遊ぼう 各務三郎
ミステリー小説から派生したボードゲームなんて面白い商品がたくさん売られたんだな
今よりずっと熱いファンがいたのか?






「お仕着せの形、既成の縄張りにとらわれない自由な心こそ
 みずみずしい創造のための必要条件で
 芸術も科学も純粋な遊びの精神から育ってきたといっていいだろう」 『遊びの博物誌』坂根巌夫



J.D.マクドナルド 私立探偵トラビス・マッギー

ロス・マクドナルド アーチャー私立探偵についてのエッセイにつけられた
東逸子さんのネズミと青カケスの絵





『マーダー・インク』

『ミステリマップ』早川書房

ミステリーに関連したレコードもあった
第一次大戦頃に吹きこまれたものが多い

日本でも石川晶&カウント・バッファローズのジャズ・アルバムがある
すべてレイモンド・チャンドラーに捧げるジャズばかり

「マルタの鷹協会」木村二郎
ハードボイルドの熱狂的ファンの会

住所まで載っているけど、まだいるのか???
新宿区下落合2-10-11 ジョリーメゾンAー202


1960年代は、日本で幼年向けの飛び出す絵本が大流行した
(ポップアップ絵本は私も大好きv

古川タクさんの「動く絵本」

安野光雅さんの『ABCの本』

「つなぎ絵の絵本」
1ページが6~7枚に切られていて、全部で8ページ
200万以上の違った組み合わせの物語が楽しめる/驚

『エッケ探偵教室』旺文社 全6巻
少年少女向け謎解きゲーム

1920~1930年 英米でパズル小説が大流行した
容疑者の供述書、顔写真、証拠の毛髪などが
すべて「現物」(本物そっくり)で保存されている犯人当てゲーム
解決編は巻末にとじられている

封を切らずに出版社に持参すれば代金を返すシステム/驚

解答を募集するケースもある
応募用紙に犯人、現場、方法、動機などを書いて郵送する
正解者には賞金1万円を進呈
(アイデアが面白いな! 今の出版社にはこうした遊び心が足りないのでは?

『シャーロック=ホームズ探偵ゲーム』
シドニー・パジェットの絵がたくさん掲載されている















作品解説

●瀕死の探偵
タバヌリ熱、黒腐病など、東洋の熱帯特有の病気が出てくる
東洋はイギリス人にとって「文明の果ての世界」だった


●悪魔の足
ここに出てくる毒物は架空とされている

●最後の挨拶
引退後のホームズが第一次世界大戦が始まった直後に
ドイツの名門出身スパイを捕まえる物語




巻末広告

・ジュディ・ブルームの本





・クラバート オトフリート・ブロイスラー







コメント    この記事についてブログを書く
« ちいさなかがくのとも 185号... | トップ | 次の記事へ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。