メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

霧の中の悪魔 レオン・ガーフィールド 講談社

2024-08-12 12:57:23 | 
1971年初版 飯島淳秀/訳 桑名起代至/絵

「作家別」カテゴリー内に追加しました


極上のミステリー こんな長編小説なら何冊でも読みたい
ガーフィールド作品で和訳されているのは、もう終わりだろうか?



【内容抜粋メモ】

登場人物
トマス・トリート 芝居や化学薬品を使う見世物で旅している一家の長
ジョージ 主人公の少年 13歳 長男
エドワード、ヘンリー、ジェーン、ローズ、ネル、ホットスパー

ジョン・デクスター卿と夫人
ジョゼフ デクスター家の忠実な召使い
リチャード大尉 ジョン卿の弟 息子ジョン、エドマンド、バートラム
モンタギュ夫人
ニュービー医師
クラドック ジョン卿の弁護士










●1 ほろ馬車の一座
トリート一家は芝居や化学薬品を使う見世物で旅している
母は7年前に亡くなった

“へんな人”は、いつも6月と11月にやって来て、父トリートに金を渡して去る
トリート氏は大柄で堂々としているが、“へんな人”が来る時はとてもビクビクしている








●2 ぶきみな男
「おしゃべり淑女」旅館で一家は「ルシファーのけむり」という出し物を見せる
そこにも“へんな人”が来る

トリート:お前は偉い貴族の息子なんだよ


●3 13年前のなぞ

トリート:
13年前の嵐の夜、“へんな人”が来て、連れてきた赤ん坊を育てれば
“かしら”から毎年2回30ギニー払うと言われて引き取った
ジョージはジョン・デクスター卿の一人息子なんだ


●4 霧につつまれた館
屋敷は1年中濃い霧に包まれている
ジョン卿は瀕死で、ニュービー医師と親戚が集まっている

トリートが証拠となる赤ん坊の服とガラガラを見せてジョージを紹介する
乳母が落とした時にできた傷もあるため、ジョージは息子と認められる








トリートは別れ際に1000ポンドもらって、長年の夢だったロンドンの舞台へ行くと約束
死んだ魂と話ができるモンタギュ夫人は、ジョージは本物ではないと主張する


●5 からの額縁
図書室には、歴代のデクスター家の祖先の肖像画が飾ってあるが
1枚、額縁だけで絵が外されている







賑やかなラムボールド家の前で得意の芝居のセリフを披露すると
みんなうっとり聞き惚れるが
母からは二度としないようにと注意される


●6 兄弟殺し
ジョージが来たことにより、ジョン卿はいくらか元気を取り戻した

ジョン卿はロンドンへ弟のリチャード大尉を訪ねに行ってケンカとなり
腹部を撃たれて瀕死になったといきさつを語るニュービー医師

額縁だけの絵は、そのリチャード大尉だった

父に忠実な召使いジョゼフは、デクスター家の限定相続について説明する

ジョゼフ:
生まれて死ぬまでデクスター家である者に相続されるもので
リチャード大尉には3人の元気な男の子がいたが財産を相続できないのが悔しくて
ジョージを誘拐し、兄を撃った








●7 ニューゲート監獄
3週間経ち、ジョージは大きな屋敷での生活に慣れてくる
ジョン卿とは友だちのように仲良くなり、尊敬し、期待に沿うよう心掛けた

リチャード大尉と妻子はニューゲート監獄に入れられたが
そこから脱獄した知らせが届く

ジョージは叔父が自分の命をまだ狙っているのではないかと恐れる


●8 しらかばの林
ジョージにリチャード大尉にかたき討ちするのが義務だと諭すジョゼフ

モンタギュ夫人が訪ねて来て、帰り際、18時に林に来るよう言われて行くと
そこにいたのはリチャード大尉だった


●9 大尉のたのみ
リチャード大尉は足かせをねじり切った傷から血が出て
飲み屋の借金を返すためにいくらか欲しいと頼む

モンタギュ夫人も来て、ジョン卿との仲直りの使者になってほしいと言われる
誘拐について聞くと、無実を訴える

リチャード大尉:俺たち一家が年中金に困っているのに、1年60ギニーも払えるものか


●10 疑惑の影
トリートが訪ねて来て、ショアラムから新天地へ行く船賃をもらえないかと頼む
ロンドンでの舞台でこれまでにないほど大がかりな見世物をしたのに
炎が劇場に燃え移りまる焼けになったため、もらった1000ポンドは消えてしまった

また林の中でリチャード大尉、モンタギュ夫人と会い
“へんな人”が誰かを考える








モンタギュ夫人:
赤ん坊が誘拐された日は、嵐などなく素晴らしい天気だった
乳母のスミスは寝ていて気づかず、みんなで探したが見つからなかった
坊やを誘拐して得するのは誰かしら?
もしトリートさんと乳母が示し合わせていたとしたら?
今にトリートさんはあなたにお金をせびるでしょう







●11 思いがけない客
リチャード大尉の妻子、デクスター叔母と3人の息子ジョン、エドマンド、バートラムが訪ねて来て
ジョン卿はクリスマス過ぎまでゆっくりするよう言う

バートラム:お前なんか大嫌いだ 死んじまえ








●12 いやないとこ
ジョゼフはジョージが書いたクラドック弁護士宛ての手紙を読み
ジョージがリチャード大尉、モンタギュ夫人に騙されていると諭す

バートラムはジョージを芸人の浮浪者だとバカにしたため
ジョージは得意の弁舌で罵り返しているのをジョン卿が聞いてガッカリする

ジョージはジョン卿にトリート一家の船賃70ポンド欲しいと頼む
ジョン卿:100ポンド持っていっておあげ 30ポンドはお前の隙なようにするがいい


●13 待ちぶせ
ジョゼフは父からだと言って銀の浮彫のあるピストルを渡す

リチャード大尉:銃身に人の手でヒビが入れられ、撃った者の顔を吹き飛ばすように細工してある








ジョージはトリートにお金を渡しに行く
エドワード:悪人は1回の企てだけじゃ諦めないものだ

別れの挨拶をして、船が岸を離れるのを見送るが
トリート一家は乗り遅れたと笑い
ジョージはトリートへの疑いの心が起きる

屋敷への帰り道、見知らぬ男がピストルで脅し
ジョージが自分のピストルの細工を忘れて撃とうとしたため
リチャード大尉が男を撃ち殺す
男のポケットには30ポンド入っていた








●14 クリスマスキャロル
ジョン卿が青い顔で出迎えたため
銃声はもっと遠くのものだとウソを言って安心させる
父は林にいる浮浪者狩りを火曜日にやると決める

トリートのきょうだいたちが屋敷に来てクリスマスキャロルを歌う
ジェーン:牧羊犬旅館に泊まってる 父さんが重大な打ち明けたいことがあるそうなの








●15 ぼくの名演技
ジョン卿は銀の浮彫のあるピストルはクリスマスプレゼントにあげると言う

ラムボールド家が訪ねてきて、またジョージに芝居を見せてくれとせがんだため
ジョージは衣装を着て、見事に演じてみせる








ジョン卿はデクスター家の人間が芝居を見せることに恥じ
二度とやらないように約束させる


●16 林の中の墓
リチャード大尉が盗賊の墓を掘っていたら、13年前に埋められた赤ん坊を見つける
モンタギュ夫人:すると、あなたは誰なんでしょうね

リチャード大尉:
俺には分かっている
お前には大変な危険が迫ってる よく気をつけるんだ
狩りだされるのは俺じゃないかもしれないぞ

細工されたピストルと伯父のピストルを交換して持たせる

屋敷から出ていく馬車に乗っていたクラドック弁護士は“へんな人”だと分かる








●17 浮浪者狩り
ジョン卿:その男を見つけたら足を狙って撃て
ジョン卿、ジョージ、3人のいとこで狩りに出る

ジョン卿が盗賊の服を着たリチャード大尉に
「あの30ポンドは高くつくぞ あの子はお前を見かけなかったと言ってたぞ」と話すのを見る
ジョン卿が“かしら”だった

ジョン卿:そいつが逃げださんうちに撃て

ジョージが止めるのも聞かず、ジョン卿はリチャード大尉のピストルでジョージを狙って撃ち
自分の細工により倒れるが、ニュービー医師は心臓の発作が死因だと告げる

死んだ赤ん坊はジョージ・デクスター、ジョージはトリートの息子だった









●18 おそろしい秘密
ジョン卿の身を滅ぼしたのは、限定相続だった
いつかデクスターの財産を相続する弟を憎み
長男にジョンと名付けた時も、愛情でなく不吉な前兆ととらえた

ジョージの1歳の誕生日に披露しようとして、死んでいることに気づき
夢中で林に死体を埋め、クラドック弁護士と相談して
同じ年で赤い髪の子どもを見つけ、年に60ポンド払って借り
実の息子が現れない場合は引き渡すという契約を結んだ
クラドック弁護士がジョージの額に傷をつけた

ニュービー医師はジョン卿に先が短いことを告げたため
リチャード大尉に殺されようと決闘を申し出て、事故で致命傷を負った

ジョゼフ:ところが、ジョージさまはジョン卿さまのお気に召さないのが勘で分かりました









ジョン卿はジョージを殺そうと決意し、金で男を雇ったが失敗した

トリート:私はジョージのためになるだろうと考えた お前を愛していたんだよ
ジョージ:僕は絶対に許さない!

リチャード大尉とデクスター夫人は、今後も息子として迎えたいと言って大金を示す
トリート:ジョージは私の息子で、売り物じゃありません

その後、デクスター夫人はロンドンに引っ越し、トリート一家のパトロンになった
死んだ赤ん坊は教会墓地の父のかたわらに眠っている










この物語について






リアン・ガーフィールド
1921年 イギリス生まれ
第二次世界大戦で衛生部隊に勤務した

『ジャック・ホーバン』
2作目が本書
『スミス』
『ブラック・ジャック』
『海底の神』
『アダレード事件』

イギリスの産んだスチーブンソン、ディケンズの流れをくんだ作家と言われる
ディケンズ『さびしい家』

18世紀のイギリスは、文化が洗練されてくる一方、まだ乱暴な時代
劇場も物騒で、俳優がへまをすると客が暴れ、大混乱となった

当時の1ポンドの価値は、今の5、6倍と考えると
1000ポンドは約400~500万円ほどに相当する







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